35 / 42
35
しおりを挟むホールにて大々的な祝宴が催されました。
ええ間違いなくその主役は私と貴方。
貴方の瞳と同じ青いドレスを身に纏う私を少しも離す事なく、言えある意味これは一種の拘束――――なのでしょうか。
叶う事ならば一刻も早くここより立ち去れば、私は一目散で修道院若しくは隣国よりも遠い国へと逃げ出したい気持ちが満載ですもの。
なのに貴方はこの様な感情を抱いている私へ――――。
「愛しいリズ。ああ本当に今宵から貴女は私だけのものだなんて未だに信じられない」
いえ、そこは信じて貰わなくとも宜しいですわ。
「今日と言う日を私はどれ程待ち続けただろうか。貴女はきっと気づいてはいないのだろうね」
いいえ、貴方様のお気持ちは存じておりましてよナルシスト殿下。
「もう誰がどの様に言おうと今宵を境にエリザベス、貴女を決して放しはしないよ」
そこは出来れば直ぐにでも開放して頂きたいのですが……。
等私はこの状況をまだ理解出来ないままとは言えです。
突っ込む事だけは忘れはしませんわ。
でも……本当にこの様に晴れやかで心より幸せそうな貴方の御顔を見るのは初めてなのです。
頭の中ではわかっているのです。
これは見せかけの演技だと言う事も……。
そして貴方が心より愛しておられる御方は今絶賛私を射殺さんばかりに睨みつけられておいでになられるのですもの。
あの視線が本物の矢であるならば確実に私は死んでおります……わね。
その様に睨まなくともキャサリン王女様、私は去る者ですのでどうかこの後ごゆっくり殿下とお心を通わせてくださいませ。
とは言え、私を心より愛おしいと思わせる様な熱い瞳で見つめないで下さい。
これは偽りなのだと十分過ぎる程理解しているのに、その様に私を見つめられれば錯覚だった恋心が間違った判断を再びしてしまうかもしれません。
私はもう傷つくのが嫌なのです。
意気地がないと仰られても致し方がありません。
ですが両親に商品として育てられ、初恋だと思っていた貴方に裏切られれば愛されていると言う錯覚に悩まされてしまったのですもの。
本当に恋や愛は目に見えぬ儚くて移ろいやすいもの。
私はその様な感情に左右される事なく静かにひっそりと暮らしたいのです。
もう人の思惑通りに生かされる人生はまっぴらなのですよ。
なのに私の心はまだ決心が出来ないのです。
何故……なのでしょう。
先に裏切ったのは貴方様なのに、何故私はそんな貴方を突き放す事が出来ずにこの宴へ参加しているのでしょうね。
2
あなたにおすすめの小説
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました
あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。
自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。
その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる