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第3章 その先に見えた「星」
Round4 奈落の底には要注意!!(ツール・ド・コルス)
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前回のメキシコから、舞台をフランスに移して迎えた第4戦ラリー・ツール・ド・コルス。毎年の事ながら俺は、このラリーとラリーGBが好きでは無い。いつもWRC日本人勢は、必ず皆で集まって雑談するのが「日課」なのだけど、俺は必ず「ツール・ド・コルスとラリーGBは、嫌な思い出しか無いからなぁ~嫌いなんだよ。そうそう、今回のラリーは、ガードレール絶対覗いちゃダメよ。後々地獄を見る羽目になるから。言い換えると、奈落の底を見てる気分になるよ。」と話題に出す程だった。セッティング自体は、昨年の物をキャリーオーバーする為、苦労する事は無いけど、やっぱり生きた心地がしないのと「俺達ラリーストって、やっぱり気が狂ってる連中しか居ないんだな。」と思うのがこのラリーだ。例えば、マン島かツール・ド・コルスどっち走りたいと聞かれたとしよう。俺は真っ先に「マン島」と答える人だ。それくらいこのラリーは、苦手で恐怖心が倍になる。ターマックラリーとは言えど、怖いものは怖い。レッキ後にも、体の震えが止まらなくなりかけて、美海が「大丈夫、大丈夫。私だって怖いよ。あんな奈落の底を見るのは。けど、不思議と怖くないんだ。隣に輝くんがいてくれるおかげでね。それは、輝くんも一緒だと思うよ。」と手を握りながら話してくれたおかげで、少しは楽になった。初日は、親父からのアドバイスを思い出して、とにかく道幅目一杯使って果敢に攻めた。初日をトップで終えた時に、何故か自然と「恐怖心」というものが消えていた。2日目は、初日の勢いそのままにさらにペースアップ。ガードレールとマシンの隙間には「名刺が入ってくれればありがたい」と思う程のスペースしか残していなかった。マシンが通過した風圧で落ち葉は吹っ飛び、木々は揺れた。メット越しに見える景色は、まさに「地獄」そのものだったが、何故か「天国」にも感じていた。そして、初日よりも速いタイムでトップのまま2日目は終了。メカさん達がマシンを整備してる合間に、俺はオンボード映像を見返してると、一つだけ引っかかる点があった。何故か挙動がブレたというのか乱れたというのか、よく分からない挙動をしていた。ルイスも「何か気になる点でもあったのか?」と一緒になってオンボード映像を見返していた。その時にルイスが「リアの接地感が一瞬だけ抜けたな。落ち葉のエリアに膨らんだろ?」と聞いてきて「あぁ。俺はインを攻めてるつもりが、何故かあのエリアに膨らんでたんだ。その時にズルッ!てなってな。そうだ。カッレの映像も見せてくれ!何か俺と違いがあるのかもしれない。」とチームメイトのカッレ君の映像を見ると「やっぱりな。あの時のライン取りをどうも見誤ってたし誤算してた。サンキュー!明日の参考になったよ!」と言って映像を見終えた。こうして迎えた最終日。セッティングをなんとカッレ君のに変更して走る事にした。そしてスタート地点に向かい、タイマーが予定時刻になった瞬間に勢い良くスタート。昨日よりも更にタイヤの持ちとペースが良くなった。そのまま俺は、フルスロットルでフィニッシュエリアを突っ切ってトップでゴール。2位に後輩ズが入った。3位にはヒョンデの榊君が初表彰台を獲得という結果になった。
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