黒猫君の恋。

エイト

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 梅雨が終わり、暫く晴れ間が続いている。
 快晴の中、将人は電車に揺られていた。
 流れていく景色を眺めていると、絋希からメッセージが届いた。
 メッセージアプリを開くと、『改札出てすぐのところで待ってる』と来ていた。
 『わかりました。もう少しで着きます』と返し、アプリを閉じた。
 ほぼ同時に止まった電車を降り、改札を出る。
 将人はきょろきょろとあたりを見渡し、絋希を探す。
 彼はすぐに見つかった。
 壁際に立ってスマートフォンを弄っている絋希に駆け寄り、声を掛ける。

「絋希さん、お待たせしました。お久しぶりです」
「久しぶり。元気にしてた?」

 ひと月ぶりに会う彼は、以前と変わらない笑顔で将人を迎えてくれた。
 はい、と笑顔で答えると、頭を撫でられた。
 きょとんとする将人にくすりと笑みを溢し、頭から手を離す。

「よし。じゃあ、早速だけど行こうか」
「はい! 楽しみです」

 そう言って二人は歩き出す。

「まずは昼ご飯だな。なんか食べたいものある?」

 時刻はあと少しで十一時というところ。
 今から探せば丁度いい時間に昼ご飯にありつけそうだ。

「えっと……わからない、です。絋希さんは?」

 おずおずと言う将人に、そっか、と返した絋希は、

「うーん、俺もこれがめっちゃ食べたい、みたいなのはないんだよな。でも後でケーキ食べるから軽いのがいいよな」

と難しい顔をした。

 二人であーでもない、こーでもないと悩みながら街を歩き回る。
 スマートフォンで地図を見ていた紘希は、一緒にスマートフォンを覗き込む将人に問いかける。

「もういっそのこと、この時間からケーキ屋さん行く?」
「それもありですね」

 頷いた将人は、地図のナビをケーキ屋設定した紘希と共に、ケーキ屋への道を辿る。
 絋希が調べてくれた店は、駅から少し離れたところにあるらしい。
 大きな通りから逸れて暫く歩くと、赤い屋根にクリーム色の外壁の店が現れた。

「お、ここだな」

 スマートフォンと店を見比べて、確認する。
 店内にはまばらに人がいて、皆がショーケースの中を目を輝かせて見つめている。
 店先には黒板のボートが置いてあり、メニューが三つ置かれている。
 手前に置いてあったメニューを手に取り、二人で見る。
 メニューには、パスタやグラタンなどの写真が並んでいる。

「将人、どうする? ここで食べるか?」

 絋希の問いかけに、少し迷ったが頷く。
 メニューに載っているオムライスに惹かれてしまった。
 絋希が扉を開けると、カランカランとベルが二人を迎えてくれた。
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