御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki

文字の大きさ
38 / 42

38

しおりを挟む
「リズ!!」

 厭わしい行為は終わり貴方へ跨っておられたキャサリン王女を除ければ一糸纏わぬ姿のまま貴方は私の許へと来て下さいました。

「――――触らないで下さいませ!!」

 私は散々頼りないと思っていた夜着で口元を隠せば、私へ近づき触れようとする貴方へはっきりとした拒絶の意思を示しました。

 そう、その汚らわしい姿で、その汚れきった手で私へ触れないでくれと――――。

「リ……ズ」

 やめて下さい!!
 その様に心より傷ついた様な視線で私を見つめるのもっっ。
 今にも泣き出しそうな表情をするのもっっ。
 力なく身体を丸めたまま項垂れる姿もです!!

 
「あ、貴方が傷つくよりも私のっっ⁉」
「済まない。許してくれとは口が裂けても言えない。だがこれだけは――――」
「何も言わないで下さいませ!! そしてこれ以上何も口にしないで下さいませ!!」

 言い訳なんて何も聞きたくはないのです!!
 ええ本当に何も聞きたくはないのです!!
 

 済まない?
 許してくれとは言わない?
 それ以上に何を仰りたいと言うのですか!!

 わかっておりましたわ。
 承知しておりましたもの貴方と妹であられるキャサリン王女との関係を。
 だからこそ私は貴方の妻にはなれないとわかったからこそ身を引こうとっ、これ以上傷つけられない為にもそして気づ付けられない様に貴方方と距離を置こうとあの日そう思い立ったと言うのにっっ。

「ど、どうしてこの様な事……あの日に戻る事が出来ればどれ程〰〰〰〰⁉」


 今更後悔をしても仕方がないと思う。
 それでも後悔をせずにはいられない。
 何故?
 どうして?
 この二つの言葉が私の頭を、心を何処までも支配していく時だった。

「用がなければさっさと部屋から出て行きなさい。今宵はエセルの初夜と言う特別な夜なのよ」
「やめろキャシー!!」

 キャサリン王女も一糸纏わぬ……この兄妹は人前で裸体を晒す趣味があるのかと、何気に私はそう思いました。

 逞しい体躯の貴方の身体へ豊満で美しい曲線美を誇る様にご自身の身体を貴方の身体へと押し付け私へ見せつけるのです。
 まるで嫉妬させるようにも思いましたが、先程のキラキラで残っていただろう貴方への気持ちは全て吐き出した心算つもりだったのです。
 
 ですので私は目を逸らす事無くお二人をキッと睨みつければ、多分想像でしかないのですがキャサリン王女は気に障られたのでしょう。
 その瞬間表情を険しくすれば大きな声で笑われましたの。

「ほほほ、エセルはね貴女のものではないのよ。もうずっと前から――――」
「存じておりますわ」

 ええ知っていたからこその婚約破棄を願い出たのですもの。
 しかしそれが益々王女には気に障られたご様子で……。

「ふん、エセルの正妃になったからと言っていい気にならない事ね!! 私がリドゲート公爵家へ降嫁したとは言えよ。私がエセルの子を孕むまで、いいえ子を産んだ後もエセルの心と身体は生涯私だけのもの!!」
「キャシーやめろ!!」
「いいえっ、誰であろうとも私とエセルを離す事なんて出来やしないわ。たとえ神であろうとも……ね!!
 だから人間の、ただの女であるお前にエセルを自由にはさせはしない!! 正妃になったからと言っていい気にならない事ね!!」
「やめてくれキャシー、もうこれ以上俺とリズの間を壊すんじゃない!!」

 狂った様に嫣然と微笑みながら王女は――――と申しますか一体何時の間にご降嫁なされたのでしょう。
 いいえ今はそれに関してはどうでもいいのです。
 ただ鬼気迫った面持ちで一人悦に入った様にお話をされるキャサリン様のご様子は正直に申しまして恐ろしいものを感じました。
 それと同時にキャサリン様と子を生し、生してからも関係を迫られると言われた貴方の絶望に満ちた表情も初めて拝見しましたわね。

 何故なら私の前では何時も年上の余裕と言うものなのでしょうか。
 この八年間何時も決まりきった対応でしたけれどもです。
 貴方の表情はとても穏やかで好ましかったのです。
 この様な事がなければきっと私達は幸せな夫婦となっていたでしょうね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

処理中です...