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第一章
9 ふぁーすとこんたくと?
しおりを挟むそして現在私は机へ突っ伏している。
うん、普通に人生ってそんなに甘いものではない。
わかってはいた。
いやわかっている心算だったと言うべきなのだろうか。
色々本を読み漁れば漁る程、私は本当に無力なのだと思い知らされる。
現状何事も中途半端で発展途上な9歳の子供でしかない。
時間は無限でなく有限。
なのにバッドエンドへの執行まで長く見積もっても僅か三ヶ月しか猶予はない。
その三ヶ月で一体何をどうすれば人生が変わる?
また私を過去へと戻し、やり直させる人生の意味とは何なの。
抑々時間が戻った事さえもウロな上に、それ自体に意味があるのかさえ……不明だわ。
昨日の今日だからまだ焦るなと、何度も心の中で自分へ言い聞かせてはいる。
まだ一日。
たった一日しか経ってはいない。
もっと明るくポジティブに考えよう。
そう時間は始まったばかりだと思っていたのに何故なのだろう。
なのに時に人生とは思いっ切り酷く残酷なものだと、私は今引き攣った笑みのまま優雅にカーテシーをする。
何故逢う筈のない貴方が今ここに居るのですか⁉
どうして今まで、そう一度たりとも私へ微笑みかけた事等絶対なかったのにっ、何故今私へっ、胸が苦しくなってしまう程に優しく微笑んで下さるの!!
何故?
どうして⁉
その二つの言葉が私の頭と心の中をぎゅうぎゅうに支配してしまう。
気を抜けばぽろっと涙が零れてしまいそうになる……ってあれ?
何かがおか……しい。
今私の心の中で二つの感情が存在する?
その元凶とも言える御方が今目の前に立っている。
アルフォンスお兄様が客として招いた相手シュターデン公爵ジークヴァルト様だって事!!
確かアルお兄様とジークヴァルト様は同い年で同じ王都にある学院の卒業生である事は記憶の中にある。
ただ友人と言う認識はない。
とは言えこれは16歳のエルネスティーネの記憶、それとも……昨日目覚めてからずっと感じる違和感。
私の知っている未来は16歳のエルネスティーネが死ぬまでのたった二日だけ。
過去についての記憶も朧気だけども、直接的な記憶は不確かだけれど私に関わる人達との記憶はあるわ。
然も未来よりも過去の方がしっくりとくる。
何かが、理由はわからない何かに私は……。
「エルどうしたの?」
「……あ、だ、何も、だ、大丈夫でしてよアルお兄様」
心配そうに私を見つめるのは同じ菫色の瞳を持つアルフォンスお兄様。
いけない。
考えるのは後にしよう。
アルお兄様は剣よりも寧ろペンを愛する文官として、今は第一王子でありもう直ぐ王太子へと立太子なされるクリスお兄様の側近の一人として毎日忙しく働いておられる。
一方噂によればジークヴァルト様は名門シュターデン公爵家の若き当主であり、ペンよりも剣を握る事を選ばれた脳筋?
いやいや文武両道的な?
お兄様もだけれどお二人揃って顔よし、権力ありからのお金持ちってスペック高過ぎでしょ。
ジークヴァルト様に至っては騎士として県の腕前も相当あるのよね。
文官のアルお兄様とジークヴァルト様の接点って果たして今まであったのかしら。
お兄様ってばお父様の朝練でさえも付き合わないくらい剣が大の苦手なのにね。
「エル、こちらは僕の親友でジークだよ。学院時代はよく試験で順位を競い合っていたライバル関係だったのだけれどね。卒業してからはほら、勤め先が二人共王宮だろう。部署は違えどもお護りする相手は同じだから色々と仲良くなったのだよ」
ほぉそうですか。
それはそれは私は一向に存じ上げませんでしたよアル兄様。
とは言え記憶がウロなのだから仕方がないか。
「こんにちは愛しき天使よ。私はジークヴァルト・アロイス・ラッツェルと申します」
はい?
今なんか物騒なお言葉が?
いえいえあの氷の様に冷たくも素っ気なかった御方の口より、まさかの愛しき天使って私の耳は記憶同様本当に可笑しくなってしまったの⁉
そして今、昨日の朝までは絶対にあり得なかっただろう出来事が私の身へと起こっている!?
そうあの大きくもご立派なお身体を小さな私の視線に合わすべく床へ跪けばよ。
ジークヴァルト様はゆっくりとお身体を屈め、私の様なお子様の手へ淑女と同じ様にキスを落とすお心算なのだろうかそれとも――――。
その視覚的に見えているのは、ジークヴァルト様のものよりも遥かに小さ過ぎる私の手をぎゅっと握り締められたまま何故なのか決して離そうとはせず、だからと言ってキスを落とす訳でもない。
なのに私の手より20㎝程の所へ身体を前傾へ傾けられたままのジークヴァルト様のお顔があると言うちょっとした……いやいや今までの経験上私にしてみればこれはかなりな混沌。
ジークヴァルト様はそのまま微動だにされず、はっきり言って理由は不明だけれども何やら固まっておられるご様子。
うーん、本当に皆目見当つかないのだけれど……。
でもそこに助け舟は当然ある訳で。
「ねぇジーク僕の大切な天使に何時まで、そして何をしているのかな?」
それはもう清々しい程の魔王様宜しくと言った具合の真っ黒なオーラを纏ったアルお兄様の壮絶な凍れんばかりのお色気むんむんなる笑みを湛えたまま、私の腕を握り締めたままのジークヴァルト様の大きな腕と手ををがっちりとホールドされておりました。
可笑しい、こんなシーンなんて前回はなかったのに……?
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