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第十三章 グリューン帰還
11 ドミニクを説得いたしますわ
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つかみ合いのキャットファイトの後、クリスティーナはアリツェの悪口を口にしながら自室に戻っていった。一方、アリツェはそのままドミニクの私室に連れていかれた。
部屋に入ると、ドミニクは勢いに任せてアリツェを壁際に追い込み、ドンっと壁に手を付いた。目の前に迫るドミニクの顔に、アリツェはいたたまれなくなり視線をそらす。
「アリツェ、なぜあんな真似をしたんだい。ボクが君を捨てるだなんて、ありえないって前言ったじゃないか」
ドミニクは強い口調でアリツェを責めた。
「あら、だからですわ、ドミニク。ああやってクリスティーナ様をいじめる姿をあなたに見てもらえば、わたくしがいかに性悪な女なのか、ご理解いただけるかと思いまして」
アリツェは必死で目をそらし、動揺している心のうちを悟られないように、努めて感情を抑えた口調で答える。
「アリツェ、君はいったい何を考えているんだい。君がそんなことをするような人間じゃないっていうのは、ずっとそばにいたボク自身がわかっている」
ドミニクは頭を振った。
「それに、なんだってわざわざ魔術を彷彿とさせるような精霊術を使っているんだ。あれ、ラディムが魔術研究をしていた時代のマジックアイテムだろう?」
やはりというか、アリツェの使ったものがなんであるかを、ドミニクはしっかりと理解していたようだ。
「だって、わたくし世界再生教に改宗をすると決めたんですもの、当然ですわ」
「何を言っているんだい、アリツェ。バカな考えはよすんだ」
ドミニクはさらに顔をアリツェに寄せてくる。
「だって、こうでもしないと、ドミニクはわたくしと別れてくださらないですわよね?」
ドミニクの圧力にアリツェはたまらず、視線だけではなく顔自体をそらした。
「アリツェ……、ボクと別れたいのか?」
ドミニクはひどく悲しそうな表情を浮かべる。
(うっ……、そんな目で見ないでくださいませ、ドミニク)
いたたまれなくなり、アリツェはうつむいた。
「え、ええ、そうですわ。わたくしよりもクリスティーナ様の方が、ドミニクの相手にはふさわしいですもの」
本心は逆だ。クリスティーナがドミニクにふさわしいだなんてつゆほども思ってはいない。けれども、フェイシア王国とヤゲル王国の将来のため、グッと我慢しなければ。
「あの自分しか見えていない聖女様が、ボクにふさわしいだって? 何を言うんだ……」
ドミニクは、「ありえないよ」と呟いた。
「ドミニク、よくお聞きになって」
アリツェは顔をあげてドミニクを見つめると、意を決して説得を始めた。行動でドミニクの気持ちを翻せなかった以上は、もう言葉で動かすしかない。
「以前にも少しお話いたしましたが、フェイシア王国とヤゲル王国が今以上に緊密になるのが、この国、しいては、世界にとって、とても大切なのですわ。一時の感情に流されてはいけません。わたくしのことなど忘れて、クリスティーナ様と婚約なさいませ」
必死に感情を押し殺し、アリツェは一気にまくしたてる。
「ダメだ、ボクは君以外の娘と一緒になるつもりなんて――」
「ドミニク! わたくしだってつらいのです。でも、わたくしたちは王族であり、上位貴族ですわ。ままならない婚姻だなんて、よくある話です。しっかりとお考えなさってください。今、王国のために、最も最適な選択は何なのかを。そして、わたくしが泥をかぶる覚悟をした意気を、どうか汲んでくださいませ!」
ドミニクが頭を振り、拒絶の言葉を発しようとすると、アリツェは声を張り上げてたしなめた。
「それに、そろそろ上位貴族たちの中にも、わたくしの王子の妻としての資質に疑問を持つ者が増えてきましたわ。悪役を演じてきた甲斐があったというものですわ」
「……君は一人で、そこまでの覚悟を背負っていたのか」
アリツェの覚悟のほどを見て、ドミニクはひどく青ざめている。
「あとはあなた次第。外堀はわたくしで大分埋めましたわ。あなたが婚約を破棄したいと言えば、以前とは違い、すんなりと話はとおると思いますわ」
最初に婚約を結んだ時とは、状況がかなり変わっていた。マルティンとの一件で、アリツェの評判をかなり落とせたので、あとはドミニクが覚悟を決めさえすれば、すんなりと話は進みそうな気がする。
「しかし、それでもボクは……」
ドミニクは顔をゆがめ、言葉を濁す。
「ドミニク!」
アリツェはドミニクの頬を叩いた。
「アリツェ……」
叩かれた頬に手を当て、ドミニクは呆然とアリツェを見つめる。
「どうかこの国を、そして、世界を救うために。お願いいたしますわ……」
アリツェは目に涙を浮かべ、最後にはドミニクにすがり付いて懇願した。
部屋に入ると、ドミニクは勢いに任せてアリツェを壁際に追い込み、ドンっと壁に手を付いた。目の前に迫るドミニクの顔に、アリツェはいたたまれなくなり視線をそらす。
「アリツェ、なぜあんな真似をしたんだい。ボクが君を捨てるだなんて、ありえないって前言ったじゃないか」
ドミニクは強い口調でアリツェを責めた。
「あら、だからですわ、ドミニク。ああやってクリスティーナ様をいじめる姿をあなたに見てもらえば、わたくしがいかに性悪な女なのか、ご理解いただけるかと思いまして」
アリツェは必死で目をそらし、動揺している心のうちを悟られないように、努めて感情を抑えた口調で答える。
「アリツェ、君はいったい何を考えているんだい。君がそんなことをするような人間じゃないっていうのは、ずっとそばにいたボク自身がわかっている」
ドミニクは頭を振った。
「それに、なんだってわざわざ魔術を彷彿とさせるような精霊術を使っているんだ。あれ、ラディムが魔術研究をしていた時代のマジックアイテムだろう?」
やはりというか、アリツェの使ったものがなんであるかを、ドミニクはしっかりと理解していたようだ。
「だって、わたくし世界再生教に改宗をすると決めたんですもの、当然ですわ」
「何を言っているんだい、アリツェ。バカな考えはよすんだ」
ドミニクはさらに顔をアリツェに寄せてくる。
「だって、こうでもしないと、ドミニクはわたくしと別れてくださらないですわよね?」
ドミニクの圧力にアリツェはたまらず、視線だけではなく顔自体をそらした。
「アリツェ……、ボクと別れたいのか?」
ドミニクはひどく悲しそうな表情を浮かべる。
(うっ……、そんな目で見ないでくださいませ、ドミニク)
いたたまれなくなり、アリツェはうつむいた。
「え、ええ、そうですわ。わたくしよりもクリスティーナ様の方が、ドミニクの相手にはふさわしいですもの」
本心は逆だ。クリスティーナがドミニクにふさわしいだなんてつゆほども思ってはいない。けれども、フェイシア王国とヤゲル王国の将来のため、グッと我慢しなければ。
「あの自分しか見えていない聖女様が、ボクにふさわしいだって? 何を言うんだ……」
ドミニクは、「ありえないよ」と呟いた。
「ドミニク、よくお聞きになって」
アリツェは顔をあげてドミニクを見つめると、意を決して説得を始めた。行動でドミニクの気持ちを翻せなかった以上は、もう言葉で動かすしかない。
「以前にも少しお話いたしましたが、フェイシア王国とヤゲル王国が今以上に緊密になるのが、この国、しいては、世界にとって、とても大切なのですわ。一時の感情に流されてはいけません。わたくしのことなど忘れて、クリスティーナ様と婚約なさいませ」
必死に感情を押し殺し、アリツェは一気にまくしたてる。
「ダメだ、ボクは君以外の娘と一緒になるつもりなんて――」
「ドミニク! わたくしだってつらいのです。でも、わたくしたちは王族であり、上位貴族ですわ。ままならない婚姻だなんて、よくある話です。しっかりとお考えなさってください。今、王国のために、最も最適な選択は何なのかを。そして、わたくしが泥をかぶる覚悟をした意気を、どうか汲んでくださいませ!」
ドミニクが頭を振り、拒絶の言葉を発しようとすると、アリツェは声を張り上げてたしなめた。
「それに、そろそろ上位貴族たちの中にも、わたくしの王子の妻としての資質に疑問を持つ者が増えてきましたわ。悪役を演じてきた甲斐があったというものですわ」
「……君は一人で、そこまでの覚悟を背負っていたのか」
アリツェの覚悟のほどを見て、ドミニクはひどく青ざめている。
「あとはあなた次第。外堀はわたくしで大分埋めましたわ。あなたが婚約を破棄したいと言えば、以前とは違い、すんなりと話はとおると思いますわ」
最初に婚約を結んだ時とは、状況がかなり変わっていた。マルティンとの一件で、アリツェの評判をかなり落とせたので、あとはドミニクが覚悟を決めさえすれば、すんなりと話は進みそうな気がする。
「しかし、それでもボクは……」
ドミニクは顔をゆがめ、言葉を濁す。
「ドミニク!」
アリツェはドミニクの頬を叩いた。
「アリツェ……」
叩かれた頬に手を当て、ドミニクは呆然とアリツェを見つめる。
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