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第1章 小さな星。
Round9 ネステオイル・ラリーフィンランド
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今回のラリーの舞台は、ホームのフィンランド。しかもユヴァスキュラ周辺。その為、移動がかなり楽。コースはグラベルだけど、平均速度は約135km/h。最高速度は約200km/hオーバーに到達する、WRC屈指の超高速ラリーだ。ジャンピングスポットも多くて、名物の「オウニンポウヤ」は、平均速度がすごく高いコースとしても有名。だけど走っていて、ものすごく楽しいコースだ。ジャンピングセクション通過時は、すぐコーナーの為、進入角度や空中姿勢のコントロールが要求されるので、かなり精密なペースノートが必要とされる。レッキの時から、このラリーの洗練を浴びた。ちなみにレッキの時は、スバルWRX STIを使ってるけど、なかなか、感覚を掴むのに大変だった。そして迎えた初日。初日から、超高速ラリーが始まった。俺は、普段出しもしない速度かつ、未知の領域に、かなり神経を尖らせ、集中力を研ぎ澄ませていた。たとえ3日間のラリーだとしても、ここまでタフなものないと思ってる。だけど、高速戦が得意な俺は、それを活かして首位発進する事が出来た。2日目は、名物の「オウニンポウヤ」を通るコースレイアウトだ。ここは、俺でさえ恐ろしいと思う程のセクションで、一度ジャンプしてしまうと着地しない限りコントロールする手立ては皆無。しかも滞空時間がバカみたいに長い為、景色がゆっくりと見える。そして、超高速ジャンプの為、緻密な制御も要求される。美海ちゃんにも、「この、オウニンポウヤは、超高速ジャンプセクションだから、進入時にはアクセル&ブレーキと言って欲しいな。」と言う程だった。それ程、恐ろしいと思う程のセクションだ。2日目が始まった。ローダウンフォースであんなとこ飛ぶなんて、もはや「狂気の沙汰」としか言い様がない。そして、オウニンポウヤに入った。美海ちゃんは、「オウニンポウヤ、アクセル&ブレーキ!!」と、言ってくれたおかげで何と58mのビッグジャンプを披露する事ができた。だけど、生きた心地がしなかった。かなり気持ち悪かった。だけど、首位の座を明け渡す事無く、2日目を終える事が出来た。そして迎えた最終日。最終日は、まさに超高速ラリーの名に相応しいラリーとなった。俺も、2位のタナックから、逃げれるかどうかだった。だけど、このラリーから俺らトヨタは新兵器を導入した。それは、本来なら絶対ありえない、「人外的挙動」をする事が出来る新兵器だ。その名も「DCCD」という、かつてスバルが使っていた、動力分配機構だ。多分一番過激で凄くて面白かった90年代から2000年代初頭位のWRCを見たり、出たりした人なら分かると思うが、そう、スバルの「アレ」である。簡単に言えば、「直角に曲がる事」が可能なやつである。それをスバルは、特別に供給してくれて、というより、あくまでも「試験的」に供給してくれた。それまでは、普通のセンターデフだったが、俺が日本で活動してた時に、たまたまGC8を乗っていて、ラリーとかダートラとかに使いたかったので、「化けの皮」を剥がした際に、その挙動に一目惚れしてしまい、それ以降導入を所望していた。それに応えるかの様にスバルも協力してくれたりと、トヨタとの仲の良さが伺える。だけどDCCDの特性上、好き嫌い別れる為、まずは俺のマシンに着けてからだとの事。そして、DCCDの真価は最終日に発揮される事になった。しかも何のテストも無しのぶっつけ本番。だけど、今までインプレッサで培って来たノウハウや膨大なデータが、全てを証明してくれている。そして、コーナリング時には、美海ちゃんに「カックン来るから気をつけてね。」と言って、DCCDの真骨頂「カックンコーナリング」を披露。それを見た、2013年から参入したVW、2014年から再参入したヒョンデは度肝を抜かれたと思う。特にVWはその時代を知らない為、余計驚いたに違いない。そして、最後のセクションもクリアして、トップでフィニッシュ。美海ちゃんも、「あの挙動は何?何か直角に曲がってたんだけど!!」と言うと俺は、「スバルが特別にDCCDと言う兵器を供給してくれた。それだけ。しっかし、普通の4発とも相性良いなんて話は聞かされてなかったし、驚いたよ。」と言うと、「それ聞いた事あるよ。アレでしょ?インプレッサが直角に曲がってたやつ。」と美海ちゃんが言うと「そうそう。それを試しに着けてみた。」と言うと美海ちゃんは、「だからディスプレイにあんな異常なタイムが出たのね。」と納得していたりもした。
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