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縁の下の力持ち、そして、ワイルドカードエントリー。
第7話 SBKマシンのテスト
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前回は、遂にSBKへの転向を決意して、ホンダワークスのシートをゲットした俺はSBKマシン「ホンダCBR1000RR-RWファイヤーブレード」のテストもする事になった。幸いにも今回はMotoGPの方にステファンがマルケスの代役としてエントリーしてる為、俺は安心して右手の療養をする事が出来た。そして無事に右手も完治して元通りになった為、心行くまでマシンを乗り回す事が出来る。ちなみに俺は日本国内でこのマシンを乗り回すので「ツインリンクもてぎ」に居る。そして現地入りしてガレージに向かうとHRCトリコロールを纏った「ファイヤーブレード」が居た。そして俺もツナギに着替えて跨ると、このバイクが「過激」と言われる理由が分かった。まずはライディングポジションが明らかに「過激」そのもの。明らか「レーシングバイク」のポジションで、これは「街乗り」や「ロンツー」にとかに向いてない訳だ(元々そういう事前提に作られてないから良いんですけどね!)。腰やるもんこれじゃ。でもこのポジションなんか見覚えある様なと調べてたら、かつて、ホンダがSBKを征服する為にだけ生み出した「狂気」「VTR1000-sp1,2」とほぼ変わらないポジションだった。確かに勝利に飢えてる事は分かるけど、いくら何でもこれはやり過ぎだ。エンジンをかけてスタートと行きたいけど、かなり久々過ぎてエンジンのスタート方法を忘れていた為、どうやっていいか分からずメカさんに手伝ってもらって無事にスタート。一昨年のやつよりも甲高くて澄み渡った音が響き渡った。そう、こう見えて俺は一昨年SBKに「モリワキ・アルティア・ホンダレーシング」から負傷したレオン・キャミアの代役としてワイルドカードエントリーしており、結果は全レースで表彰台を獲得とはいえ、マシンの状態といい、チームの状況といい、大きい声で言える様なものでは無かったが、この時から「こういうカテゴリーに行くのもありだな。」と興味を持ち始めていた。ギアを1速に入れてコースイン。最初のうちはずっとMotoGPマシンに乗ってたおかげで感覚を掴むのに一苦労していたが、数こなすうちに慣れていき、特性も理解出来た。そして前乗ってたやつとの違いはかなりあって、エンジンが「ビッグボア・ショートストローク」というハイパワーな物に仕上がっている。あとは空力デバイスも追加されている。これの恩恵は凄まじくてウイリー抑制と安定性向上に繋がってるとか。だけど肝心なのが「何かもっさりしてる。」という事。走ってる時に気付いたのだけど、どうもフレームが「中途半端」で「違和感」の塊だった。これじゃ優勝なんて無理な訳だ。例えハイパワーなエンジンや足があってもフレームがこれじゃ、いくら何やってもダメな訳だ。俺はピットに戻ってきてすぐに「今からこの子を大幅に見直そう。一向に3位止まりの理由が分かった。」と告げて改善点を挙げた。まずはフレームが「中途半端」という事。これじゃ優勝なんて無理。もう少し硬くしても良いくらいだ。あとは「ライディングポジション」。これは俺も持って35周位だった。このポジションであと5周追加で走ったら腰への負担が莫大な物になる。もう少し楽な体勢に出来るように見直そうとみんなに告げた。これじゃ実戦となるとかなりの負担になる。あとこれはかなり問題でエンジンが想像以上に扱いにくくて非常に面白いけど怖い代物に仕上がっているということ。超高回転型ユニットとは思えない程扱いにくくて乗っていて楽しかったけど怖かった。エンジンも先代のやつを改良したとかではなくて、これの為だけにわざわざ1から作ったらしくてピストンΦは驚愕の81mmというこれはRC213Vと同様のサイズである。ストローク量は48.5mmと「ビッグボア・ショートストローク」という超高回転型ユニットに仕上がっている。そんでもってノーマルは217ps/14500rpmでワークス仕様は推定でも235ps/15500rpm強を叩き出す「アブノーマル」なユニットへと強化されている。これも3強(カワサキ、ヤマハ、ドゥカティ)に対抗する為の手段である。あと改善点としては電子制御の詰めが甘すぎるという事。確かに「素性」は良いけどまだまだ上を目指せると思った。そしてエンジン特性も扱いにくくて、もう少しマイルドにしてもいいくらいだ。でも強いて言うならば「CBR954RR」みたいな「Fiだけどキャブみたいなドッカン加速」が欲しい。良い所も多いけど改善点がそれを上回るというのはよくある事だ。あとはどのライダーもすぐに適応できるような「オールラウンダー」に仕上げない限り相当苦労を強いられる格好になる。俺もかなり苦労した程だ。これじゃ、アイツもかなり苦労する事間違いなしだ。俺はアイツの為にもとかなり頑張って作業に取り組んでいた。ちょうどアルガルベ戦が終わった時に俺はメッセージで「君の来季だけど俺と一緒にスーパーバイク世界選手権にフル参戦する事に決まった。安心しろ。ホンダワークスからだから。ちょうどMotoGPにも飽き始めた頃だったし。それと今現状を見ててもホンダのMotoGPシートなんて望めるような状況でも無いし、そんだったらSBKに転向した方がまだ身の為というか何と言うかこう違う経験も積めるのかなと思って。ちなみにこれは俺のリップサービスでも何でもない。ただMoto2にバカみたいに速いライダーがいるけど来年のMotoGPシートの空きがあるかなんて話を青山さんと話してく内にアドバイスを貰ってな、それでたまたま日本に帰国してHRCに行って若林さんに直談判したらok貰えたもんで。でも今はMoto2に集中してくれ。それと契約事項として夏の風物詩 鈴鹿8耐にワークスチームからエントリーする事にもなってるからそこの所もよろしく。」と送信した所アイツは「先輩…ありがとうございます!!!私の為に色々してくれて!本当に感謝してもしきれません!!」と大感激。ホント、俺は「走る、縁の下の力持ち」だと自分でも思ってる。というより何故SBKを選んだかと言うとそろそろ実戦に出たくてたまらなかったからだ。MotoGPは今の所、俺とステファンの2人で回してるからその関係でなかなか出番が回ってこないんだよ。頼むから、誰か本当に開発ライダーとかに来てくれないと仕事が…。仕事が山積みなんだ!!
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