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第2章 王者防衛戦。親友の死を乗り越えて。
番外編 俺が唯一勝てなかった、2人組
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前回のラリースウェーデンで、衝撃的な勝利を飾った鹿角、黒澤ペア。そのお姉さん達も実は見に来ていた。これは、そのペアの現役ラストランとなった2016年の最終戦ラリーオーストラリアまで続いた年間王者争いの話。それは、2016年の世界ラリー選手権最終戦ラリーオーストラリアでの出来事だった。「私達は、このラリーオーストラリアをもって、現役引退を表明します。これまで数多のラリーを経験してきましたが、このラリーで全てに決着をつけようと、前々から決めていました。振り返れば、隣に居る、有紗(ありさ)さんとペアを組んでから、色んな事がありました。ゴール手前数百メートルでのエンジンブロー、最終戦でのまさかまさかの大逆転タイトル獲得、等々思い返すとキリが無いくらい色んな事を経験してきました。そして、この最終戦ラリーオーストラリアで、世界ラリー選手権に本当のサヨナラを告げようと2人して決めた事です。皆さんには、私達のラストランをどうか優しく見届けて欲しいです。そして、最後くらいは勝って終わりたいです。」と言った時には、大勢の人達から拍手が巻き起こった。それに連なるかの様に、サマイアもこのラリーをもって現役引退をする事を決めていた。俺は「あの人達のラストランだからと言って、手を抜く訳無いし、むしろ最後まで俺は、あの人達にとって、最大のライバルであり続けたいし、俺もあの人達を超えれなかったと言う壁を作って今シーズンを終わりたいし、今後もあの人達を目標にラリーをしていきたいです。俺は最後まで正々堂々、あの人達と勝負するだけです。それがあの人達にとっても、一番嬉しいはずですし、最後に最高の思い出を作って、終わりたいと思ってる。なら、最後まで俺は全力で、あの人達に食らいつくだけです。」とインタビューで話していた。俺は、サマイアに「今までありがとう。サマイア。俺がサマイアとペア組んでから色々あったよな。ゴール直前でマシンが派手にすっ転んだり、ズタボロのマシンでゴールしたりとか。でも最後くらいは、2位でも良いから表彰台に立たせてやりたい。それが、俺にとってサマイアにしてやれる最後の仕事だ。」と言うと「ありがとう。ヒカル。俺もお前と組んでから本当に楽しかったぜ。色んな事に遭遇したり、優勝したりと。今回くらいは、久しぶりに化けの皮剥がれるから、気を付けろよ。そして、着いてこいよ!マイ…アミーゴ!!」とやる気十分だった。そして、最終戦ラリーオーストラリアが始まった。俺が王者を取る条件としては、「優勝」が絶対条件だったが、今回は、あの人達に勝って欲しい為、「王者」なんてもん必要無かったし、むしろ、あの人達に王者を取ってサヨナラを告げてもらいたいと思っていた。そして、レッキの時も、どこをどう上手く活用するかを注意深く見ながら、ペースノートを作ってたりもした。そして迎えた初日。もうこの時から、この2組による「最後の戦い」が始まった。まずは先行、鹿角、黒澤ペア。有紗さんの「行きますわよ!アサミさん!10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…GO!!」と言うナビでスタート。俺は、その15分後にスタートする事になっていた。そして俺の番。サマイアも「行くぜ…マイ…アミーゴ!!5,4,3,2,1…GO!!」と言うカウントダウンでスタート。2人の差を縮めて行く事にした。そして初日を2人と僅差の2位で終えた。2日目も、僅差の戦いが続いたが、追い付きそうで追い付かないという、もどかしさもあった。コンマ数秘。そのコンマ数秒が、超えられそうで超えられなかった。結果は、初日より少し速くなったが、順位は変わらなかった。そして迎えた最終日。泣いても笑ってもこれがあの人達と、サマイアにとってのラストランでもあり、俺にとってもシトロエンでのラストランとなる。この時俺は、ある意味「自殺行為」とも言える「奇行」に出た。俺はメカさんに「電スロのレスポンスを今の状態から、0.5秒で良いからタイムラグを作って欲しい。今回は、あの人達に勝てそうも無いことが目に見えてるから。」と言うとメカさんにも「正気か?でも、ヒカルがそういうならやるよ。その代わり何があっても俺らは知らないし、「自己責任」になるから忘れるなよ。」と言われたが、引き受けてくれるだけ、俺は有難いと思ってる。スタート地点に行き、あの人達の後ろで待機していた。そして今でも語り継がれている名ラリーが始まった。アサミさんが「有紗、今まで本当にありがとう。私も有紗と一緒にWRCに出れてすごく嬉しかったよ。今日で、全て終わっちゃうとなると、少し悲しくなるけど、あとは、輝くん達がやってくれるよ。皆に見せつけてやろうよ!私達の本当のラストランを。行くよ…有紗!」と言うと「はい!!アサミさん!」と有紗さんも返事をして「10…9…8…7…6…5!4!3!2!1!GO!!」と言う、有紗さんの合図で、スタート。そしてサマイアも「今まで本当にありがとう。楽しかったぜ。お前と一緒に走れてよ!行くぜ…マイ…アミーゴ!!10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!GO!!」と言う合図でスタート。俺は最後まで、正々堂々とあの人達と戦えて本当に良かった。そして、電スロに0.5秒くらい、タイムラグを設けたのも、最後くらいは、あの人達のラストウィンを「この目」で見届けたかったからだ。そして両コ・ドライバー、最後の3セクション辺りから涙を堪えてナビをしていた。そして、「ファイナルセクションクリア…フ…フィニッシュ…ありがとう…マイ…アミーゴ!」と涙を流して、俺にお礼をしてくれた。俺も「ありがとう。マイアミーゴ!今まで楽しかったぜ!!」と言って、サマイアと抱き合った。あの人達も「最終セクションクリア…フィニッシュ…ありがとう…有紗…王者取れたよ…今年の年間王者になったんだよ…」と言うと「ありがとうございました…アサミさん…遂に年間王者取れましたね…今年の…思い返すと…とんでもなく…長かったですわ…」と涙を流していた。そして、インタビューでもアサミさんは、涙ながらに「本当に今シーズンは…長く…長く…感じました…すいません…最後くらいは、笑って終わろうなんて、レース前に有紗さんと話していたのですが、どうも今は、それより、何か大きい感情が前に出てしまってるみたいです。でも王者を獲得する事が出来て今は、感無量です。」と答えていた。俺も、「最後まで俺は、正々堂々とあの人達と戦えて良かったです。改めて、ありがとう。そして、王者獲得おめでとうとお礼を言いたいです。本当に今シーズン応援ありがとうございました。」と答えた。パルクフェルメからサービスパークに移動する際、何と全ドライバーで2人をエスコートして、各々のチームへと帰還するというサプライズまでやったりした。そあの後2人は、俺を呼んで「輝さん、貴方にこれを授けますわ。」と言って、ある物を手渡してきた。「これは?」と俺が言うと、私たち2人がいつも身に着けてた「お手製の必勝祈願の御守り。」と有紗さんが出て来て教えてくれた。それを1つは輝くんに、もう1つはこれから組むコ・ドライバーに、渡してちょうだい。と言われて、御守りをもらったりした。俺は、有紗さんのアイコンでもある、「梅の花」をヘルメットに採り入れたりしてるのは、そこに由来がある。美海のヘルメットにも実は、アサミさんのアイコン「雪の結晶」を採り入れたりしてるのも、そこに由来があるとか。そして「必勝祈願の御守り」は、俺のマシンのみ着けられてる「限定物」である。
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