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縁の下の力持ち、そして、ワイルドカードエントリー。
第28話 WSBK開幕戦にワイルドカード
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2025年も幕を開けて、いよいよライダー達も「冬眠」から覚めて本格的にレース活動を再開し始めた。そんな中で俺も新年一発目からWSBKにワイルドカードエントリーをする事にした。と言っても実はCBR1000RR-RWの「コンセッション」という優遇措置が免除されてしまい、泣く泣く市販フレームでの参加を余儀なくされてしまったが、俺が一昨年に乗っていたMC82EVOはこれを見越した開発マシンでもあったので、新開発の軽量フレームを導入することが出来たのだ。位置づけとしては「マイナーチェンジ」という位置づけなので、正しく「レギュレーションの抜け穴を突く」マシンなのだ。今回はそれの効果を試すべく、HRCリザーブ兼開発でもあり2022年のWSBK世界王者の俺が選ばれた訳だ。市販ベースマシンを降りて久しい俺は、すっ転ばずに走り切れるのか不安だったが、香里奈ちゃんも現地にリザーブとして帯同してくれる事になったおかげで多少は負担軽減になった。こうして開幕戦フィリップアイランドを迎えた。WSBKには「Back to71!Back to Hikaru!!」というニュースで持ちきりだった。それよりも激アツニュースがビモータが約11年振りにWSBKカムバックを果たした事だ。と言っても実態はカワサキワークスのオペレーションをサテライトのプセッティに移転させて、元のワークスメンバーを残しただけの「看板建て替えチーム」であり、ビモータオリジナルマシンではなくて「フレームやカウル系はビモータでパワートレインやミッションはカワサキ」という「キメラマシン」なのであるが、この「ビモータKB998リミニ」自体なかなかカッコイイので気に入ってる。俺も見るやいなやビモータの人に「なぁなぁ!コイツ日本でも販売するのか!?するんだったらさ、俺最初の顧客になるからさ!予約させてくれねぇか!?頼むよ!!」と思わず口走ってしまったが、勿論ホンダには契約当初から「プライベートの時くらいは他社バイクokにしてくれよ。違いを知りたいのもそうなんだけど、たまにはプライベートで他社バイク乗りたいんだよ。」と契約する時に言ったら、意外と寛容的だったのか、そこも内容につけ加えてくれてokしていたのだ。だからこういった事が出来る。俺はビモータの人にそう伝えてスタコラサッサとガレージへと戻ると美海が「ひー君?何してたの?」と聞かれてしまい、「何って?ビモータカワサキのガレージに遊び行ってたんだよ。KB998が気になってて見て来たらカッコ良すぎてさ、思わずビモータの人に市販仕様のKB998リミニを日本導入するなら最初の顧客になるから予約させてくれ!って言ってきただけだよ。」と言うと「またバイク増やすの?なら、お嫁さんである私からの条件で、アプリリアの125を手放すか譲るなら認めます。でなきゃダメです。」と言われると俺は「RS125?どっちの?2st?それとも4st?」と聞くと「後者。それか私にくれるなら認めます。」と即答されてしまい逃げ道塞がれた俺は前者を手離したくないあまり「分かった。4stのRS125譲るよ。日本帰ってからさ名義変更とか自賠責保険とかやろ。」と説得させて事なきを得る一面もあった。その時にメカニックからは「ルシファーズハンマー(嫁さんの鉄槌)でも下ったか?!」と言われると「カカァ天下からの有難いお説教と言ってくれやwww」と軽口返したりしてリラックスしていた。そんなこんなでいよいよ、セッション開始の時間になり、今年最初で最後のキュアワンダフル仕様のマシンに跨りコースイン。慣らし運転を行ってからフルスロットルでフィリップアイランドの地を駆け抜けてトップタイムを叩き出して帰って来て、珍しく余裕があるのか伸びをしたりしてリラックスしていた。日本でのシーズンオフは美海と2人で過ごしたり、他のメンバーと過ごしたりと結構充実していた。そして予選では脅威のタイムを叩き出して、サーキット中を戦慄させた。オフで無駄にグータラしてた訳では無いというのを周りに知らしめる事が出来たりした。こうしてポールポジションを手にした俺は、勢いそのままに3レース共に制圧して大満足のレースとなった。あとは、全日本ロードレース選手権に向けて日本でゆっくりしつつも準備をするのであった。
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