MotoGP HRC Development&Reserve Rider Memory

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縁の下の力持ち、そして、ワイルドカードエントリー。

第6話 とあるお誘い

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前回は、以前のテストでコケてズタボロになった右手でレースに「強行出場」して表彰台を獲得したけど、今回はテストともレースともMotoGPとも関係ない話。それはレースが終わり久々に日本へと帰国して、右手の手術を行ってHRCで色々と仕事をしてる時に若林さんから「山越君、ちょっといいかい?君に話したい事がある。」と言われて「良いですよ~。」と向かってくと、若林さんから「来季、君にはMotoGPでは無くてSBKにワークスチームから出てもらうことにした。現状見てても頑張ってるのは分かる。けどまだまだなんだ。ヤマハ、ドゥカティ、カワサキ、BMWにも届いてない。だから君がテコ入れをして欲しいんだ。久々にCBR使いとしても走りたいでしょ?」と言われると俺も「そろそろMotoGPにも飽きてきたと言うより、何か他のカテゴリーに出たいなと思ってたんで。そこでSBKにも目を着けてたんですよ。ちょうど良かったです。そろそろSBKのチームに就活しに行こうかと思ってたんで。ありがとうございます!」と言うと若林さんは「喜んでくれてよかったよ。最初は君の事だからMotoGPに固執してるんじゃないかなんて思ってたんだよ。」というと俺は「いやいやそんなわけないですよ。ただ日本でやってくれないというのがネックですが。」と言った。そして若林さんは「大まかな事とか契約とかは来週くらいに伝えるよ」と言われ、そして迎えた今週。俺はいつも通りHRCに来て「興味本位」でSBKマシン「ホンダCBR1000RR-RWファイヤーブレード」の改善点や改良点を探していた。少しでも多くパワーを出すにはどうすればいいか。少しでも良いコーナリングをするには何を変えたり改善したりすればいいのかなんてWSBKチームの人達と考えてたら、若林さんが来て「ちょうど良かった!来て欲しいとこがある。」と言われて着いて行った先は若林さんのオフィスルーム。俺は心の中で「ん?なんか見覚えある様な…もしかしてここ若林さんのオフィスルームじゃねぇか!」と言っていた。俺は部屋に入ると、そこには1枚の紙とペンが置いてあり、俺は首を傾げた。「これは一体何ですか?」と言うと、若林さんは「あぁこれ?契約書。SBKの。」とサラッと言っていた。俺はその契約書にサインを書き、晴れて「チームHRC」のレギュラーライダーとして来シーズンのSBK(スーパーバイク世界選手権)に参戦する事が決定した。俺は「ありがとうございます!!!」と言いお礼をした。そして「あとこれは、個人的な我儘なんですけど1人SBKワークスライダーとして推薦したい人が居るんですよ。その子の名前は中野美海。俺の後輩でもあり、日本人グランプリライダーでも3人目の女性ライダーなんですよ。今Moto2で頑張ってるんですけど現状どのMotoGPチームも来季の体制固めちゃってシート無いんですよ。だからここで走らせてやってください。もしレプソル・ホンダが前みたいに3台とかだったら話は別だったんですけどね。そうもいかないみたいなので、ここで居場所を作って欲しいんです。」と言うと若林さんは「分かった。次のレースが終わり次第、声掛けてみるよ。」と言ってくれていた。俺も度々あいつの相談やらに乗ってやる時が多くて現状も知ってるのだ。ちなみにこれは俺の提案でもある。それは前のラウンドでMoto2クラスを観戦してる時だけど、実は俺は頭が上がらない人が1人。その人は2009年の250ccクラス最終年度のラストチャンピオンである青山博一さん。この人は今シーズンが始まる最後の1秒まで俺と一緒に何とかしてレギュラーシートを獲得しようと一生懸命探してくれたり、アドバイスや相談とかに乗ってくれたりと色々とお世話になってるからだ。実はあいつも青山さんが監督をやってる「イデミツ・ホンダ・チームアジア」からフル参戦していて、今シーズンは最初の間こそ上手いこと馴染めず、思う様な成績が出せなかったけどMoto2マシンの特性を掴めたのか、最近は成績が右肩上がりでポイントランキングトップという非常に良い状況にも関わらずシート無いとかいくら何でもおかしすぎる。でもこれもこの世界の現実。だけどMotoGPがダメだとしても「スーパーバイク世界選手権」という市販車のMotoGPと言われているカテゴリーがある。確かにMotoGPマシンと性格とかもガラッと変わってるけどMotoGPでシートが見つけられないくらいならここで活動した方が良いし、路頭に彷徨われてもらってはどうしようも無い。だからSBKのシートに推薦した。それだけの話だ。俺もこの世界が「義理人情」という言葉で動いていないのは重々承知してるのだが、将来有望な若者がこうして路頭を彷徨う様を見るのはもっと辛い。この世界にも「レースやチームにあまり私情を持ち込むな。」と言う暗黙のルールが存在するけど、今回の話を聞いてると私情を持ち込むなというより、こればかりは持ち込まざるを得ないのだ。本当に個人的な我儘を聞いてくれた若林さんには感謝しかない。俺は右手の治療も急がないとと言っても最終戦まで十分期間あるから、そこを療養期間に充てて過ごす事にした。今回の契約事項に含まれていた8耐参戦は残念ながら2年連続で中止になってしまったが、来年こそはと契約事項に入れてくれた。だけど一番の利点はSBKは市販車ベースだから練習機が安価かつ入手しやすい。俺も実はここだけの話だけどCBR1000RR-R spを一括購入してサーキット用で乗り回してるがこれをHRCに持ち込むとかなり大改造されて、まさに「羊の皮をかぶった狼」という言葉がピッタリなくらいのバイクに仕上がってしまった。俺が持ち込むや否やいきなり「レースカムぶち込もうぜ。」とか「もっとパワーを追い求めようぜ。」とかかなりの「脳筋論」を展開し始めて何を思ったかエンジンをオレのバイクから引きずり出してカムカバーのナットを外し始めた時は流石に「待て待て待て!」と止めようとしたが時すでに遅し。一度彼らの手に工具やバイクとかが渡ると止めても止まらなくなる。だけど俺の要望として「マフラーは1000RR-RWと同一スペックのアクラポちょうだい」と言ったため、そこは理解してくれたらしくちゃんと付けてくれた。だけどいきなり「レースカムぶち込もうぜ。」はマジで驚いたよ。そしてもう1台俺の奴と同一スペックのマシンを手がけたりと勢いがすごすぎて俺一人で手に負えるようなレベルでは無くなってきた。そしてもう1台は後輩が無事に最終戦まで走りきってちゃんと日本に帰国した時までベールを被せておく事にした。
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