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第十三章 グリューン帰還
3 あまり領地経営には興味がないのですが……
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「その後は、どうすればよろしいでしょうか?」
(王都にマルティンを誘い、国王と面会させる。その場で、アリツェがマルティンを裏切り、過去のマルティンの所業を洗いざらいぶちまければいい。養子とはいえ、罪のない跡取りの娘殺しを画策したんだ。マルティンの立場は相当にまずくなるぞ)
「でもそれでは、クリスティーナ様の活躍の場がないのでは?」
アリツェ単独で行動をするのであれば、今の悠太の作戦でいいかもしれないが、今回はクリスティーナに手柄を与える必要もある。
(うーん、そういえばそうだな……。だったら、アリツェがマルティンと世界再生教の件で、意気投合したように見せかけてみるっていうのはどうだ? クリスティーナがその様子を見れば、まず間違いなくオレたちを危険だと感じるはずだ。きっと拘束して、王都に連行しようとするはずだぞ)
「そうすると、わたくしとお養父様が一緒に処分されそうですわね。さすがにイヤですわよ、あの人と一緒の扱いをされるのは」
想像しただけで気分が悪い。アリツェはぞわりと身震いした。
(なら、国王と面会になった際に、アリツェはこう言うといい。マルティンと顔を合わせた瞬間に昔のトラウマが蘇り、おもわず自己保身を図るために、マルティンの言うがまま世界再生教に加担すると口にしてしまったと。で、それからマルティンの過去の所業を暴露するって手順を踏めば、うまいことマルティンだけの処分に持っていけるんじゃないか?)
「なるほど、それでしたら、クリスティーナ様の評価をあげつつ、お養父様を痛い目に合わせ、なおかつわたくしの評判も適度に落とせそうですわね」
今考え得る最も適切な作戦かもしれないと、アリツェも同意した。
(子爵の恐怖におびえてかわいそうという同情意見も出るだろうけれど、将来王族の妻になる人間が、すごまれただけで容易に相手に屈するような心の弱さを持つのは適切ではないって評価も、きっと出てくるはずさ)
「少し脅せばわたくしが世界再生教に宗旨替えする可能性があると、国王陛下もお思いになるでしょうし、そうなれば、今までわたくしがクリスティーナ様に仕掛けていた嫌がらせに魔術が使われていた件も、陛下たちに知れ渡ることになりそうですわね。ますますわたくしの評判が落ちますわね。ちょっと悲しいですが……」
いまだ国王やその側近たちは、アリツェがわざわざ魔術を使ってクリスティーナに嫌がらせをしている件に気づいていなかった。この機会にそれらについても明るみになれば、アリツェの評価は下がる一方だろう。口ではマルティンに脅されたなんだと言ってはいるが、実は最初から魔術に傾倒し始めていたのではないのか、と。
(悪役を演じるんだ。我慢しようや)
なんとも悪役は大変だと、アリツェはため息をついた。
「お養父様はどうなりますでしょうか?」
(改易か、それに近い処分じゃないか? もしかしたら子爵領は、アリツェの管理になるかもしれないね。当主の交代ってやつだ)
立場上はアリツェが爵位の継承順位ではトップだった。マルティンに命を狙われたとはいえ、いまだ王国側に廃嫡の手続きはなされていないため、アリツェはマルティンの養女の立場を保持したままだ。
「あまり領地経営には興味がないのですが……。それに、もしわたくし自身が世界再生教に改宗する可能性があると陛下がお思いになられるのであれば、陛下ははたして、わたくしに領地をおまかせになるでしょうか?」
今回の子爵領の問題は、そもそもマルティンに精霊教への宗旨替えを迫るためのものだ。そこに、世界再生教に乗り換えそうだと思われているアリツェを、新たに当主に据えるのはどうなのだろうか。本末転倒ではないかとアリツェは思う。
(なぁに、アリツェの評判が落ちきる前に、早々にマルティンの処分は決まるだろう。先に領地をもらってしまえば、あとはいくら評判が落ちようと、婚約破棄までグリューンに引っ込んで、適当にのらりくらりとごまかせばいい)
「はぁ……」
悠太は心配するなと言うが、アリツェはそこまで楽観できず、気のない返事をする。
(もらえるものはもらっておけばいいんだ。悪役をまっとうした結果、王国内での立場が悪くなるのは確実だ。そうなったら、もらった領地に引っ込んでおとなしくしているっていうのもありじゃないか?)
「それもそうですわね。逃げ場所の選択肢は、多いに越したことはありませんわ。万が一お兄様が帝国侵攻に失敗した時は、お兄様をかくまって差し上げられますし」
確かに自分の管理する領地があれば、いざというときは逃げ込める。
(いやぁ、ラディムが失敗するときって、つまり、フェイシア王国の敗北だよな? そしたらグリューンも無事じゃないんじゃ……)
「そ、その時はその時ですわ!」
悠太の的確な指摘に、アリツェはごまかすように声を張り上げた。
(あとは成り行き次第でうまいこと行動しようか。まぁ、子爵領がもらえるかもってのは、オレの勝手な予想だ。もらえないならもらえないで、当初の予定どおりラディムに頑張ってもらって、帝国内に居場所を確保してもらうまでさ)
アリツェはうなずくと、子爵領へ向かうための準備を始めた。
(王都にマルティンを誘い、国王と面会させる。その場で、アリツェがマルティンを裏切り、過去のマルティンの所業を洗いざらいぶちまければいい。養子とはいえ、罪のない跡取りの娘殺しを画策したんだ。マルティンの立場は相当にまずくなるぞ)
「でもそれでは、クリスティーナ様の活躍の場がないのでは?」
アリツェ単独で行動をするのであれば、今の悠太の作戦でいいかもしれないが、今回はクリスティーナに手柄を与える必要もある。
(うーん、そういえばそうだな……。だったら、アリツェがマルティンと世界再生教の件で、意気投合したように見せかけてみるっていうのはどうだ? クリスティーナがその様子を見れば、まず間違いなくオレたちを危険だと感じるはずだ。きっと拘束して、王都に連行しようとするはずだぞ)
「そうすると、わたくしとお養父様が一緒に処分されそうですわね。さすがにイヤですわよ、あの人と一緒の扱いをされるのは」
想像しただけで気分が悪い。アリツェはぞわりと身震いした。
(なら、国王と面会になった際に、アリツェはこう言うといい。マルティンと顔を合わせた瞬間に昔のトラウマが蘇り、おもわず自己保身を図るために、マルティンの言うがまま世界再生教に加担すると口にしてしまったと。で、それからマルティンの過去の所業を暴露するって手順を踏めば、うまいことマルティンだけの処分に持っていけるんじゃないか?)
「なるほど、それでしたら、クリスティーナ様の評価をあげつつ、お養父様を痛い目に合わせ、なおかつわたくしの評判も適度に落とせそうですわね」
今考え得る最も適切な作戦かもしれないと、アリツェも同意した。
(子爵の恐怖におびえてかわいそうという同情意見も出るだろうけれど、将来王族の妻になる人間が、すごまれただけで容易に相手に屈するような心の弱さを持つのは適切ではないって評価も、きっと出てくるはずさ)
「少し脅せばわたくしが世界再生教に宗旨替えする可能性があると、国王陛下もお思いになるでしょうし、そうなれば、今までわたくしがクリスティーナ様に仕掛けていた嫌がらせに魔術が使われていた件も、陛下たちに知れ渡ることになりそうですわね。ますますわたくしの評判が落ちますわね。ちょっと悲しいですが……」
いまだ国王やその側近たちは、アリツェがわざわざ魔術を使ってクリスティーナに嫌がらせをしている件に気づいていなかった。この機会にそれらについても明るみになれば、アリツェの評価は下がる一方だろう。口ではマルティンに脅されたなんだと言ってはいるが、実は最初から魔術に傾倒し始めていたのではないのか、と。
(悪役を演じるんだ。我慢しようや)
なんとも悪役は大変だと、アリツェはため息をついた。
「お養父様はどうなりますでしょうか?」
(改易か、それに近い処分じゃないか? もしかしたら子爵領は、アリツェの管理になるかもしれないね。当主の交代ってやつだ)
立場上はアリツェが爵位の継承順位ではトップだった。マルティンに命を狙われたとはいえ、いまだ王国側に廃嫡の手続きはなされていないため、アリツェはマルティンの養女の立場を保持したままだ。
「あまり領地経営には興味がないのですが……。それに、もしわたくし自身が世界再生教に改宗する可能性があると陛下がお思いになられるのであれば、陛下ははたして、わたくしに領地をおまかせになるでしょうか?」
今回の子爵領の問題は、そもそもマルティンに精霊教への宗旨替えを迫るためのものだ。そこに、世界再生教に乗り換えそうだと思われているアリツェを、新たに当主に据えるのはどうなのだろうか。本末転倒ではないかとアリツェは思う。
(なぁに、アリツェの評判が落ちきる前に、早々にマルティンの処分は決まるだろう。先に領地をもらってしまえば、あとはいくら評判が落ちようと、婚約破棄までグリューンに引っ込んで、適当にのらりくらりとごまかせばいい)
「はぁ……」
悠太は心配するなと言うが、アリツェはそこまで楽観できず、気のない返事をする。
(もらえるものはもらっておけばいいんだ。悪役をまっとうした結果、王国内での立場が悪くなるのは確実だ。そうなったら、もらった領地に引っ込んでおとなしくしているっていうのもありじゃないか?)
「それもそうですわね。逃げ場所の選択肢は、多いに越したことはありませんわ。万が一お兄様が帝国侵攻に失敗した時は、お兄様をかくまって差し上げられますし」
確かに自分の管理する領地があれば、いざというときは逃げ込める。
(いやぁ、ラディムが失敗するときって、つまり、フェイシア王国の敗北だよな? そしたらグリューンも無事じゃないんじゃ……)
「そ、その時はその時ですわ!」
悠太の的確な指摘に、アリツェはごまかすように声を張り上げた。
(あとは成り行き次第でうまいこと行動しようか。まぁ、子爵領がもらえるかもってのは、オレの勝手な予想だ。もらえないならもらえないで、当初の予定どおりラディムに頑張ってもらって、帝国内に居場所を確保してもらうまでさ)
アリツェはうなずくと、子爵領へ向かうための準備を始めた。
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