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第十二章 悪役令嬢爆誕
5 わたくし悪役令嬢になりますわ!
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「でも今はわたくしたちよりも、ヤゲル王国との関係を強化した方がよいのではないでしょうか?」
フェルディナント自身も王家との関係が強まり喜んでいる様子だったので、アリツェは再考を促す意味でヤゲル王国の件を提案した。
「クリスティーナ様の件かい? いやぁ、確かにヤゲル王国との関係を強化したいと思っている貴族も多いけれど、それ以上に、王国の盾となるわがプリンツ辺境伯家との関係を密にしたいと思っている貴族が多い。アリツェが心配することじゃないさ」
フェルディナントは笑い飛ばし、アリツェの意見に聞く耳を持とうとはしなかった。
(叔父様は聖女様の精霊術の特殊性をよくご理解成されていないのでしょう。クリスティーナ様にヤゲル王国を大きく動かせるだけの影響力があると気づいている方が、今のフェイシア王国内でどれくらいいらっしゃるのでしょうか)
精霊術がいかに大きな影響を周囲に及ぼせるかを、正確に知るものはまだまだ少ない。おそらくはフェルディナントも大規模な精霊術はまだ見たことがないのだろう。聖女の力を低く見積もったとしても責められなかった。
(精霊術を行使できるのは、わたくしたち子どもだけ。しかも、わたくしや聖女様並みの強力な術が使える者はまずいない。なので、普通は精霊術が及ぼす影響など、なかなか想像がつかないのでしょうね)
であるならば、ここはやはりアリツェ自身が能動的に動き、望んだ形に世界を誘導していかざるを得ない。
フェルディナントはアリツェが不安を感じているのだと勘違いをし、「安心しなさい」と言って、アリツェの肩をポンっと叩くと、部屋を後にした。どうやらこの後、国王たちとの打ち合わせがあるようだ。
フェルディナントを見送ったアリツェは、今後をどうするかを決めるために黙りこくり、思索の海に飛び込んだ。
(アリツェ、いっそのこと世界再生教に鞍替えしたと思わせて、魔術を使って悪役を演じるってのはどうだろう?)
悠太の提案に、アリツェは一瞬ぎょっとした。
(……そこまでやれば、さすがにドミニクでも擁護はできなくなりそうですわね。わたくしが魔術を駆使して悪さをし魔術の悪評を王国中に広めれば、いまだ残る王国内の魔術寄りの貴族たちも精霊教に宗旨替えするでしょうし、王国全体が精霊教にまとまるいいきっかけになりそうですわね)
よくよく考えると、悠太の案はなかなかに都合がよさそうだ。婚約破棄の問題で見れば、アリツェ、ドミニク、クリスティーナの当事者三人以外の外野に対して特に有効に働くだろう。いわゆる外堀を埋める作戦として使えそうだった。
(では、さっそくわたくし、悪役令嬢になりますわ。やると決めたからには、徹底的にやりますわよ! ドミニクの悲しがる顔を見るのは、心苦しいですが)
アリツェの迷いも次第に消えてきた。悪役令嬢をこなす決心が、ようやくついた。
(そして、ラディムには辺境伯家の一員として、また、皇位継承権を持つ帝国の皇子として、がんばってもらおう)
これから悪役令嬢としてアリツェが落とす辺境伯家の評判を、ラディムが戦果でそそぐことで、うまくバランスを取ればいいと悠太は言う。ラディムが主となって皇帝ベルナルドを討てば、辺境伯家の評判も上がるし、アリツェが王国を万が一追われた際に、帝国内に安全に逃げ込める場所を作ってもらえる。
(そうですわね……。お兄様にも、一肌脱いでもらいましょう!)
「お兄様!」
アリツェは隣に立つラディムへ向き直った。
「なんだ、アリツェ。さっきから黙りこくって、何やら考え込んでいたようだが」
ラディムは首をかしげた。
「わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!」
アリツェの唐突な宣言に、ラディムはきょとんとした表情を浮かべた。
その後、アリツェはラディムに事情を説明し、協力を求めた。この作戦はラディムの力もなければだめなので、何としても理解をしてもらう必要があった。
「アリツェ……、君は本当にそれでいいのか? 君一人だけが泥をかぶるように見えて、私は正直、賛同しきれないのだが」
アリツェの提案にラディムは戸惑いの声を上げた。
「いいんです。これが貴族の娘として生まれたわたくしの使命だと思っております。お兄様、どうか皇帝を打ち破り、精霊教を国教とする新たな帝国を打ち立ててくださいませ」
考え直すよう促すラディムにアリツェは頭を振り、ラディムの手をつかんでぎゅっと握りしめた。
フェルディナント自身も王家との関係が強まり喜んでいる様子だったので、アリツェは再考を促す意味でヤゲル王国の件を提案した。
「クリスティーナ様の件かい? いやぁ、確かにヤゲル王国との関係を強化したいと思っている貴族も多いけれど、それ以上に、王国の盾となるわがプリンツ辺境伯家との関係を密にしたいと思っている貴族が多い。アリツェが心配することじゃないさ」
フェルディナントは笑い飛ばし、アリツェの意見に聞く耳を持とうとはしなかった。
(叔父様は聖女様の精霊術の特殊性をよくご理解成されていないのでしょう。クリスティーナ様にヤゲル王国を大きく動かせるだけの影響力があると気づいている方が、今のフェイシア王国内でどれくらいいらっしゃるのでしょうか)
精霊術がいかに大きな影響を周囲に及ぼせるかを、正確に知るものはまだまだ少ない。おそらくはフェルディナントも大規模な精霊術はまだ見たことがないのだろう。聖女の力を低く見積もったとしても責められなかった。
(精霊術を行使できるのは、わたくしたち子どもだけ。しかも、わたくしや聖女様並みの強力な術が使える者はまずいない。なので、普通は精霊術が及ぼす影響など、なかなか想像がつかないのでしょうね)
であるならば、ここはやはりアリツェ自身が能動的に動き、望んだ形に世界を誘導していかざるを得ない。
フェルディナントはアリツェが不安を感じているのだと勘違いをし、「安心しなさい」と言って、アリツェの肩をポンっと叩くと、部屋を後にした。どうやらこの後、国王たちとの打ち合わせがあるようだ。
フェルディナントを見送ったアリツェは、今後をどうするかを決めるために黙りこくり、思索の海に飛び込んだ。
(アリツェ、いっそのこと世界再生教に鞍替えしたと思わせて、魔術を使って悪役を演じるってのはどうだろう?)
悠太の提案に、アリツェは一瞬ぎょっとした。
(……そこまでやれば、さすがにドミニクでも擁護はできなくなりそうですわね。わたくしが魔術を駆使して悪さをし魔術の悪評を王国中に広めれば、いまだ残る王国内の魔術寄りの貴族たちも精霊教に宗旨替えするでしょうし、王国全体が精霊教にまとまるいいきっかけになりそうですわね)
よくよく考えると、悠太の案はなかなかに都合がよさそうだ。婚約破棄の問題で見れば、アリツェ、ドミニク、クリスティーナの当事者三人以外の外野に対して特に有効に働くだろう。いわゆる外堀を埋める作戦として使えそうだった。
(では、さっそくわたくし、悪役令嬢になりますわ。やると決めたからには、徹底的にやりますわよ! ドミニクの悲しがる顔を見るのは、心苦しいですが)
アリツェの迷いも次第に消えてきた。悪役令嬢をこなす決心が、ようやくついた。
(そして、ラディムには辺境伯家の一員として、また、皇位継承権を持つ帝国の皇子として、がんばってもらおう)
これから悪役令嬢としてアリツェが落とす辺境伯家の評判を、ラディムが戦果でそそぐことで、うまくバランスを取ればいいと悠太は言う。ラディムが主となって皇帝ベルナルドを討てば、辺境伯家の評判も上がるし、アリツェが王国を万が一追われた際に、帝国内に安全に逃げ込める場所を作ってもらえる。
(そうですわね……。お兄様にも、一肌脱いでもらいましょう!)
「お兄様!」
アリツェは隣に立つラディムへ向き直った。
「なんだ、アリツェ。さっきから黙りこくって、何やら考え込んでいたようだが」
ラディムは首をかしげた。
「わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!」
アリツェの唐突な宣言に、ラディムはきょとんとした表情を浮かべた。
その後、アリツェはラディムに事情を説明し、協力を求めた。この作戦はラディムの力もなければだめなので、何としても理解をしてもらう必要があった。
「アリツェ……、君は本当にそれでいいのか? 君一人だけが泥をかぶるように見えて、私は正直、賛同しきれないのだが」
アリツェの提案にラディムは戸惑いの声を上げた。
「いいんです。これが貴族の娘として生まれたわたくしの使命だと思っております。お兄様、どうか皇帝を打ち破り、精霊教を国教とする新たな帝国を打ち立ててくださいませ」
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