70 / 79
灼熱のドラゴンと城
第70話 何を願う?
しおりを挟む
グレイブは王宮を出て、マスカトの国章旗がついた馬車を探していると、ハーツとレモーネが腕を組んで歩いているのを見かけたので後ろから脅かした。
ハーツは驚いてすぐにレモーネの腕を振り払った。
「まったく。兄貴は人が悪いでやす」
「はっはっは。いいじゃないか。仲が良いのは。羨ましいよ」
「兄貴だって仲がよろしいじゃありやせんか」
「いやぁ。姫が人になるのは短い時間だ。そんな腕を組んで歩いたことなんて滅多にないよ」
「へぇ……。50年も一緒にいるのに難儀なことですねぇ」
「そう言うことだ。それを解除するには純粋な月の青石を身につけるか、呪いをかけた魔女を倒さねばならん」
そうなのだ。国を得て、魔女の呪いを解く。
それがグレイブとデラエアの旅の目的。
遠い遠い目的だった。
「しかし、我々は不老不死だ。それはラッキーだな。いつかはきっと願いが叶えられるだろう」
「そうでやすねぇ。きっと叶います。協力しやすよ!」
「ふふ。頼もしいな。ありがとう」
グレイブはハーツ達に鍛冶屋のことを尋ねた。
「ところでそちらの首尾はどうだ」
「へぇ。道中出来た7つのボーエン鉱ではやはり盾一枚もできやせん。せめてもう7つでそれなりの大きさの盾が出来るそうでやす。14で一枚でやすね」
「となると、あと28日。そこから盾を作るわけか。結構かかるな。この城の中の水は冷たいので姫もまた昏倒するようなことはないとは思うが逗留は長くなりそうだな」
「そりゃ、国を得るわけですからそれなりの時間は必要でやしょ?」
「たしかにそうだ。取り敢えずホテルについたらしい今後の作戦を考えよう」
三人は自分たちの馬車を探すと果たして大きめのホテルの中に停められていた。
設備も良さそうだ。
中に入るとすでにデラエアによって上等の部屋がとられていた。
グレイブは城で交渉したことをデラエアに話したのだった。
「なるほどね。グレイブご苦労さま。どうやらそのドラゴンの住み処に我々が暮らせるようね」
「左様でございます。古城をリフォームすれば直ぐさま国を運営できますな」
「しかしドラゴンを倒さなくてはそれは絵に描いた餅よ。ドラゴン討伐はグレイブに一任するわ」
「ありがたき幸せに存じます」
デラエア一行は沸き立った。
グレイブならばきっとドラゴンとの戦いに勝利してくれると確信した。なにしろ死なない身体。そして、世界無双の実力。
後は盾が出来上がり、ハーツとレモーネのサポートが完璧になることだけだ。
「時に姫」
「なーに? グレイブ」
「あのぉ。そのぉ。先のお約束を決してお忘れになりませんようお願い致します」
「……先のお約束?」
忘れている様子だった。
グレイブは自分の口から言うのはなかなか恥ずかしいことではあったが姫からのご褒美。それがなくてはやる気も出ない。
「そのぉ……。ドラゴン討伐の暁には私の好きなことを一つ叶えて下さるとのお言葉でした」
「あー……」
つい言ってしまったデラエアのひと言がグレイブのこのやる気を引き起こしたことに気付いた。
好色なグレイブのことだ。何となくグレイブがして欲しいことが想像できた。今まで夫婦として枕を交わしてきたのだ。グレイブが何を願おうと別段困ることもないとデラエアは考えた。
「もちろん。ドラゴン討伐の暁にはグレイブの望みを聞いて上げましょう」
「やった……」
グレイブは人に聞こえないような声で小さく叫びガッツポーズをとった。
ハーツは驚いてすぐにレモーネの腕を振り払った。
「まったく。兄貴は人が悪いでやす」
「はっはっは。いいじゃないか。仲が良いのは。羨ましいよ」
「兄貴だって仲がよろしいじゃありやせんか」
「いやぁ。姫が人になるのは短い時間だ。そんな腕を組んで歩いたことなんて滅多にないよ」
「へぇ……。50年も一緒にいるのに難儀なことですねぇ」
「そう言うことだ。それを解除するには純粋な月の青石を身につけるか、呪いをかけた魔女を倒さねばならん」
そうなのだ。国を得て、魔女の呪いを解く。
それがグレイブとデラエアの旅の目的。
遠い遠い目的だった。
「しかし、我々は不老不死だ。それはラッキーだな。いつかはきっと願いが叶えられるだろう」
「そうでやすねぇ。きっと叶います。協力しやすよ!」
「ふふ。頼もしいな。ありがとう」
グレイブはハーツ達に鍛冶屋のことを尋ねた。
「ところでそちらの首尾はどうだ」
「へぇ。道中出来た7つのボーエン鉱ではやはり盾一枚もできやせん。せめてもう7つでそれなりの大きさの盾が出来るそうでやす。14で一枚でやすね」
「となると、あと28日。そこから盾を作るわけか。結構かかるな。この城の中の水は冷たいので姫もまた昏倒するようなことはないとは思うが逗留は長くなりそうだな」
「そりゃ、国を得るわけですからそれなりの時間は必要でやしょ?」
「たしかにそうだ。取り敢えずホテルについたらしい今後の作戦を考えよう」
三人は自分たちの馬車を探すと果たして大きめのホテルの中に停められていた。
設備も良さそうだ。
中に入るとすでにデラエアによって上等の部屋がとられていた。
グレイブは城で交渉したことをデラエアに話したのだった。
「なるほどね。グレイブご苦労さま。どうやらそのドラゴンの住み処に我々が暮らせるようね」
「左様でございます。古城をリフォームすれば直ぐさま国を運営できますな」
「しかしドラゴンを倒さなくてはそれは絵に描いた餅よ。ドラゴン討伐はグレイブに一任するわ」
「ありがたき幸せに存じます」
デラエア一行は沸き立った。
グレイブならばきっとドラゴンとの戦いに勝利してくれると確信した。なにしろ死なない身体。そして、世界無双の実力。
後は盾が出来上がり、ハーツとレモーネのサポートが完璧になることだけだ。
「時に姫」
「なーに? グレイブ」
「あのぉ。そのぉ。先のお約束を決してお忘れになりませんようお願い致します」
「……先のお約束?」
忘れている様子だった。
グレイブは自分の口から言うのはなかなか恥ずかしいことではあったが姫からのご褒美。それがなくてはやる気も出ない。
「そのぉ……。ドラゴン討伐の暁には私の好きなことを一つ叶えて下さるとのお言葉でした」
「あー……」
つい言ってしまったデラエアのひと言がグレイブのこのやる気を引き起こしたことに気付いた。
好色なグレイブのことだ。何となくグレイブがして欲しいことが想像できた。今まで夫婦として枕を交わしてきたのだ。グレイブが何を願おうと別段困ることもないとデラエアは考えた。
「もちろん。ドラゴン討伐の暁にはグレイブの望みを聞いて上げましょう」
「やった……」
グレイブは人に聞こえないような声で小さく叫びガッツポーズをとった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる