FIA World Rally Championship Crazy Road

文字の大きさ
37 / 64
第3章 その先に見えた「星」

Round4 奈落の底には要注意!!(ツール・ド・コルス)

しおりを挟む
前回のメキシコから、舞台をフランスに移して迎えた第4戦ラリー・ツール・ド・コルス。毎年の事ながら俺は、このラリーとラリーGBが好きでは無い。いつもWRC日本人勢は、必ず皆で集まって雑談するのが「日課」なのだけど、俺は必ず「ツール・ド・コルスとラリーGBは、嫌な思い出しか無いからなぁ~嫌いなんだよ。そうそう、今回のラリーは、ガードレール絶対覗いちゃダメよ。後々地獄を見る羽目になるから。言い換えると、奈落の底を見てる気分になるよ。」と話題に出す程だった。セッティング自体は、昨年の物をキャリーオーバーする為、苦労する事は無いけど、やっぱり生きた心地がしないのと「俺達ラリーストって、やっぱり気が狂ってる連中しか居ないんだな。」と思うのがこのラリーだ。例えば、マン島かツール・ド・コルスどっち走りたいと聞かれたとしよう。俺は真っ先に「マン島」と答える人だ。それくらいこのラリーは、苦手で恐怖心が倍になる。ターマックラリーとは言えど、怖いものは怖い。レッキ後にも、体の震えが止まらなくなりかけて、美海が「大丈夫、大丈夫。私だって怖いよ。あんな奈落の底を見るのは。けど、不思議と怖くないんだ。隣に輝くんがいてくれるおかげでね。それは、輝くんも一緒だと思うよ。」と手を握りながら話してくれたおかげで、少しは楽になった。初日は、親父からのアドバイスを思い出して、とにかく道幅目一杯使って果敢に攻めた。初日をトップで終えた時に、何故か自然と「恐怖心」というものが消えていた。2日目は、初日の勢いそのままにさらにペースアップ。ガードレールとマシンの隙間には「名刺が入ってくれればありがたい」と思う程のスペースしか残していなかった。マシンが通過した風圧で落ち葉は吹っ飛び、木々は揺れた。メット越しに見える景色は、まさに「地獄」そのものだったが、何故か「天国」にも感じていた。そして、初日よりも速いタイムでトップのまま2日目は終了。メカさん達がマシンを整備してる合間に、俺はオンボード映像を見返してると、一つだけ引っかかる点があった。何故か挙動がブレたというのか乱れたというのか、よく分からない挙動をしていた。ルイスも「何か気になる点でもあったのか?」と一緒になってオンボード映像を見返していた。その時にルイスが「リアの接地感が一瞬だけ抜けたな。落ち葉のエリアに膨らんだろ?」と聞いてきて「あぁ。俺はインを攻めてるつもりが、何故かあのエリアに膨らんでたんだ。その時にズルッ!てなってな。そうだ。カッレの映像も見せてくれ!何か俺と違いがあるのかもしれない。」とチームメイトのカッレ君の映像を見ると「やっぱりな。あの時のライン取りをどうも見誤ってたし誤算してた。サンキュー!明日の参考になったよ!」と言って映像を見終えた。こうして迎えた最終日。セッティングをなんとカッレ君のに変更して走る事にした。そしてスタート地点に向かい、タイマーが予定時刻になった瞬間に勢い良くスタート。昨日よりも更にタイヤの持ちとペースが良くなった。そのまま俺は、フルスロットルでフィニッシュエリアを突っ切ってトップでゴール。2位に後輩ズが入った。3位にはヒョンデの榊君が初表彰台を獲得という結果になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...