ゆうれい探偵 死んだ姉ちゃんが幽霊になっても過保護すぎる

ケチャップかみ

文字の大きさ
2 / 3

1話

しおりを挟む
「姉ちゃん、依頼人の家って本当にここ?」

『メールに書かれた名前的にここで間違いないわよ!』

「…えっ住所は?」

『…?』


不思議そうな顔で首を傾げる姉。
いやいや、何で名前だけで断定してるのさ、住所の方が重要でしょ。


『あっ、こっちの方の家で間違いないわよ!』


こっちってどっち、姉が言う依頼人だと思われる女性の家は
どこかの社長か何かなのだろうか、凄く豪華でデカくてすっげぇデカくて、死ぬほどデカい家で、庭も滅茶苦茶広いし、門から玄関までかなりの距離があるし、庭にプールが見えるし、警備員もたくさんいる。

間違ってたら、どうするんだよこれ…。
姉は何で、ここと断定してるのさ…。

依頼人と連絡を取り合っていたのは姉だけで、俺は依頼人の情報を一切聞いてない。だって知る気もなかったし。
不安要素まみれだから、猫をダンボールに入れて置いて帰ったらダメかな?


『何言ってるの、ダメに決まってるじゃない、ほら早く猫ちゃん連れてお仕事の完了報告しないと』


警備員に不審者として射殺されたりしない?


『優ちゃんは悪い事してないんだから大丈夫に決まってるじゃない!』


姉ちゃんやっぱり俺の考え、全部読んでない?


『………さあ早く行くわよ』


いつものように姉がしらばっくれた所で、覚悟を決める。
でもこの家、どうやって入ったら良いんだよ、やっぱり警備員か、インターホン見つからないんですけど、事前予約とかしないと入れないんじゃないのこれ。

何かさっきから警備員の人たちが俺を見ながら無線機使ってる、警察を呼んでいるのかそれとも特殊部隊を呼んでいるのか、やっべえ逃げよう、これ捕まる奴や、きっと黒服に監禁されて、死ぬまで拷問されたりするやつや。

早く逃げないと絶対死ぬ。


『死なないわよ!大丈夫って言ってるでしょ!ほら猫ちゃん連れていくわよ』


でも姉ちゃん。
この家どうやって入るんだよ、入り方がわからねーよ。


『あっ優ちゃん後ろ』

「久しぶりやな!探偵って二階堂くんやったんか!」


突然、背中を殴られる。
ズガシッといった効果音が聞こえそうな程、勢い良く。


「ふぐっうおおおおっ!」

「な、なんや急に変な声あげて…」

「その赤髪、お、音坂か!いき、いきなり俺の背中を叩くな、思わずたたた倒れるだったところだろ!」

『この馬鹿女!優ちゃんに攻撃するなら、知り合いだからって容赦しないわよ!』


俺の知り合いに赤髪なんていう目立つ色の知り合いは一人しかいない。
小・中の時、同級生だった音坂矢子、とんでもエピソードばかりで忘れようにも忘れられない。

教室のドアを開けようとして素手でぶち破ったのは、後にも先にもこいつ一人だけだ。
しかも自覚がまったく無い、自分がどれ程強いかを理解してない。


「二階堂くん相変わらずでっかい身体なのに打たれ弱いなあ…」

「音坂が強すぎるだけだ!自分の馬鹿力をいい加減自覚しろ!あの頃でもヤバかったのに、更に強くなりやがって、ぜってーアザ出来てるよこれ」

「鍛えてはいるけど、ウチはか弱い女性、そんな力持ってないし大袈裟やなー」


短い赤髪を揺らし、ケラケラと笑う。
高校からは別の学校だったせいで、何をしていたかは知らないが、何故周りはこいつの強化を止めなかった。


「マジで痛ぇ…」

『救急車呼ぶ?それとこの馬鹿女はどうする、お返しでボコボコにしてあげてもいいわよ』


痛む背中と、シャドーボクシングを始める姉。
いやダメでしょ、幽霊なのに人間攻撃するとか悪霊じゃん。
俺は姉ちゃんがそういうのするのは見たくないよ。いやちょっと仕返ししてほしいけどさ。


『いいの?』


シャドーボクシングを止め、俺を見る姉。
しゃーないよ、この女、自然災害みたいなもんだったし、悪い奴じゃないんだよ悪い奴じゃ。


「あー…その…ごめんなさい」

「あーうん、大丈夫だ」


痛がる俺を見て、頭を下げてくる音坂。
悪いと思ったらきっちり謝ってくるし本当悪い奴じゃないんだよ。


「懐かしい後ろ姿だったから、テンション上がってちょっとやりすぎたかもしれへん…ごめんな」

「大丈夫だから大丈夫だ」

『家に帰ったら手当するわね!』


変な空気になってきた。
このどんよりとした空気、凄く嫌いだ。
こういう時はさっさと話題を変えるに限る。


「な、なあ音坂、この猫が依頼の猫でいいのか?」

「あ、うん、うちのサトーちゃんで間違いないで、ほらこっちにおいでーおいでー」


俺の胸で抱いていた猫がスルッと抜け出し、音坂の頭によじのぼり始め、グデっとだらける。
同級生の頃よく見た光景だ、学校ではペットは禁止されていたが、あの猫は勝手にやってきて、いつのまにか音坂の頭に乗っかっていた、もしかしてあの頃と同じ猫だろうか。


「あー、やっぱり頭にサトーちゃんおると落ち着くわー、見つけてくれてありがとなー」

「音坂、その猫は」

「学校の時の猫とちゃうよ、この子は二代目サトーちゃんやね、一代目サトーちゃんは去年隠れてしもうたし…」


隠れた、死んだではなく?
もしかしてあれか『猫は死期を悟ると姿を消す』という奴か。
でもあれって、実際は体調が悪く隠れているだけとか見た気がするんだが、本当に隠れたのか?

まあでも去年の話ならもう、ダメか。
隠れた直後に生きていたとしても、俺達と同じ19歳の猫だ、とっくに死んでるだろう。
その時も依頼してくれれば…いやまだ、あの頃は探偵なんてやってなかったわ。


「そうや、サトーちゃん見つけてくれた依頼金忘れないうちに払うから、ちょっと家まできてーな」

『そうね、さっさと猫ちゃんの依頼料金貰ってこんな場所からおさらばしましょ!』


俺の手を掴み、門の中に連れ込もうとする音坂。
だから力強すぎて痛いんだよ、全然逆らえねぇし、そもそも勝手に入るとまずいだろ。


「待て、待て、ごんな豪邸に勝手に入ると大変なことになるぞ」

「…どういうこと?」

「あそこの警備員達を見ろ、どこかに無線で連絡をしてるだろ、あれは俺達不審者を殺す手筈を整えてるんだ、間違いない」

『…優ちゃん…もしかして気が付いてなかったの?』

「…なぁ二階堂くんってもしかしてウチの家のこと知らへんの?」


何がだよ。
音坂の家なんて一度も来たことが無いんだから、知らないに決まってるだろう。
来た事が無い、同級生の実家の事なんて俺は知らないぞ。


「お前の家なんて行った事無いから知る訳無いだろ」

「あー…うーん…そうか、それは想定外やった、まさかウチの事知らないのは予想外やった。知ってて当然と自惚れてたのかも知れへんな…」


姉が珍しく、俺の事を無言で凝視している。
これはあれだ、何となくわかってきたぞ、いやでも仕方ないだろ。
マジで知らなかったんだから、知らないものは知らないんだからしょうがないだろ。


「…なあ音坂、俺は凄い事に気が付いてしまったかも知れん」

「言うてみ」

「お前、あの財閥の「音坂グループ」の関係者だな」

「正解、具体的に言うと音坂本家の五人兄妹の末っ子やな、まあ後を継ぐ可能性は無い気楽な立場やで」


こいつの家なら警備員に何かされる可能性は無く気楽に入れるな。
よし、じゃあ入ろう、細かい事は良いんだよ。さっさと五万円貰っておさらばしよう。

しかし、それにしても…。


「音坂って、お嬢様だったんだな…」

「その返しは初めてやわ」














しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...