シーン・グラムーンがハンデを乗り越えて幸せになる

家紋武範

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第33話 戦功奪取

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 ギリアムはすぐに動いて、父である国王の御前へと急いだ。ちょうど国王は大臣たちと内政と外交の政務をしていたが、王子の拝謁ということで一時それを中断した。
 ギリアムは臣下の礼をとって跪いた。

「国王陛下に拝謁いたします」
「ギリアムよ。面を上げよ。会議の見学か? 感心なやつだ」

「陛下に申し上げます」
「なんなりと申せ」

「私ギリアムは更なる戦功を欲しております。どこかよき戦場はありませんか?」
「まさか……。跡取り候補を危険にはさらすことはできはせん。それに現在、戦などおきてはおらん。その申し出は却下する」

 国王はそう笑顔で回答したがギリアムは食い下がった。

「しかし私はもっと戦功が欲しいのでございます!」
「いやいや。だから申したであろう。現在の我が国はとても平和だ。お前も平和を楽しめ」

 その時であった。急報を告げる使者がその場に入ってきて、なりふり構わず声を上げたのだ。

「ご注進! ご注進!」
「どうした?」

「陛下に申し上げます! サイル州で反乱があり、州の境は封鎖! 領民は閉じ込められ、反乱の首魁であるベルゴールはサイル王を僭称しました」
「ベルゴールとは何者だ?」

「いえ。それが分かりません」

 そこにギリアムが話って入ってきた。

「なるほどなるほど。それはすぐに出兵する必要がありますなぁ陛下。なにとぞ私をご指名ください」
「ふぬう──」

 国王のほうでも押し黙ってしまった。そう言われても戦は危険だ。王太子に指名したいギリアムをそんな場所にやりたくない。かといってこの場で王太子に指名するわけにもいけない。
 ギリアムはそんな国王の気持ちに気付かずに使者へと詳細を聞く。

「それで相手の兵力はいかほどだ? 武官の数は? 兵器の有無は?」

 使者はギリアムのほうに頭を向けて答えた。

「それが分かりません」
「分からない? おいおい」

「サイル州を領地としていたサイル侯爵は反乱を鎮圧しようと二千の兵士を率いましたが敗戦し、州境に一族の首が晒されております」
「な、なに!?」

「ベルゴールの兵力は分かりませんが、どうも彼一人は魔術を使うらしく、土人形の兵士を操り、弓矢によって攻撃し、瞬間的に自分の身を移動させるようです」
「はっ! 魔術だと?」

 ギリアムは国王のほうへと体を向けた。

「まやかし、目眩ましの語りものなど畏れるに足りません。どうぞ私に偽王ベルゴールを討てとお命じください」

 国王は困って横に控えるムガル宰相に視線を送ると、ムガルもその真意に気付いてやんわりとギリアムに出兵を諦めるよう言ったが、ここに控える大臣たち。副宰相、軍事の将軍二人、外務大臣は次期国王であろうギリアムにおもねろうと進み出て、軍を任せるよう国王に進言した。

 こうなると国王も多勢に無勢で許すしかない。それにギリアムはニヤリと笑ってさらに言葉を追加した。

「陛下に申し上げます。私がもし戦功を上げましたら、ご褒美は結構でございます。その代わり、英雄称号の勇者をくださいませ」
「なに? 勇者の称号とな? なるほど、勇者称号には年金と領地を下賜する規定がある。それが目的か?」

「いいえ違います」

 ギリアムはムガル宰相を指して言う。

「宰相閣下のご令嬢、サンドラに求婚したのですが勇者称号を得たものならばよいとの言葉を貰ったのです。みなも証人になってくれ。私が勇者称号を得たらば、閣下の娘を妃として向かえると」

 それに列席する大臣たちは歓声を上げる。だがムガルは血相を変えた。

「で、殿下に申し上げます。娘は現在、婚約を打診しており、その返事がきておりません。その返事が来るまでお待ちください。どうか娘の気持ちを優先してください」

 しかしギリアムは視線を合わさずに答える。

「それはいかん。サンドラが直々に申したのだ。勇者ならばよいのだ。であるから、その婚約を打診している家のものも勇者でなくてはならない。しかしこの国の勇者は現在空位である。だから私がそれに相応しいのだ!」

 ギリアムはそう言って、国王に一礼すると早々に出ていってしまった。軍をおこすためだ。
 ムガルはギリアムの言葉に参ってしまい、娘の気持ちを考えると心痛が激しく、屋敷に帰ると寝込んでしまった。

 それからギリアムは軍をおこした。なんと総勢五万の軍隊である。サイル州の人口は二十万なのでその四分の一の兵士。
 出発の日、ギリアムは万に一つに敗けはないと装甲馬車の中でほくそ笑んだ。
 そしてサイル州に向けて兵士たちを城門から出したが、自分だけは別の城門を選んだ。
 一隊と自分の装甲馬車だけだ。それがその城門にいるサンドラの前に止まる。

「やあサンドラ」
「ああ殿下。お話は伺いました。どうかご武運を」

 サンドラは相変わらず上辺だけの応援を送るだけだったが、ギリアムはサンドラに笑いかける。
 しかしそれは威圧的なものだった。

「陛下や大臣の前でキミに対する気持ちを申し上げたよ。勇者称号を得た暁には妃とするとね」
「え?」

「凱旋の際はまたこの門を通ろう。その時は、キミを王宮に連れていくのだ」

 そう言い終わると、ギリアムは装甲馬車を出させた。
 その去り行く馬車の姿をサンドラは見つめることしか出来なかった。



 それからしばらくすると、サンドラの横に別の馬車が停り、中から降りてきたものはサンドラに跪いた。

「これはサンドラ嬢。いつにも増して美しいお顔立ち。いつまでも美の女神の祝福がございますよう」
「まあ。お上手ね、グラムーン卿」

 それはまさしく、シーンの父のアルベルトであった。アルベルトは跪いたままでサンドラへと伝える。

「実は宰相閣下より賜った黄金の剣と手紙を預かり、我が愚息にサンドラ嬢を第二夫人とするよう説得に参るのです。愚息も第二夫人ならばその首を縦に振ることでしょう。安んじてお任せを」
「まあ本当ですの? グラムーン卿」

「ええ本当ですとも。却って公爵さまのご令嬢を第二夫人という座で大変心苦しくはございますが」
「いいえ。私はシーンの元に嫁げるならば妻の末席でも構わないのです」

「それを愚息に伝えましょう。きっと喜びます」
「本当かしら? 追従でも嬉しいわ」

「では吉報をお待ちください」
「急いでくださると助かるわ。ギリアム殿下が私を妃に娶りたいと画策しているのです。シーンの元に嫁いだ後なら、殿下もきっと諦めてくださるわ」

「なんと殿下がでございますか? な、なるほど。このアルベルト、昼夜を駆けて息子の元に参ります」
「よろしくお願いするわ」

 そうなるとアルベルトも急がなくてはならない。颯爽と馬車に乗り込むと、馬にムチ打たせてバイバル州はグラムーン郡へと急いだのであった。
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