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prologue

闇の中で……

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 そこはあらゆる意味で暗い闇の世界。
 またこの場所に等と言った言葉いや、抑々ここに棲む彼らの世界にそんなものは存在していない。
 当然言葉の意味はおろか、それらを知る機会もなければ気づかず胸の内に抱く事すらも許されてはいない。
 

 物理的な環境で言えばここは簡素な石造りの、決して広くはない部屋に扉が一つだけでそこに窓は存在しない。
 机や椅子と言った一般家庭にある様な家具はなく、あるのは床にランプが一つ。
 だからこの場所は全くの暗闇という訳ではない。
 ここに棲む者達にしてみれば与えられたこの環境で暗闇の中息を潜めるよう、然も幼い頃より徹底的に育て?
 いや、調教により洗脳された者達のこの場所こそが心の拠り所とは決して言えない棲み処なのである。

 常に彼らは必要以上に神経を尖らせれば、それは仲間であったとしても誰一人としてお互いを信じる事さえ出来ない癖に、一声、そうたった一声だけである。
 彼らの主より命じられれば、命じられた内容により振り分けられただろう者達と寸分違わず息を合わせ確実に任務を遂行する。

 何度も言うが彼らは絶対にお互いを信用してはいないし仲間だとも思ってはいない。

 そこに棲む全ての者達はお互いを敵であると認定していると表現した方がしっくりくるのかもしれない。
 何故ならその証拠に命じられれば、何の感情や躊躇いもなく合図と共にお互いを殺し合う事だって平気で行えるのである。

 とは言え彼らはどうしてそんな事をする必要があるのだろうか?
 また上から命じられた事に一切の疑問すら抱かず、ただ命じられるままに、己が命さえ失いかねない激務すらも平然とこなす理由は……。
 

 ――――。


 今日今この瞬間を、明日やその先何てものはわからないし、抑々それを考える事は許されてはいない。
 ただ取り敢えずその日一日を生き抜く為だけに彼らは何の疑問も抱かず、命じられるまま任務を遂行する。


 何時からなのか?

 物心のつく頃?
 いや、恐らくその前からなのかもしれない。
 ある日突然この場所へ連れて来られた瞬間より、彼らはその日を生き抜く為だけに一心不乱で命じられた事を遂行するだけ……。

 命じられた事以外に考えたり疑問を僅かでも抱けば即命を絶たれてしまう。
 夢や希望も何もない、あるのは絶望と現実に、環境だけでなく己が心までも沁み込む様に存在する暗闇だけ……。

 ここはそういう場所。

 何も考えてはいけない。
 自由を求めてもいけない。
 何より少しの疑問を抱いてもいけいない。
 全ては上の命ずるまま。
 彼らは操り人形の如く主の命ずるままに働く事しか存在意義はない。



「ルガートの王太子ラファエルを亡き者にしてよ。だが簡単には殺さない様に。そうだね。あぁあいつにはとびきりの地獄を魅せてやってもいいな。万が一殺せなくとも奴を生き地獄へ堕とせるならばそれでもいいよ。僕の代でルガートはシャロンへ帰属させる心算だからね。その為にもラファエル、お前の存在は邪魔でしかないのだからね。お前には決して安らぎなんてものは与えない。僕がお前に与えるのはは地獄のみ。さぁ舞台の幕は上がった。可愛い僕の玩具達、存分にラファエルを甚振っておいで。ククッ、ククク……」

「ご命令しかと拝命致します我が君……」

 その場にいた者達は何も考えずただ静かに狂いじみた命令を淡々と受け入れ遂行したのである。
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