しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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勃ってしまったものは仕方ない。ので、抜いた。
夢の内容を早く忘れたかったはずなのに、結局あの続きを想像しながら抜いてしまった。
高橋理人に合わせる顔がない。
恥ずかしい!と思う程度の倫理観はまだおれにもあるようだ。
そして、その後高橋理人の作ってくれた料理を冷蔵庫から取り出して食べる。
うまい。冷えてもうまい煮物って、なんだこれ。
おれの世界があいつ中心にまわり始めてる。なんだかこんな状況、ついひと月前までは考えられなかった。ついていけない。

「吐きそうだ……。」

体調が万全じゃない、座って電車に乗れる時間に家を出よう。と決めて、いつもより少し早く家を出たにもかかわらず、結局今日もどこかの誰かさんのせいで止まった電車の遅延に巻き込まれてしまった。
やっと動きだした電車はギュウギュウ詰めで結局半分くらい自分の足で立っているのか、周りに挟まれて居るから縦になっているのか分からない状態で学校の最寄り駅まで着く。悲惨だ。
授業にはギリギリ間に合う。けど、余裕が全くない。早足で校門を目指す。
うちの学校はいわゆるマンモス校で、生徒も多ければ学校の敷地も広い。小走りになる。
職員室の隣の講師室について、荷物を取り、美術室へ。廊下は走らない。
無事チャイムがなる前に美術室に到着した。生徒は揃っているようだ。
その中には高橋理人もいた。そうだった、心の準備が出来ていないけれど、高橋理人のいるクラスの授業だった!
なるべく高橋理人に視線を向けないように授業を進める。都合のいいことに美術というのは生徒の顔ではなく生徒の描くものをみれば良いので助かった。
高橋理人の描く絵はなんと表現したらいいのか、個性的だ。
いま、授業では静物画を描いているはずなのに、なんという躍動感溢れる、……なんだこれ。
え、ほんとうにモチーフ見て描いてるか?
真面目なのか?
私語もなく、顔つきも真面目だ。
きっと真面目に描いているんだろう。
ちらりと置いてある教科書が目に入る。とても綺麗な字で【二年 高橋理人】と書いてあった。

なんで書道を選択しなかったんだこいつ。
あえて険しい道を行くのが趣味なのか?
わからない。

授業が終わると昼食の時間だった。
おれはいつものように、講師室ではなく美術講師準備室という備品置き場のようなスペースで昼飯を食べる。
といっても、朝の高橋理人の手料理が美味しくて食べすぎたせいであまり空腹を感じておらず、一応買ったおにぎりを机の上に置いてスマホを弄っていた。
2台目のスマホに来る裏の仕事のメッセージは全て断っている。これでも売れっ子だったんだぞ。NGなしで売ってるやつなんて、そんなに居ないんだから。

その時ノックの音がして、扉の向こうから高橋理人の声が聞こえてきた。
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