FIA World Rally Championship Crazy Road

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第3章 その先に見えた「星」

Round9~12王者へのロングジャンプ(フィンランド~カタルーニャ)

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前回のサルディニアから、北欧のフィンランドへと移して迎えた第9戦。実は来季から、この最高峰クラスの車両規定を変更する事がここで発表された。だけどいきなりでは無くて、全メーカー全チーム同意の元での変更になった。その名も「WRカーEvo」と呼ばれる現行WRカーと旧規定をベースに4WDでは無いマシンにも4WD化を認めた規定である。実はTGRもそれを見越して、86(見た目の良さでKoukiでは無くて、前期型)をベースに新たなWRカーを製作しており、最終戦ラリージャパンでの「先行エントリー」を表明している。5ドアハッチバックから2ドアクーペになったので、空力的にもかなり有利になっている。今回はそのデータ収集も兼ねてのラリーになった。エンジン系は、従来通りの1.6リッター4気筒直噴ターボエンジンでV型とロータリー以外の形式(直列エンジンと水平対向エンジン)ならokということになっている。俺のマシンには来季導入予定の「テストパーツ」が多数組み込まれていた。初日は、様子見で走りつつもトップスピードの205.2Km/hを記録するなどの快調ぶりを見せた。2日目と最終日は、トップタイムを連発して久しぶりの勝利を掴み取った。

第10戦ラリードイッチュランドは、何と俺が一瞬のミスを犯してしまい、ヒンケルシュタインにマシンをヒットさせてからのクラッシュでデイリタイア。何とか完走出来たものの歯切れが悪過ぎたり、何か胸焼け気味で嫌なラリーになった。

第11戦ラリーターキーは、前回の悔しさをぶつける走りを披露して、TGRの独壇場になった。特に言うならば、2号車のミルキーが覚醒して他を寄せ付けない速さを見せてくれた事。あれには驚いた。俺も追いつこうと必死だったが、あと一歩及ばず2位でフィニッシュ。でも走っててすごく楽しかったラリーでもあった。

第12戦ウェールズ・ラリーGBは、誠真へ捧げるラリーと称して「トリビュートカラー」を纏ってのエントリープラス「ワークスノミネートは最大2台まで」という事で俺と2号車のミルキーのみワークスノミネートを行い、3号車ソレイユと4号車セレーネは、ネクストジェネレーションからのエントリーでTGR勢は上手いこと「帳尻合わせ」を行って挑む事になった。俺もヘルメットを限定デザインにして走ることを決めた。マシンには「Racing for Seima Rally for Seima」というデカールも追加されており、俺に関しては誠真と俺のメットがあしらわれたデザインになってるとか。ラリー前には皆して黙祷を捧げた後に、ブラッドレーにも「今日、いや、最終日にポディウムで会おう!だから絶対リタイアすんなよ!」と言うと「当たり前だ!カイトもいる!ヒカルも居る!ミウもキラナもエレナも皆いる!だから絶対ポディウムで会おうぜ!」と握手を交わしたりもした。俺はマシンに乗り込むと、美海ちゃんに「今回だけは…絶対勝とう。でないと俺、あいつに合わせる顔無くなっちゃうから。」と呟いたりもした。ラリーは初日からデッドヒート状態。トップ3を日本人ドライバーが占める程の速さを見せた。しかも超僅差で。最終日は、昨年あいつが走り切るはずだったステージが組み込まれていたので、形見のグローブをはめて走る事にした。美海ちゃんのスタート合図は、勝利への「ビクトリーロード」に向かう「片道切符」でもあった。昨年、あいつが旅立ったセクションをトップスピードでクリアして、最終セクションもリズミカルにクリア。そして「最終セクションクリア!フィニッシュ!」という声がインカム越しに聞こえた瞬間、「やったぁぁぁぁぁ!!やったぁぁぁぁぁ!!俺勝ったんだ!見てるか!誠真!あの日の約束、果たしたぞ!!フィニッシュライン通過したらまた会おうって約束を!」と大粒の涙を流しながら叫んでいた。2位にはヒョンデの海斗君&ブラッドレーコンビ。3位には星奈とカルデロンコンビが入り、日本人ドライバー123を達成したのと同時に、昨年誠真が登るはずだった「1位」の所には彼のヘルメットが置かれていた。俺はそれとスナップショットを天高く掲げて天国にいる誠真へと勝ったことを報告した。こうしてヤリスWRCラストラリーになったラリーGB。次戦は、伊豆での最後の開催となる最終戦ラリージャパン。ここでニューマシンであるトヨタ86WRCがデビューする事になる。
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