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灼熱のドラゴンと城
第77話 ローラの正体
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「あら、そちらの方は?」
「ああ、姫にご紹介申し上げます。彼女は名をローラと申し、あの地方に住んでいたのですが、家を失ってしまったそうです。我が国の国民に成りたいとのことなので連れて参りました」
「あらそう。私はマスカト国の王女デラエアよ。よろしくねローラ」
「よろしくお願いいたします」
「……驚かないわね」
デラエアは大抵の人間がこのカエルの身を見て驚くものだが、眉一つ動かさない彼女を不思議に思った。
「それにしても、では懸賞金も受け取れないし、領土も得られないということね。仕方ないわ。早々にこの国をでて、別天地を探しましょう」
「ははぁ」
一同、王女の言葉に平伏した。
ローラはガッツに近づいて深々と頭を下げた。
「こんにちわ」
「おお、こんにちはローラ」
「グレイブさんからガッツさんの作られたお酒を頂きました。あれほど美味しいものは初めてです。私を弟子にして下さいませんか?」
「え? 弟子でやすか? あっしはそんなガラでもねぇでやす。でも気に入ってくれたのなら、一緒に酒や料理を作っていきやしょう」
「本当? 嬉しい!」
そう言って、ローラはガッツに抱きついた。
ガッツのほうでも歳は上そうでも美しい女性に抱きつかれて悪い気はしない。思わず顔を赤くした。
グレイブはその楽し気な様子を横目で見て、頭を垂れた。
貴族の服を着て今から王宮にドラゴン討伐は不首尾に終わったと言いに行くのだ。
本来ならば賞金首を取れなかったらそのまま立ち去ってもいいのだが、討伐は領土の約束までしてた公式なものだ。報告に行かねばならなかった。
今まで倒せなかった相手はいなかったので初めての敗戦の報告だ。
グレイブが憂鬱な気持ちを持つのも無理からぬことであった。
グレイブが王宮へ向けて部屋を出ると、ローラは楽しそうにガッツと話をしていたが、レモーネはローラの腕を引いた。
「あら、レモーネ」
「ローラ、少しお話ししましょう」
「ええ結構よ。ガッツ、ちょっとだけ待ってね」
「ああ。合点でやす」
レモーネはローラを連れて、出来るだけ人がいない場所を探した。
ホテルを出てしばらく行くと、広場があった。
ほとんど砂地のそこにローラと対峙した。
「なぁにレモーネ」
「率直に聞くわ。あなた人間じゃないわよね?」
「え? ああ、それなら王女殿下もグレイブも同じことじゃない」
「いいえ。あの二人は人間よ。でもあなたは違う」
「ふーん。だからなによ」
「城壁から首を覗かせて私達を見ていたわね。あなたは人間を恨んで復讐をしようとしているのだわ」
ローラは目を丸くしてそのうちに腹を抱えて笑い出した。
「何がおかしいのよ。図星を突かれて本性を現すつもりね?」
「いいえ。そうじゃないわ。久しぶりの客人に興奮しただけよ。あなたたちはなかなか強かった。次にどんな手で来るのか楽しみで楽しみで仕方なかったわ」
よほど娯楽が少ないのであろう。
レモーネの勘違いが面白いようで笑い過ぎて痙攣するようだった。
「あなた達についていけば退屈しない。そう思ったのよ。あの山は飽きたわ。いつも来るはずの誰かを待つなんてもうまっぴら」
「ほ、本当?」
「本当よ。私はもともとヘビだったんだけど五千年修行してドラゴンになったの。だけど友だちもいないし寂しい生活だったわ。遊び相手が欲しかったのよ。それにあれは最高。お酒。あれを作れる人間は尊敬するわ。だからガッツともっともっと仲良くしたい。ダメかしら?」
「ダメってことはないけど……」
「そう? じゃぁよかった」
ローラは楽しそうにクルリとひと回転した。
「ローラ。あなたに言いたいことがあるわ」
「何かしら」
「まず、あなたは裸よね? 服を着なさい。それから、王女とグレイブ様を尊敬すること。二人は我々の主君なのだから。そして自分の正体をバラさないこと」
「ふむふむ。服ね。でも持ってないのよ。人間はお金でものを買うんでしょ? レモーネ、買ってくれないかしら」
ローラは人間の生活に慣れていない。レモーネはこの図々しいお願いを聞いてやることにした。
「王女殿下とグレイブを尊敬ね。オーケイよ。でもなんで正体を知られちゃいけないの?」
「そりゃ、大騒ぎになるし、グレイブさまは人よりもプライドの高いお方よ。まさか自分よりも強いものが仲間の中にいるとしたら耐えられないと思うわ。だから大ピンチのときはこっそりと助けてくれると助かるわ」
「ああん。そうなの? 退屈しのぎに大暴れしたいのに」
「チャンスがこればそうさせてあげるわよ。あなたの強さはこの世界でおそらく一番よ。それまでは爪を隠しておいてちょうだい」
「分かったわ。それらを守ればいいのね。改めてよろしくね。レモーネ。私達お友達になりましょうよ」
「ふふ。分かったわ。仲良くしましょ」
そう言いながら二人は笑い合った。ふと見ると路地の入り口でガッツが手を振っていた。
レモーネとローラが気付いてそれに手を振ると、駆け出して来た。
「はぁはぁ、ローラ。もしよかったら酒の材料を一緒に買い出しに行きやせんか?」
「もちろんよガッツ。さぁ行きましょう!」
レモーネはそんな二人の後ろ姿を見ながら服屋に赴き、ローラの為に羽織るだけの赤い薄絹を数枚買った。
「ああ、姫にご紹介申し上げます。彼女は名をローラと申し、あの地方に住んでいたのですが、家を失ってしまったそうです。我が国の国民に成りたいとのことなので連れて参りました」
「あらそう。私はマスカト国の王女デラエアよ。よろしくねローラ」
「よろしくお願いいたします」
「……驚かないわね」
デラエアは大抵の人間がこのカエルの身を見て驚くものだが、眉一つ動かさない彼女を不思議に思った。
「それにしても、では懸賞金も受け取れないし、領土も得られないということね。仕方ないわ。早々にこの国をでて、別天地を探しましょう」
「ははぁ」
一同、王女の言葉に平伏した。
ローラはガッツに近づいて深々と頭を下げた。
「こんにちわ」
「おお、こんにちはローラ」
「グレイブさんからガッツさんの作られたお酒を頂きました。あれほど美味しいものは初めてです。私を弟子にして下さいませんか?」
「え? 弟子でやすか? あっしはそんなガラでもねぇでやす。でも気に入ってくれたのなら、一緒に酒や料理を作っていきやしょう」
「本当? 嬉しい!」
そう言って、ローラはガッツに抱きついた。
ガッツのほうでも歳は上そうでも美しい女性に抱きつかれて悪い気はしない。思わず顔を赤くした。
グレイブはその楽し気な様子を横目で見て、頭を垂れた。
貴族の服を着て今から王宮にドラゴン討伐は不首尾に終わったと言いに行くのだ。
本来ならば賞金首を取れなかったらそのまま立ち去ってもいいのだが、討伐は領土の約束までしてた公式なものだ。報告に行かねばならなかった。
今まで倒せなかった相手はいなかったので初めての敗戦の報告だ。
グレイブが憂鬱な気持ちを持つのも無理からぬことであった。
グレイブが王宮へ向けて部屋を出ると、ローラは楽しそうにガッツと話をしていたが、レモーネはローラの腕を引いた。
「あら、レモーネ」
「ローラ、少しお話ししましょう」
「ええ結構よ。ガッツ、ちょっとだけ待ってね」
「ああ。合点でやす」
レモーネはローラを連れて、出来るだけ人がいない場所を探した。
ホテルを出てしばらく行くと、広場があった。
ほとんど砂地のそこにローラと対峙した。
「なぁにレモーネ」
「率直に聞くわ。あなた人間じゃないわよね?」
「え? ああ、それなら王女殿下もグレイブも同じことじゃない」
「いいえ。あの二人は人間よ。でもあなたは違う」
「ふーん。だからなによ」
「城壁から首を覗かせて私達を見ていたわね。あなたは人間を恨んで復讐をしようとしているのだわ」
ローラは目を丸くしてそのうちに腹を抱えて笑い出した。
「何がおかしいのよ。図星を突かれて本性を現すつもりね?」
「いいえ。そうじゃないわ。久しぶりの客人に興奮しただけよ。あなたたちはなかなか強かった。次にどんな手で来るのか楽しみで楽しみで仕方なかったわ」
よほど娯楽が少ないのであろう。
レモーネの勘違いが面白いようで笑い過ぎて痙攣するようだった。
「あなた達についていけば退屈しない。そう思ったのよ。あの山は飽きたわ。いつも来るはずの誰かを待つなんてもうまっぴら」
「ほ、本当?」
「本当よ。私はもともとヘビだったんだけど五千年修行してドラゴンになったの。だけど友だちもいないし寂しい生活だったわ。遊び相手が欲しかったのよ。それにあれは最高。お酒。あれを作れる人間は尊敬するわ。だからガッツともっともっと仲良くしたい。ダメかしら?」
「ダメってことはないけど……」
「そう? じゃぁよかった」
ローラは楽しそうにクルリとひと回転した。
「ローラ。あなたに言いたいことがあるわ」
「何かしら」
「まず、あなたは裸よね? 服を着なさい。それから、王女とグレイブ様を尊敬すること。二人は我々の主君なのだから。そして自分の正体をバラさないこと」
「ふむふむ。服ね。でも持ってないのよ。人間はお金でものを買うんでしょ? レモーネ、買ってくれないかしら」
ローラは人間の生活に慣れていない。レモーネはこの図々しいお願いを聞いてやることにした。
「王女殿下とグレイブを尊敬ね。オーケイよ。でもなんで正体を知られちゃいけないの?」
「そりゃ、大騒ぎになるし、グレイブさまは人よりもプライドの高いお方よ。まさか自分よりも強いものが仲間の中にいるとしたら耐えられないと思うわ。だから大ピンチのときはこっそりと助けてくれると助かるわ」
「ああん。そうなの? 退屈しのぎに大暴れしたいのに」
「チャンスがこればそうさせてあげるわよ。あなたの強さはこの世界でおそらく一番よ。それまでは爪を隠しておいてちょうだい」
「分かったわ。それらを守ればいいのね。改めてよろしくね。レモーネ。私達お友達になりましょうよ」
「ふふ。分かったわ。仲良くしましょ」
そう言いながら二人は笑い合った。ふと見ると路地の入り口でガッツが手を振っていた。
レモーネとローラが気付いてそれに手を振ると、駆け出して来た。
「はぁはぁ、ローラ。もしよかったら酒の材料を一緒に買い出しに行きやせんか?」
「もちろんよガッツ。さぁ行きましょう!」
レモーネはそんな二人の後ろ姿を見ながら服屋に赴き、ローラの為に羽織るだけの赤い薄絹を数枚買った。
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