ほくそ笑む大悪党 アルバロ・デ・モリーナ

ひまえび

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第5章――「湖の鎖、石の秤」

第14話――「湖の貢ぎの日」

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(1520年8月1日・テノチティトラン 王宮)

 テスココ湖の朝の光が、白い石の柱廊に反射していた。湖から吹き上がる風が、塩と藻の匂いを運び、羽根飾りと金の飾り紐をさらさらと鳴らす。石畳の中庭には、湖周辺の都市から到着した領主たちの船団が、今しがたまで波を立てていた名残を残していた。

 アルバロの新宮殿は、モクテスマの旧王宮を増改築して造られたも。湖に向かって開いた広い中庭には、テスココ、チャルコ、ショチミルコ、コヨアカン、イスタパラパ、そして西岸の盟友トラコパンなど、湖を取り巻く都市の旗印がずらりと並んでいた。色付きの綿布に刺繍されたそれぞれの紋章が、夏の光の中で鮮やかに揺れる。トラコパンの旗には、山の斜面を登る鹿が縫い取られており、木材と石を運ぶ山の町らしさを誇示していた。

 領主たちは、後ろに従者と荷運び人を連れていた。籠や木箱には、磨き上げられた金の杯と銀の皿、翡翠をはめ込んだ胸飾り、彩り豊かな羽根で縁取ったマントが重ねられている。箱を開けるたび、金属が触れ合う乾いた音と、染料や香の甘い匂いが、石の床に広がった。トラコパンの一団は、杉や松の香りをまとった角材束も持ち込んでおり、湖畔の都市にとって貴重な建材の匂いが、他の香と混ざって鼻先を刺した。

 その列のあいだを、若い女たちが歩いていた。各都市の領主が、忠誠のしるしとして捧げる「もっとも美しい娘たち」だ。黒曜石を磨いたような黒髪を長く垂らした娘、青と緑の羽根を編み込んだ三つ編みを揺らす娘、白い綿布の上衣に、赤い刺繍の帯をきつく締めた娘。褐色の肌には、石粉を混ぜた香油が薄く塗られ、日差しを受けてしっとりと光っていた。

 耳飾りには翡翠やトルコ石の小片が連ねられ、歩くたびにかすかな鈴のような音を立てる。鼻先には花の香りが混じる。テスココから来た一団は、水辺で採れた白い睡蓮と青い水草の花を髪に挿していた。ショチミルコの娘たちは、浮き庭で育てた黄色いマリーゴールドを冠のように編み上げ、頭を動かすたびに花びらがこぼれ落ちそうであった。トラコパンの娘は、山で採れた松の若芽を髪に差し、指には木目の美しい指輪をはめていた。

 アルバロは玉座のひじ掛けに軽く身を預け、目の前に広がる色と匂いの波を眺めていた。金銀財宝と美女たち、それに巻物に記された数字。すべては、今日から正式に動き出す「湖の都市収益の5分の1」という新しい秤に乗せられている。

 彼の傍らには、黒い玄武岩に刻まれた大きな石板が立てられていた。そこには、各都市の人口と市場の数、倉庫に積み上がるとうもろこしやカカオ豆の量が、きっちりと刻まれている。その下には、細かな文字でこう記されていた。

 すなわち、畑と湖から上がる収穫には、おおよそ10%の地税をかける。とうもろこしなら10袋のうち1袋、カカオなら10袋のうち1袋が王の倉へ入る決まりだ。市場で売り買いされる布や塩や魚には、2~4%ほどの通行税を上乗せさせる。行き交う荷物から、わずかに角を削るように徴収する税だ。それでも人々が嫌がらぬよう、徴税の場所と時間は決められており、兵が気まぐれに奪い取ることは許されていない。

 そのうえで、都市全体の商業利益や、鉱山・工房からの上がりには、「王領分」として5分の1を取る。カカオ倉の帳簿を締めたあと、残った利益の5袋のうち1袋を、テノチティトランと王家の炉と堤防にまわす。農民が食うべき分と種に回す分は、あらかじめ除いてあるから、収穫の年にはまだ腹に余裕が残る設計であった。

 旧アステカの貢納は、布、羽根、香料、奴隷、労働奉仕がごた混ぜになった複雑な仕組みであった。どの都市がどれだけ搾られているか、当の王でさえ一目では分からないほどであった。アルバロは、そのごった煮をやめた。湖の都市の可処分収益のうち、平年ならおよそ5分の1を取る。それだけを原則として掲げた。

 「畑と湖からは10に1、市場の門で少し、残りの儲けから5分の1」

 その三つを合わせれば、都が働いて生み出した余剰のうち、だいたい5分の1が王の取り分になる。テスココやトラコパンのように、戦で早々に新王へ靴裏を向けた都市には、しばらく15%前後に軽減した取り立てを約束した。逆に、なおも反抗の気配を見せる湖外の町には、25%近くまで負担を引き上げる。数字は一本の秤でありながら、載せる相手によって重さを変えることができる道具であった。

 玉座の左右には、アルバロの妻たちが並んで座っていた。第一皇后イサベルは、薄い青の綿布ドレスの上から白いマントを羽織り、膝の上に両手を重ねている。腰のあたりで布がふくらみ、その下にいる子どもの重みがゆるやかに伝わっているのを、自分の体の内側から確かめるように、ときおり手を添えた。

 第二皇后テオトラルコは、翡翠色の長衣に、金糸で縁取った黒いマントを重ねていた。かつて儀礼の頂点に立った女王の貫禄はそのままだが、帯の結び方は、腹のふくらみを締めつけないように緩められている。歩けば足元の鈴が鳴るが、その一つ一つが、腹の子に合図を送っているようにも聞こえた。

 妾のチャックニクは、マヤ風の短い上衣に鮮やかな赤い腰布をまとい、片手で石板の数字を確かめながら、もう片方の手でふくらみ始めた自分の腹を支えていた。ルシアは、黒人兵たちの列の前に立ち、白と紺の綿布ドレスの上から革の帯を締めている。胸の下あたりで帯を結び直したため、彼女の腹もまた、丸い線を描いていた。

 そのすぐ下、玉座の階段の左右には、特にアルバロに気に入られている妾たちが控えていた。

 マトラルテン〈28〉は、もとはテスココ王家の第一王妃だ。湖風をはらむ白い上衣に、水草のような淡い緑のスカートを重ね、細い腕には金と翡翠の輪をいくつも通していた。テスココ語の雅な言い回しと、ナワトル語の市井の言葉、さらにつたないながらカスティーリャ語も操り、今日のような貢納の日には、テスココとトラコパンの領主たちに向けて、王の意向をやわらかな声で翻訳する役目を負っている。湖の風が通るたび、彼女の髪に挿した白い睡蓮の花が、かすかに湿った香りを放った。

 シウァコアトル〈24〉は、テノチティトランの古い官僚一族の娘だ。名のとおり、蛇をかたどった銀の耳飾りを揺らし、黒髪を頭の高い位置で束ねていた。濃い紺の長衣には、細い赤い線で法廷の階段を模した刺繍が施されている。彼女は帳簿と法令に強く、徴税官たちの報告を先に目で追い、数字の乱れを見つけると、蛇が獲物を見つけたときのような静かな笑みを浮かべる。その笑みを見た書記たちは、慌てて数字を正すのが常であった。

 トラソチトル〈19〉は、ショチミルコのチナンパから来た娘だ。淡い黄色の上衣と、緑と橙の縞のスカートに、花冠の名残のように小さなマリーゴールドをいくつも髪に挿していた。肌は太陽の光で柔らかく焼け、指先には土の感触がまだ残っている。彼女が歩くと、湿った泥と水草と花の匂いが混じった、チナンパ特有の甘い香りが立ちのぼった。アルバロは、その匂いを嗅ぐたびに、湖の上に浮かぶ畑の列と、人々の働く姿を思い浮かべる。

 イツクィクァウア〈18〉は、トラテロルコの商人街で育った。背は高くはないが、目つきが鋭く、黒曜石の刃のように光る視線を持っていた。濃い赤の腰布に、銀貨の模様を織り込んだ帯を締めている。彼女の耳には、小さな貝殻と銅貨を重ねた飾りが揺れ、動くたびにかすかな金属音を立てた。どの都市の貢ぎ物が本物の翡翠で、どれが粗悪な模造品か、彼女は指先で撫でるだけで見分けることができた。

 トラウィスカリ〈18〉は、チャルコとコアトリカマックのあいだの肥沃な谷から来た娘だ。朝焼け色の上衣と、焦げ茶のスカートをまとい、髪には東の空を思わせる薄い桃色の布を巻いていた。頬はよく笑うせいで丸く、口元にはいつも食べ物の気配が漂っている。彼女は台所と王の食卓を行き来し、各都市から送られてくる穀物と魚と唐辛子の質を確かめる役目を買って出ていた。食べることに貪欲だ者ほど、食糧の管理に向いているとアルバロは考えていた。

 この五人は、王が炉や堤の工事を見に行くときも、湖上の砲舟を視察するときも、ほとんどいつも一緒に動いた。マトラルテンは貴族たちの顔色を読み、シウァコアトルは数字を数え、トラソチトルは水と土の匂いを確かめ、イツクィクァウアは荷の中身を疑い、トラウィスカリは兵と工夫の腹の音を聞く。それぞれが違う感覚で世界を測り、その測り方をアルバロに差し出すのであった。

 王宮の空気は、重苦しい戦の前とはまるで違っていた。石の床の上に敷かれた色布からは、太陽で温まった綿の匂いが立ちのぼる。厨房のほうからは、焼いたトルティーヤと、炒ったカカオを挽く香ばしい匂いが漂ってくる。回廊の影では、楽師たちが貝殻の笛と太鼓の調子を合わせており、ゆるやかなリズムが心臓の鼓動と混ざり合った。

 テスココの旧王家からも、いくらかの女たちが呼び出されていた。未亡人王妃トイヤウアと、年長の王女たちは、湖岸の別宮から護衛に囲まれて到着し、今は中庭の片隅に控えている。マトラルテンはもはやその列にはいない。彼女は今、アルバロの妾として玉座の足もとに座し、同時にテスココ王家の血を新王朝へとつなぐ「生きた証文」として扱われていた。

 石階段の上から見下ろすと、女たちの頭上で花と羽根が混じり合い、湖面の反射光とともにゆらめいていた。アルバロは、その光景を一つの巨大な計算盤として眺めていた。都市ごとの収益の5分の1、娘たちの年齢と美貌、金銀の重さと、これから産まれてくる自分の子どもたちの数。すべてを心の中で並べ替え、組み合わせ、どの駒をどこへ置くかを考える。

 彼がひじ掛けから身を起こすと、太鼓の音がひときわ高く鳴り響いた。中庭のざわめきがすっと吸い込まれ、羽根飾りの揺れさえ一瞬止まる。アルバロは、陽気な笑みを浮かべながらも、目だけは冷たい水面のように静めて、湖の王たちを見渡した。

 テスココ湖の周りに連なる都市の収穫と血、その5分の1が、今この宮殿の中心に集まっている。ここから先は、彼の手ひとつで流れを変えることができる。
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