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灼熱のドラゴンと城
第71話 みんなのお仕事
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さて、盾が出来るまで時間がある。
グレイブは新たに小型の馬車を買った。これをクインスロメン産の銀毛の馬、アボガドゥル号に引かせる。
幌付きでレイバに折り畳み式の寝台を左右に一つずつ付けさせた。荷台も広く武器や防具も運べる。
これにてグレイブ、ハーツ、レモーネの三人でドラゴンの住む古城に向かうつもりだ。
デラエアはガッツとレイバに守らせる。非戦闘員の三人にもしものことがあっても困るので、武闘派三人で行動するのだ。
そして、城下町にある訓練施設を借りて三人で戦闘訓練をした。
「レモーネ。君の剣術がどれほどか見てみたい」
「あ。はい」
グレイブとレモーネは試合形式で立ち会った。
レモーネは長剣や槍を好む。
ランフラス王国のオルレンジ将軍の養女。
彼女の剣術はやはり見事なものだった。
互いの歯のない練習用の拳撃が激しい音を打ち鳴らしていた。
「うん。さすがに激しい。見事なものだ」
「はい! ランフラス王国の剣術指南の腕前でございます!」
剣術指南。彼女は王家の王子達に剣術を教えていたのであろう。
しかしグレイブはそれを自分の剣の柄で弾き返した。
そしてクルリと剣を回して喉に刃の面を当てる。
「うっ。お見事」
「まぁ、オレは実戦で鍛えているからな。しかしこの剣の腕前なら世界でかなり上位だろう」
「ありがとうございます」
グレイブは攻撃を止めて剣を鞘に戻した。
「ハーツ。レモーネと二刀流でやってみよ」
「へ、へぇ」
ハーツも練習用の二振りの剣を構える。
一本が60センチほど。対すレモーネの方はその三倍はある。
実戦でレモーネの一撃を受ければ致命傷だろう。
ハーツの剣では急所に当てない限りは致命傷にはならない。
「始め!」
グレイブの声により夫婦対決が始まった。
両手持ちのレモーネに対して、ハーツは素早く利き腕じゃない方に回り込む。
「いいぞハーツ」
スキを狙い死角に入り込み、脇腹を刺すのだ。
そうすればハーツの勝ちだ。
ハーツの動きは早い。しかし、レモーネは感でハーツの動きを読み的確に胴を打ち付けるように長剣で薙ぎ払おうとした。
だがそこにハーツはいなかった滑り込んでレモーネの脇腹に鋭く短剣を刺そうと繰り出している。
ザシュ!
レモーネは回転した反動を利用して、その短剣を持つ手の甲を蹴り込んだ。
「痛っ!」
叫ぶハーツから短剣は回転しながら宙に舞う。
レモーネの動きに無駄はない。
そのまま長剣を下にいるハーツに向けて突き刺そうと押し下げる。
しかし、ハーツはもう片手に持った短剣でレモーネの利き足を打った。
「相討ち!」
グレイブが判定を下す。
おそらく実戦であればハーツは長剣により絶命。
レモーネは致命傷ではないが片脚を失いもう戦えない状態になるであろうという判断だった。
レモーネはハーツに駆け寄った。
「ハーツ大丈夫?」
「大丈夫だ。レモーネ。手加減したな?」
「まさか。ハーツの実力よ」
「だったら何でこの手はそんなに痛くないんでぃ。まぁ、少しは二人に続いて戦えるかな?」
レモーネは多少手心を加えたらしい。
だがハーツの腕前もなかなか向上したものだった。
「よくやったな二人とも。しかしドラゴンとの戦いでは片手に盾を持つんだ。レモーネは得意の両手持ちじゃないし、ハーツも二刀流ではないぞ?」
「ちょっと!」
夫婦は声を合わせて突っ込んだ。
この仕合はまったく意味の無いものだったからである。
だがグレイブは二人の現在の実力を知りたかったからちょうど良かった。
これからは片手剣と盾を使った訓練をひと月ほどするとプランをまとめたのだった。
グレイブ、ハーツ、レモーネの武闘派三人は忙しそうだが、ガッツとレイバは特に仕事がないのではないか?
それは決してそうではなかった。
デラエアのために大きめの浴槽を買い、そこに水草をレイアウトして庭園を造った。水草も日陰を作り、一定の水温を保った。
レイバはこの国の軍需物資が安いのをいいことに、矢じりや新しい兵器を買った。
手作業で矢じりから矢を作る。消耗品なのでいくつあっても無駄ではない。
そして新しい兵器。小型の大砲だ。攻城兵器で城壁に鉄球を撃ち込むものだが、大型のモンスターにも使えるだろうと踏んだ。
砲弾も買い込みそれをステイルの腹の中にしまい込むと、よい重さなのか嬉しそうな顔をしていた。
ガッツはと見ると、これも忙しそうに大量の肉や魚、樽や蓋付きの瓶などを買い込んでいた。
「ガッツ。そんなに買い込んでどうする。腐らせるだけではないか」
「ああ、兄貴。この国はまるで宝の山でございます」
国王や国民すら国が貧しいと言っているのに、ガッツだけ宝の山。
一体どう言う訳かグレイブは尋ねてみた。
「見て下さい。他国では高額な香辛料もゴミみたいな値段だ。これで肉や魚を保存するのでしょう。武器なんか輸出するより、これを輸出したほうが国にとっては有益ですよ」
「ははぁなるほどなぁ。暑いから香辛料の栽培が盛んなのか」
「それからこれ。フルーツ」
そこには果物の山。甘い匂いが充満しているがどれもこれも熟し切っていた。
「こっちもすぐに腐りそうだ。これも香辛料にでも漬けるのか?」
「何をおっしゃいやす。酒ですよ酒!」
「おお! 酒か!」
この一行は全員酒好きだ。消費量はかなり多い。この国は気温が高いためフルーツの栽培も盛んで、ましてや熟し切ったものは商売ものには出来ない。それをガッツは安く仕入れたのであろう。それで地酒を造るというわけだ。
「ふふふふ。出来るのが楽しみだな」
「ええ。得た領土で祝賀会の時にお出し致しましょう」
「おー! ではさっさとドラゴンを倒してしまわなくてはな」
「兄貴に期待してやすよ!」
グレイブは新たに小型の馬車を買った。これをクインスロメン産の銀毛の馬、アボガドゥル号に引かせる。
幌付きでレイバに折り畳み式の寝台を左右に一つずつ付けさせた。荷台も広く武器や防具も運べる。
これにてグレイブ、ハーツ、レモーネの三人でドラゴンの住む古城に向かうつもりだ。
デラエアはガッツとレイバに守らせる。非戦闘員の三人にもしものことがあっても困るので、武闘派三人で行動するのだ。
そして、城下町にある訓練施設を借りて三人で戦闘訓練をした。
「レモーネ。君の剣術がどれほどか見てみたい」
「あ。はい」
グレイブとレモーネは試合形式で立ち会った。
レモーネは長剣や槍を好む。
ランフラス王国のオルレンジ将軍の養女。
彼女の剣術はやはり見事なものだった。
互いの歯のない練習用の拳撃が激しい音を打ち鳴らしていた。
「うん。さすがに激しい。見事なものだ」
「はい! ランフラス王国の剣術指南の腕前でございます!」
剣術指南。彼女は王家の王子達に剣術を教えていたのであろう。
しかしグレイブはそれを自分の剣の柄で弾き返した。
そしてクルリと剣を回して喉に刃の面を当てる。
「うっ。お見事」
「まぁ、オレは実戦で鍛えているからな。しかしこの剣の腕前なら世界でかなり上位だろう」
「ありがとうございます」
グレイブは攻撃を止めて剣を鞘に戻した。
「ハーツ。レモーネと二刀流でやってみよ」
「へ、へぇ」
ハーツも練習用の二振りの剣を構える。
一本が60センチほど。対すレモーネの方はその三倍はある。
実戦でレモーネの一撃を受ければ致命傷だろう。
ハーツの剣では急所に当てない限りは致命傷にはならない。
「始め!」
グレイブの声により夫婦対決が始まった。
両手持ちのレモーネに対して、ハーツは素早く利き腕じゃない方に回り込む。
「いいぞハーツ」
スキを狙い死角に入り込み、脇腹を刺すのだ。
そうすればハーツの勝ちだ。
ハーツの動きは早い。しかし、レモーネは感でハーツの動きを読み的確に胴を打ち付けるように長剣で薙ぎ払おうとした。
だがそこにハーツはいなかった滑り込んでレモーネの脇腹に鋭く短剣を刺そうと繰り出している。
ザシュ!
レモーネは回転した反動を利用して、その短剣を持つ手の甲を蹴り込んだ。
「痛っ!」
叫ぶハーツから短剣は回転しながら宙に舞う。
レモーネの動きに無駄はない。
そのまま長剣を下にいるハーツに向けて突き刺そうと押し下げる。
しかし、ハーツはもう片手に持った短剣でレモーネの利き足を打った。
「相討ち!」
グレイブが判定を下す。
おそらく実戦であればハーツは長剣により絶命。
レモーネは致命傷ではないが片脚を失いもう戦えない状態になるであろうという判断だった。
レモーネはハーツに駆け寄った。
「ハーツ大丈夫?」
「大丈夫だ。レモーネ。手加減したな?」
「まさか。ハーツの実力よ」
「だったら何でこの手はそんなに痛くないんでぃ。まぁ、少しは二人に続いて戦えるかな?」
レモーネは多少手心を加えたらしい。
だがハーツの腕前もなかなか向上したものだった。
「よくやったな二人とも。しかしドラゴンとの戦いでは片手に盾を持つんだ。レモーネは得意の両手持ちじゃないし、ハーツも二刀流ではないぞ?」
「ちょっと!」
夫婦は声を合わせて突っ込んだ。
この仕合はまったく意味の無いものだったからである。
だがグレイブは二人の現在の実力を知りたかったからちょうど良かった。
これからは片手剣と盾を使った訓練をひと月ほどするとプランをまとめたのだった。
グレイブ、ハーツ、レモーネの武闘派三人は忙しそうだが、ガッツとレイバは特に仕事がないのではないか?
それは決してそうではなかった。
デラエアのために大きめの浴槽を買い、そこに水草をレイアウトして庭園を造った。水草も日陰を作り、一定の水温を保った。
レイバはこの国の軍需物資が安いのをいいことに、矢じりや新しい兵器を買った。
手作業で矢じりから矢を作る。消耗品なのでいくつあっても無駄ではない。
そして新しい兵器。小型の大砲だ。攻城兵器で城壁に鉄球を撃ち込むものだが、大型のモンスターにも使えるだろうと踏んだ。
砲弾も買い込みそれをステイルの腹の中にしまい込むと、よい重さなのか嬉しそうな顔をしていた。
ガッツはと見ると、これも忙しそうに大量の肉や魚、樽や蓋付きの瓶などを買い込んでいた。
「ガッツ。そんなに買い込んでどうする。腐らせるだけではないか」
「ああ、兄貴。この国はまるで宝の山でございます」
国王や国民すら国が貧しいと言っているのに、ガッツだけ宝の山。
一体どう言う訳かグレイブは尋ねてみた。
「見て下さい。他国では高額な香辛料もゴミみたいな値段だ。これで肉や魚を保存するのでしょう。武器なんか輸出するより、これを輸出したほうが国にとっては有益ですよ」
「ははぁなるほどなぁ。暑いから香辛料の栽培が盛んなのか」
「それからこれ。フルーツ」
そこには果物の山。甘い匂いが充満しているがどれもこれも熟し切っていた。
「こっちもすぐに腐りそうだ。これも香辛料にでも漬けるのか?」
「何をおっしゃいやす。酒ですよ酒!」
「おお! 酒か!」
この一行は全員酒好きだ。消費量はかなり多い。この国は気温が高いためフルーツの栽培も盛んで、ましてや熟し切ったものは商売ものには出来ない。それをガッツは安く仕入れたのであろう。それで地酒を造るというわけだ。
「ふふふふ。出来るのが楽しみだな」
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