しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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「ふぅ。風が気持ちいいな。」

光太の顔色は良くなっていた。人混み連れ回しすぎちゃったかな。

「はぁ、気持ちいね。あとお腹減った。」

うそだろ、あのクレープ食べたから全然減ってないんだけど。と光太は心の底から驚いていた。

「今日は、その、……楽しかった。」

と言ってから辺りを見渡す光太。
なにかと思ったら、突然キスされた。

「……!」

「……はぁ、ん、嫌だった……?」

うつむき加減で上目遣い、ズルすぎ。

「嫌なわけないじゃん。」

頭を掴んで深く口付ける。

「んっ、ん、はっ……、んっく……。」

繋いだ手に力が入る。息ができない、の合図だろう。
最後に下唇を軽く噛んで口を離した。
トロンとした顔の光太。

「お前のキスは、息継ぎがない……。」

鼻で息をすればいいのに、それに気づかない光太がたいそう可愛いのでしばらくそっとしておこう。

そのあとしばらく公園を散歩した。春バラが少しだけ残っていて綺麗だった。
日が陰ってきたので帰ることにした。

家に着くまで電車で30分程度だが、光太は疲れてしまったのか眠ってしまった。
サラリと前髪が頬をなぜている。
俺の肩で寝息を立てる光太が可愛くて永遠に電車に乗っていたかった。が、乗り換え。眠い目を擦りつつ繋いだ手に引っ張られるように着いてくる光太。これ、知らないところに連れてっても到着するまで気づかないだろうな……、なんて悪いことを考えてしまう。
ちゃんとお家に連れて帰ってあげるから、安心してうつらうつらしてて良いからね。

最寄り駅に着くとスーパーに寄る。眠そうな先生はスーパーの脇にあるベンチに置いてきた。
夕飯の材料だけ急いで買う。
今日は塩鮭の切り身が安かったので塩鮭と大根おろしとワカメのポン酢和え、あと味噌汁と……。
2人分だから少しずつ切り分けた物を買う。
ずっと一緒に暮らせればな……。なんて思う。
会計を済ましてエコバッグにつめる。

ベンチに戻ろうとして荷物が手元から滑り落ちた。
光太がうずくまっていた。
慌てて駆け寄ると過呼吸をおこしているようだった。

「光太!光太!ゆっくり息吐いて……!いい?数えるよ、10数えるからその間息を吐き続けるの、いい?いち、に、さん……。」

なかなか上手くいかなくて大きな瞳からボタボタと泪がこぼれて落ちてゆく。
何度も繰り返し10まで数える。
少しずつ息が整ってきた。
よしよし、と頭を抱えて撫でてやる。ポケットからハンカチを出して顔を拭く。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

「何があったの?」

聞いても首を振るだけだった。
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