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しおりを挟むクス。
ほんの一瞬、それは見間違えるくらいの刹那で凡そ今までの可愛らしいものではなく大人の女性の、いや何かを悟った様でいて凛とした美しいリズの微笑み。
まだ16歳になったばかりの乙女がするものではないのだが俺はその笑みにくぎ付けとなってしまった。
傍で今も現在進行形でキャシーが全裸のままで恥ずかしげ……まあ俺も全裸のままではあるのだが、ぎゃんぎゃんと金切り声を上げているのは最早騒音でしかない。
キャシーとの関係を知っていたと、あの愛らしい唇より紡がれた言葉に俺は打ちのめされてしまった。
ああ、だからなのか。
知っていたからこその婚約を破棄若しくはなかった事にしたいと貴女は申し出ていてくれたのだね。
ずっと婚約破棄の理由を誰にも告げずにその小さな胸の内で必死に苦痛を耐えていたのだね。
それなのに俺は、俺のした事は俺自身のエゴと慾に塗れ愛する貴女を失いたくないばかりにだっっ。
結婚式で近いの口づけを躱す瞬間まで愛しい貴女を幻夢の世界へ閉じ込めてしまった。
そう、貴女の夢より目覚めさせる方法がお互いを愛する者同士の口づけ。
それが幻夢の世界より、深き眠りより目覚めさせる古典的だが唯一の方法。
それ故に間もなく眠らされるだろうキャサリンは永遠に目覚める事はない。
だがもうその様な事はどうでもいい。
俺は式の最後に目覚めてくれた貴女が本当に愛しくまた嬉しかったのだ。
俺達はまだお互いを想い合っている。
だからこそ貴女は目覚めてくれた。
そしてこれより先は貴女だけを幸せにしたい。
当初考えていた王座奪取や腐敗しきった制度の見直し……その様なもの等貴女がいなければ何もっ、何もいらないのだよ。
エリザベス、俺の唯一。
どうか俺を捨てないでくれ!!
貴女が望むのであらばこの命さえも喜んで差し出そう。
だからお願いだ。
魂だけでも貴女の傍にいさせてく……れ。
ああ、本当に貴女は俺の想いをわかってくれたのだね俺のリズ!!
やはり貴女は父上が恐れていた以上に魔法の才があったのだね。
今貴女の手に顕現された光の剣で俺を、どうか俺の身体を一思いに貫いてくれ。
理由はどうであれ裏切ってしまったのは俺なのだから。
貴女に殺されるのであらば俺は本望……だ。
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