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第八章 皇帝親征
8 私の魔術は役に立ったか?
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「ここで、タイミングをうかがうとするか」
ラディムは、魔獣とそれに対峙する騎士団の様子がよく見える、街道脇の木の上に登った。戦闘区域からは五十メートルほど離れている。この距離であれば、用意したスリングショットで爆薬を込めた小石を当てられる。
「ある程度練習はしてきたものの、命中率低いんだよなぁ」
爆薬に小石を使っている点を生かそうとスリングショットを練習してきたが、周囲の騎士からは笑われる程度の腕前だ。今回は霊素剥がしが主目的なので、物理的な威力自体は大したことがない。なので、万が一、騎士の一団に誤射しても危機的な状況になることはない。だが、心情としては外したくない。きちんと役に立てる導師だと周囲に認識させるためにも、ここはきれいに一発で事を成し遂げるべきだった。
巨木の幹ほどはあろうかという太い腕を、魔獣は振り回している。騎士たちはどうにかかわしているが、中には運悪く振り回された腕がかすり、衝撃で後方に弾き飛ばされている者もいた。致命傷には陥っていないようだが、このままでは戦闘不能になる者が増える。辺境伯領に入る前に戦力がかなり落ちる事態が予期できた。
「はやくなんとかしないとまずいな。侵攻作戦に支障が出る」
ラディムはスリングショットに爆薬を込め、引き絞って狙いを定める。狙う瞬間は、魔獣と騎士たちが十分に離れた時だ。
狙いをつける目を魔獣に固定し、じりじりと待ちながらタイミングを見計らう。
「よし、今だ!」
魔獣の大振りに振り回された腕が騎士たちにかわされ、魔獣がバランスを崩した瞬間をラディムは逃さなかった。
ラディムの手から放たれた爆薬は、勢いをもって一直線に魔獣の頭部へと飛んでいった。
運よく狙いどおりに爆薬が魔獣の頭に当たる。と、その瞬間、爆音が鳴り響き、もうもうと煙が上がった。
「うまくいったな。これで霊素の剥がれた頭部を集中攻撃すれば、さすがに魔獣もひとたまりもないだろう」
ラディムはニヤリと笑った。仕事が済んだとばかりに、木から降りてベルナルドの元へと向かった。
「いや、見事だったぞ、ラディム」
ベルナルドは満面の笑みでラディムを迎えた。
「祝着至極に存じます……」
ラディムはかしこまり、ベルナルドのねぎらいの言葉を受け取る。
ベルナルドはしっかりとラディムの魔術による攻撃を見ていたようだ。爆薬の効果を賞賛した。
「おかげで死者を出すことなく魔獣を退治できた。作戦に参加ができないほどのダメージを負った者も、どうにか片手で足りる程度で収まっている。お前がいなかったら、間違いなく死者二桁は出ていただろうから、本当にお手柄だ」
ラディムの頭を軽くポンポンっと叩きながら、ベルナルドは微笑した。
「もったいないお言葉です……」
ベルナルドにこうも褒められれば、こそばゆく感じる。
初の実戦だったので、果たしてうまくいくだろうかという漠然とした不安があった。だが、その不安も、ベルナルドからの言葉できれいに霧散した。役に立てたのだとラディムは実感できた。
「しかし……、私も報告で聞いてはいたが、実際に見てみると、感じ方が違うな。騎士団の駐屯していない農村などでは、お前のような導師がいなければ、魔獣に対抗するすべはないぞ」
微笑一転、ベルナルドは顔をしかめた。
ベルナルドの言葉どおり、このまま魔獣を放置していては農村などに深刻な被害が及びかねない。先日の村ではまだ人的被害が出ていないと言っていたが、いずれは人命にも影響が出てくるだろう。今後の帝国における辺境政策の、大きな悩みの種になりそうだった。
ラディムは思う。この戦争が終わったら、魔獣への対抗策として、世界再生教内で魔術を使えるものを早急に育成し、地方に派遣させるべきだと。
「私も魔獣は初めて見ましたが、痛感しました。やはり精霊は邪悪だと。このような凶悪な生物を生み出す霊素や精霊が、正しいはずがありません」
いずれは根本を断ち切らなければ、魔獣被害が止むことはない。根本……精霊の根絶だ。そのためにも、精霊を崇める精霊教をどうにかしなければいけない。
「まったくだ。今回の件で、この世界から精霊教を一刻も早く駆逐しなければならないと、決意を新たにしたぞ」
ベルナルドの言葉に、ラディムも全く同感だった。
ラディムは、魔獣とそれに対峙する騎士団の様子がよく見える、街道脇の木の上に登った。戦闘区域からは五十メートルほど離れている。この距離であれば、用意したスリングショットで爆薬を込めた小石を当てられる。
「ある程度練習はしてきたものの、命中率低いんだよなぁ」
爆薬に小石を使っている点を生かそうとスリングショットを練習してきたが、周囲の騎士からは笑われる程度の腕前だ。今回は霊素剥がしが主目的なので、物理的な威力自体は大したことがない。なので、万が一、騎士の一団に誤射しても危機的な状況になることはない。だが、心情としては外したくない。きちんと役に立てる導師だと周囲に認識させるためにも、ここはきれいに一発で事を成し遂げるべきだった。
巨木の幹ほどはあろうかという太い腕を、魔獣は振り回している。騎士たちはどうにかかわしているが、中には運悪く振り回された腕がかすり、衝撃で後方に弾き飛ばされている者もいた。致命傷には陥っていないようだが、このままでは戦闘不能になる者が増える。辺境伯領に入る前に戦力がかなり落ちる事態が予期できた。
「はやくなんとかしないとまずいな。侵攻作戦に支障が出る」
ラディムはスリングショットに爆薬を込め、引き絞って狙いを定める。狙う瞬間は、魔獣と騎士たちが十分に離れた時だ。
狙いをつける目を魔獣に固定し、じりじりと待ちながらタイミングを見計らう。
「よし、今だ!」
魔獣の大振りに振り回された腕が騎士たちにかわされ、魔獣がバランスを崩した瞬間をラディムは逃さなかった。
ラディムの手から放たれた爆薬は、勢いをもって一直線に魔獣の頭部へと飛んでいった。
運よく狙いどおりに爆薬が魔獣の頭に当たる。と、その瞬間、爆音が鳴り響き、もうもうと煙が上がった。
「うまくいったな。これで霊素の剥がれた頭部を集中攻撃すれば、さすがに魔獣もひとたまりもないだろう」
ラディムはニヤリと笑った。仕事が済んだとばかりに、木から降りてベルナルドの元へと向かった。
「いや、見事だったぞ、ラディム」
ベルナルドは満面の笑みでラディムを迎えた。
「祝着至極に存じます……」
ラディムはかしこまり、ベルナルドのねぎらいの言葉を受け取る。
ベルナルドはしっかりとラディムの魔術による攻撃を見ていたようだ。爆薬の効果を賞賛した。
「おかげで死者を出すことなく魔獣を退治できた。作戦に参加ができないほどのダメージを負った者も、どうにか片手で足りる程度で収まっている。お前がいなかったら、間違いなく死者二桁は出ていただろうから、本当にお手柄だ」
ラディムの頭を軽くポンポンっと叩きながら、ベルナルドは微笑した。
「もったいないお言葉です……」
ベルナルドにこうも褒められれば、こそばゆく感じる。
初の実戦だったので、果たしてうまくいくだろうかという漠然とした不安があった。だが、その不安も、ベルナルドからの言葉できれいに霧散した。役に立てたのだとラディムは実感できた。
「しかし……、私も報告で聞いてはいたが、実際に見てみると、感じ方が違うな。騎士団の駐屯していない農村などでは、お前のような導師がいなければ、魔獣に対抗するすべはないぞ」
微笑一転、ベルナルドは顔をしかめた。
ベルナルドの言葉どおり、このまま魔獣を放置していては農村などに深刻な被害が及びかねない。先日の村ではまだ人的被害が出ていないと言っていたが、いずれは人命にも影響が出てくるだろう。今後の帝国における辺境政策の、大きな悩みの種になりそうだった。
ラディムは思う。この戦争が終わったら、魔獣への対抗策として、世界再生教内で魔術を使えるものを早急に育成し、地方に派遣させるべきだと。
「私も魔獣は初めて見ましたが、痛感しました。やはり精霊は邪悪だと。このような凶悪な生物を生み出す霊素や精霊が、正しいはずがありません」
いずれは根本を断ち切らなければ、魔獣被害が止むことはない。根本……精霊の根絶だ。そのためにも、精霊を崇める精霊教をどうにかしなければいけない。
「まったくだ。今回の件で、この世界から精霊教を一刻も早く駆逐しなければならないと、決意を新たにしたぞ」
ベルナルドの言葉に、ラディムも全く同感だった。
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