34 / 42
34
しおりを挟む
最初に目に入ったのは何物にも未だ染まってはいないだろう純白の、それも私の纏うドレスの生地はただの純白の絹地ではなく王族の身に許されし黄金に輝く純白のもの。
それは完全に黄金色――――と言う訳ではなくそこは元が純白の生地である事は間違いはありません。
ですがこの絹地は王家のみが保護する事を許される神の愛し子と呼ばれる御蚕様の繭によって作られし絹地。
光具合によって真っ白に輝く絹地は眩い黄金色へと光を放ち、見る者の心をくぎ付けとしてしまう不思議なモノなのです。
そうこれはその昔この世界を創造された神が愛する女神へと彼女の為に生み出せば、この御蚕様によって作られし繭で女神様の御衣装を作られたと言う逸話があるのです。
それ故に神の愛し子の御蚕様より作られしこの絹地は王族の、然も王家へ嫁ぐ女性にのみ纏う事が許されしもの。
この事実と言う現実に私が驚愕したのは言うまでもありません。
何故?
どうしてっっ。
つい先日……そう多分先程?
……確か私の記憶違いでなければつい今し方だった筈ですわ。
そう、殿下……貴女との婚約をなかったものとして欲しいと皆様の御前にてお願いをすれば私は……ええ、私はその足で屋敷へは戻らず、そうこの国で一番戒律の厳しい修道院へ、なのに何故?
『逃がさないよ俺のエリザベス。最初から逃がす筈がないだろう可愛い可愛い俺のリズ』
あぁ確かにそう、ええ私が立ち去ろうと思った時、でしたわ。
突然?
いいえ余りの急な出来事に私は抗う事も何も出来ないまま……。
何故なら何時も貴方はこの八年もの間それは一度たりとも変わる事なく。
決められた日に
決められた季節の花束を以って
決められた同じ言葉と微笑みだけの関係だったからこそ私は驚きの余り、貴方へ抗う事も出来ずにただそのまま受け入れてしまったのですもの。
生まれて初めて私の耳元で感じるのは貴方の吐息交じりに熱く囁く、今までに聞いた事のない甘い声。
そして貴方の男らしい大きな手で今までは私の手だけしか触れなかったものが、初めて私の口……いいえ顔を覆えば背に感じるのは大きな、きっと私の身体をすっぽりと包んでしまうだろう貴方の身体と燃えるようにも熱い体温。
一瞬ぎゅっと貴方へ抱き締められた感覚に私の心は泣き出したいくらいに悲しくも嬉しいと感じてしまいました。
心が震える――――と言う気持ちが少しだけですが理解出来たのだと思います。
でもそれだけ。
ええ、それだけなのです。
それ以降は何もわからず、そうして気づけば私は貴方の腕の中へと囚われ、輝くばかりに美しくそして蕩けるように幸せに満ちた貴方の隣に王家へ嫁ぐ女性にしか許されてはいない絹地で作られたウェディングドレスを纏っている私。
一体何時の間に私は数ヶ月……そうこの数ヶ月と言う時間をどう過ごしていたのでしょう。
わからない、全く皆目見当がつかないと言うよりも完全に理解不能なのです!!
何故婚約をなかったものとして欲しい相手と私は婚儀を挙げれば、今現在進行形で王宮のバルコニーなのでしょうね。
大勢の民達が見守る中で所謂ロイヤルキスなるモノを何度もされれば、その度に熱狂的な歓声を受け困惑しきった私と満面の笑みを湛えておられる貴方。
この先一体私に待ち受けているのは何なのでしょう。
出来れば全てをなかったものにしたいのですが……。
それは完全に黄金色――――と言う訳ではなくそこは元が純白の生地である事は間違いはありません。
ですがこの絹地は王家のみが保護する事を許される神の愛し子と呼ばれる御蚕様の繭によって作られし絹地。
光具合によって真っ白に輝く絹地は眩い黄金色へと光を放ち、見る者の心をくぎ付けとしてしまう不思議なモノなのです。
そうこれはその昔この世界を創造された神が愛する女神へと彼女の為に生み出せば、この御蚕様によって作られし繭で女神様の御衣装を作られたと言う逸話があるのです。
それ故に神の愛し子の御蚕様より作られしこの絹地は王族の、然も王家へ嫁ぐ女性にのみ纏う事が許されしもの。
この事実と言う現実に私が驚愕したのは言うまでもありません。
何故?
どうしてっっ。
つい先日……そう多分先程?
……確か私の記憶違いでなければつい今し方だった筈ですわ。
そう、殿下……貴女との婚約をなかったものとして欲しいと皆様の御前にてお願いをすれば私は……ええ、私はその足で屋敷へは戻らず、そうこの国で一番戒律の厳しい修道院へ、なのに何故?
『逃がさないよ俺のエリザベス。最初から逃がす筈がないだろう可愛い可愛い俺のリズ』
あぁ確かにそう、ええ私が立ち去ろうと思った時、でしたわ。
突然?
いいえ余りの急な出来事に私は抗う事も何も出来ないまま……。
何故なら何時も貴方はこの八年もの間それは一度たりとも変わる事なく。
決められた日に
決められた季節の花束を以って
決められた同じ言葉と微笑みだけの関係だったからこそ私は驚きの余り、貴方へ抗う事も出来ずにただそのまま受け入れてしまったのですもの。
生まれて初めて私の耳元で感じるのは貴方の吐息交じりに熱く囁く、今までに聞いた事のない甘い声。
そして貴方の男らしい大きな手で今までは私の手だけしか触れなかったものが、初めて私の口……いいえ顔を覆えば背に感じるのは大きな、きっと私の身体をすっぽりと包んでしまうだろう貴方の身体と燃えるようにも熱い体温。
一瞬ぎゅっと貴方へ抱き締められた感覚に私の心は泣き出したいくらいに悲しくも嬉しいと感じてしまいました。
心が震える――――と言う気持ちが少しだけですが理解出来たのだと思います。
でもそれだけ。
ええ、それだけなのです。
それ以降は何もわからず、そうして気づけば私は貴方の腕の中へと囚われ、輝くばかりに美しくそして蕩けるように幸せに満ちた貴方の隣に王家へ嫁ぐ女性にしか許されてはいない絹地で作られたウェディングドレスを纏っている私。
一体何時の間に私は数ヶ月……そうこの数ヶ月と言う時間をどう過ごしていたのでしょう。
わからない、全く皆目見当がつかないと言うよりも完全に理解不能なのです!!
何故婚約をなかったものとして欲しい相手と私は婚儀を挙げれば、今現在進行形で王宮のバルコニーなのでしょうね。
大勢の民達が見守る中で所謂ロイヤルキスなるモノを何度もされれば、その度に熱狂的な歓声を受け困惑しきった私と満面の笑みを湛えておられる貴方。
この先一体私に待ち受けているのは何なのでしょう。
出来れば全てをなかったものにしたいのですが……。
1
あなたにおすすめの小説
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる