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第4章 超短期決戦
番外編 ル・マン24時間レースへ初挑戦
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前回のラリーメキシコで、豊田章男社長からのとんでもないオファーを即決快諾してしまった俺と美海ちゃんは、WECの車両を手がけていたりするTMGmbh(トヨタ・モータースポーツ有限会社、現TGR-E)へ向かい、TS050のシムトレーニングや、シート合わせ、ステアリングレクチャー等をしていた。今回の為に用意したヘルメット、Arai GP7には、普段のヘルメットデザインを纏わせている。ただWECのワークスチームにはプリキュアレーシングプロジェクトは関与してない為、大々的な事は出来ないけど、スーツのデザインにも実はキュアグレースをイメージしたデザインが盛り込まれている。噂だと2017年大会以来の3台目をスタンバイしてるらしく、当初からそれに乗せることを前提で動いてたという話まである。シート合わせ等を色々済ませてから、ル・マンの開催地であるサルト・サーキットに向かった。俺が子供の頃から憧れて、ゲームでしか走った事ないこのコース。初めてこの目で見た時に、その広さに驚愕していたのと、歴史を感じる事が出来た。初日は、ル・マン・ルーキーオリエンテーションから始まり、俺と美海ちゃんは難なく突破。急遽ヒョンデからカムバック命令を受けてトヨタに「緊急復帰」したカッレ君も難なく突破。現役若手ラリースト3人がル・マンに出るとどうなるかもTGRは検証したかったらしい。実は美海ちゃんもドライバーからコドラへ転身した身であるので、運転スキルは一級品。2日目のフリー走行もトップタイムを記録。3日目もレギュラー組のすぐ後ろと、速さを披露した。予選は、LMP1クラスでも稀に見る大接戦だった。ポールこそレギュラー勢の7号車が獲得したものの、俺らはコンマ数秒差の2番手を獲得した。そして決勝。遂に24時間の過酷なレースが開幕した。レースは序盤から荒れ模様。至る所でクラッシュ多発。そんな中、スタート担当の俺は、ラリーで培ったノウハウを活かして何事も無かった様に回避した。気付けばトップ7号車をユノディエールでピッタリ捉えていた。ドラフティングを使って前に出ると、レースリーダーに君臨した。本来ル・マンのサードカーは、「バックアップ及びデコイ役」を任されるのだけど、何故かそんなのお構い無し状態。要約すれば「勝てばいい。勝てば。」という事だった。レースも前半6時間を終えて、俺は美海ちゃんにドライバーのバトンを渡した。美海ちゃんも初参戦ながら堅実な走りでレースをリードしている。続くカッレ君もレギュラー勢を凌ぐ速さを見せていた。ル・マンも夜に入り、ここからが「本番」とも言えるレースになった。気温が一気に下がるので、マシンパワーが格段に上がる。まるで「魔法」にかかったように。しかもラリースト3人がル・マンという事は、ナイターもザラにある世界ラリー選手権を走ってるので特に問題は無かった。トップは依然俺ら9号車。WEC史上最年少トリオでもある。過酷な夜を無事に走り切り、レースも終盤に入った。カッレ君がかなり良いペースでリードしてくれたので、あとは俺が最後を走るのみになった。カッレ君がピットインをして、俺にバトンパス。俺は、コースへ復帰して最後の3時間を走り抜けた。そして、ゴールラインを通過して、あの「栄光のチェッカー」を受けた。総合優勝は俺ら9号車のトヨタTS050ハイブリッド。この瞬間に、ル・マン史上及び世界初となる女性ル・マンオーバーオールウィナーが誕生した。俺らトリオはル・マン最年少総合優勝及び初参戦初優勝という記録ずくめの勝利を達成する事が出来た。
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