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プロローグ
しおりを挟む梵side
雷を落とされる…とはこの事かと思った。
巫山戯たことを抜かしたかと思い笑って顔を見ようと視線をあげれば今まで見たことない程に真剣な眼差し。
いやいやちょっと待って。
アイドルは確かにインパクトを残す方が売れやすい傾向にあるだろう。
でもこのジジイが抜かしたのは、
「お前たちは真剣交際BLアイドルユニットだ」
「言っている事が良く理解出来ないな…それはつまり、真剣交際BLアイドルユニットというユニット名へ改名するという事か?」
「秋ちゃん、悪くないジョークだけど絶対に巫山戯る場面じゃないことは分かるかな?」
「そうなのか?俺はふざけてる訳じゃないが…」
「君たちは事務所でずば抜けて顔が整っている。だからもっと上を目指せる!だからBL要素を入れた方がいいんじゃ!」
本気で何言ってるの……
ドッキリ企画かと思ってしまう程馬鹿げた話で呆れてものも言えない。隣で棒立ちしている秋ちゃんをチラッと盗み見したが表情が全く変わらない。
朱里君とホシミンまではどんな顔して聞いてるか見えなかったけど…
未だ天然発動で事に脳が追いついていないのかも。ここは歳上のお兄さんである僕がハッキリと言わなければ…!!
「あの!そんな事する意味が分か…!!」
「それは、どの様な設定でやっていくんだね?」
「別にオレはいいけど…オレの意見なんて必要ないですよね…」
「面白いと思います
新しい道を切り開くのは良いことだ」
「………え?」
そして、この瞬間に僕のアイドル人生は詰んだ。
もはやアイドルでも何でもない、ただのギャグじゃないか。まさかの三人の発言に唖然として意識が正常に戻った頃には四人×二つの目が僕に集中してた。
「いやいや!何でそんなにすんなりと真に受けるの!?これって僕が正常な反応だよね??」
「翼、よく考えろ。
朱里達は四人組だ…BLとしてやって行くにはペアを組むという事だろう?」
「そ、それがどうかしたの…?」
「ふっ、即ち、朱里は愛しの秋吾と…嗚呼、この瞬間を待ち望んでいた。秋吾…やっと朱里だけの者に…!」
「おい、まだ誰と組むかは決まってないんだろ?」
「は?そうなのですか?社長、朱里と秋吾に決まってますよね!?」
朱里君は秋ちゃんに腕を絡ませ社長に向かい放った。朱里君の隣でオドオドしているホシミンと放心状態の僕を置いてどうして二人はこの話に乗り気なんだ!?
「もう決まっている。
梵くんと秋吾くん、そして朱里くんとホシミくんだよ。バランスがバッチリだ!」
社長のその発言を聞いた途端、この世の終わりかの様な顔をした後、朱里君は持ち運んでいる小型ナイフ(何故?)を持った手で社長へ突っ込んで行った。
それを必死に止める僕とホシミン。そして「なるほど、バランスがいいのか」と真剣に考えている秋ちゃんというカオス状態。
元々、朱里君は秋ちゃんに懐いてた節はあったから今回の配偶が許せなかったのかもしれない…
この争いは1時間以上続いたが、朱里君も体力を使ったのか落ち着いた。
しかし未だ左手に握りしめた小型ナイフは健全。
「スタッフ諸々話し合った結果じゃ。
では頼んだよ」
「ちょっと社長…!!」
僕の言葉を無視し、そそくさとマグカップを持って出て行ってしまった。残された僕達も社長室を出て更衣室へ向かった。
今日は元々仕事なんて入ってなかったから、今から四人で居酒屋へ行って討論会だ。
駅近くの居酒屋へ着いて、個室だから気にせず話し合える。ピリピリしている朱里君だけどいつもの用にマッハのスピードで秋ちゃんの隣を確保した。
「ねぇ、本当にこんな馬鹿げた話に乗っちゃうわけ?」
「でも、何だかんだ今までいい方向に進めたし…社長の仰せのままに動いてみてもいいんじゃないかな?」
「何故朱里と秋吾では無い…何故ミジンコなんかが…許せない…!!」
「杠、お前とBLが出来なくて済まない。
ただ、青葉木とも仲がいいんだろ?問題ないんじゃねぇか?」
「朱里は…!朱里は秋吾に恋焦がれ日本に帰国し、運命は二人を結んだのです。朱里は秋吾となら本気で…」
「朱里さん…も、もう決まった事だからグチグチ言っても無駄なんじゃないかな…」
「黙ってください。たとえ仕事上は貴様とBLを演じるのかもしれないが、プライベートでは秋吾の朱里です。…嗚呼、秋吾…今日も麗しい」
濃いワイン色の髪を肩まで伸ばした中性的な朱里くん。ガッチリした体格の秋吾くんと並んだ時は一瞬男女間の仲を持つ二人に見えたりする。
しかし、本来は威圧的な高飛車なお嬢様の様な子だから秋吾くんが疲れてるのも本当。
(朱里くんのアピを毎分対応する秋吾くんって忍耐力凄いよね…)
「こ、この状況どうしたらいいのかオレには分からない…けど、取り敢えず飲み物…を」
「あ、そうだね。ありがとう!
二人は…今は僕たちが踏み込めない異空間に居るから先に頼んじゃおうか?」
「翼さんは何飲む?」
「僕は車出すから…ノンアルサワーかな
あ!気を使って合わせなくていいからね?自分が好きな物飲むのが一番だからね!」
「えっと…じゃあ、オレはメロンソーダがいいな」
僕たちは各々飲み物を注文した。
ついでに適当につまみや軽食を頼み、異空間の二人にメニューを回して、ホシミンがハマっているというモンスター育成ゲームが映る画面に目を向ける。
画面には桃色の丸っこいフォルムが可愛いモンスターが表示されていた。
「最近話題のゲームだよね
ホシミン、結構ハマってるね」
「うん…日頃の悩みを薄めてくれる程可愛いんだ…実家で飼ってたウーパールーパーに似てて…」
「確かに似てるかも!
ホシミンに飼われたこの子は幸せな日を送れそうだね。流石は動物愛好家!」
「翼さんもやってみれば…?癒されるよ」
「へー、ホシミンのオススメならやってみようかな?じゃあ僕は…ホシミンと同じ髪色のモンスターにしようかな」
僕がそう言うと僕の顔を見て驚いたような顔を浮かべた。どうしてか分からなくて、僕もその瞳を見つめ返した。
すると、いつものオドオドした様子とは相まって素早く画面と僕を交互に見始めた。
そして、(閃いた!)とでも言う様に目を輝かせた。
「ど、どうしたの?」
「に…似てる…!!
オレのこのペット…翼さんに似てるんだ…!
ずっと誰かの面影があるなって思ってたんだ…翼さんだったんだ…」
ひとりで興奮しているホシミンがなんだか面白くて声をかけようとした時、向かい側に座っていた二人に阻止された。
「ホシミ!未だ朱里と愛しの秋吾の飲み物が届いてません!朱里の先を越すなど失礼極まりないです!カシスオレンジと…秋吾は何にします?」
「俺は烏龍茶で頼む
朱里、今から飯が運ばれてくる。一旦離れてくれ」
「ちょっと待って!ホシミンに全部頼らないで、朱里くんはこれからホシミンとペアなんだよー?」
「朱里に命令しないで下さい!
ホシミ、いいですか。貴様と朱里はビジネスです。朱里は一生秋吾と相思相愛なんですから」
「ご、ごめんなさい…邪魔はしないよ…」
「杠、ホシミに強く当たるのは辞めろ、俺たちは仲間なんだ。ホシミ、食いたいの頼めよ」
優しく微笑む秋ちゃんは男の僕から見ても男らしくてカッコイイと思った。そして、僕のその感情を何百倍と上回る朱里くんは秋ちゃん顔面を白く細い指で勢いよく隠した。
「い、今の顔は朱里だけに…!!」
「もー!イチャイチャはそこまで!
僕とホシミンも居るってこと、忘れてるの?」
「眼中に無いだけです
今の秋吾…破壊力100…嗚呼美しい…」
「……オレ、上手くやって行ける自信ない…」
「安心して。僕もだから」
ここまで秋吾強火担なら、いっその事朱里くんと秋ちゃんでペアを組んだ方が僕たちの為にもありがたい…秋ちゃんに難がある訳じゃなくて朱里くんが最大の壁すぎる。
秋ちゃん比較的仲良しな僕に対して「ミジンコ」と読んでくる態度も今考えたらどうかと思う。
最年長の余裕で笑い返してるけど、流石はわがままお嬢様。
「ほら、全員分の飲み物も来た
今日は好き放題呑んで帰るぞ」
「そうだね…明日もオフだからね」
「秋吾がそう言うなら…」
「そうそう!僕たちはこれからもっと仲良くなって行かなきゃいけないんだからさ!ほら、乾杯!乾杯!」
テーブルの真ん中でグラスを乾杯し、僕たちは昼の13時から夜の19時まで呑み倒した。
泥酔した三人を送迎した僕だけど、三人はこの事も覚えてないんだろうね。
BLユニット……やって行けるのかな?
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