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第十五章 再会
3 クリスティーナとアレシュの婚約の儀ですわ
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子爵邸に入ると、一足先に到着していたヤゲル王国一行が待っていた。応接室で主だった面々が顔を合わせ、今後の打ち合わせを始める。
「クリスティーナ様、ごきげんよう! ……では、以前おっしゃられたように、ミリア様ではなくクリスティーナ様とお呼びいたしますわね」
アリツェはクリスティーナの姿を確認し、あいさつを交わした。と同時に、呼び方について、周囲に聞かれないようそっとクリスティーナに耳打ちをする。
「アリツェ、なんだか悪いですね。あなたの屋敷を会場にさせてもらって。……えぇ、無用な混乱は本意ではないわ。クリスティーナでお願いしますね」
クリスティーナも返礼をすると、さっと耳打ち返した。
「むしろ、光栄ですわ。それに、わたくしたちにもメリットはしっかりとありますのよ」
アリツェは隣のドミニクに目配せをする。ドミニクはアリツェの様子に気づき、うなずいた。
「アリツェの言うとおり、ボクたちとしてもありがたいんだ。フェイシアとヤゲルの重鎮に、この領の復興状況とボクたちの仲をアピールできる、いい機会だからね」
「では、私も必要以上にかしこまる必要はないってことですね」
クリスティーナは納得したとばかりに、コクコクと首肯した。
「そうですわ。持ちつ持たれつ、グリューンでは気楽にお過ごしくださいませ」
クリスティーナは今回の主賓。できるだけ気持ちよく滞在をしてもらいたいとアリツェは思う。
「ふふ、ありがとう。……クリスティーナの人格がいろいろとやらかしてごめんなさいね。あなた、こんなにいい娘なのに、散々暴言を吐いて……」
クリスティーナはさっと表情を曇らせた。
「いえ、わたくしも不本意ながらではありますが、クリスティーナ様には嫌がらせをしてしまいましたし。お互い様ですわ」
アリツェは慌てて頭を振った。
クリスティーナに暴言を吐かせた原因はアリツェにもあったので、ここまで神妙にされるとアリツェとしても居心地が悪い。お互いさまということで、水に流した方がいいだろう。
「そう言っていただけると、私も助かるわ。それと、今後は親族になるのです。この世界では同い年ですし、私のことを様付けは避けていただけると嬉しいです」
クリスティーナはアリツェの夫の弟の妻になる。近しい間柄になるのだし、クリスティーナの言うように、もう少し砕けて接してもいいのかもしれない。
「それもそうですわね! 今後ともよろしくお願いいたしますわ、クリスティーナ! ……そして、ミリア」
クリスティーナの人格とはそりが合わなかったが、ミリアの人格とならいい友達になれそうだとアリツェは思った。
アリツェたちが領に戻って数日後、盛大にクリスティーナとアレシュの婚約の儀が開かれた。
あわただしく準備を行ったとは思えないほどの立派な式に、参加者からも感嘆の声が上がっている。準備を主導したアリツェとドミニクの鼻も高かった。
「きれいですわ、クリスティーナ」
アリツェは祭壇の前に立つクリスティーナを見つめ、つぶやいた。
「本当だね、かつての性悪少女の面影なんてない。立派な聖女だ」
ドミニクもうなずいて、クリスティーナの姿を凝視している。
クリスティーナは聖女らしく、純白の精霊教のローブを着ていた。前面に金糸で龍の意匠が豪華に施されている式典用のものだ。昼時で、ちょうど聖堂のステンドグラスから入り込む複雑に混じりあった色彩の光に照らされて、クリスティーナの姿は神々しいまでに輝いていた。
「それに隣のアレシュ様も、まだ十二歳とは思えないしっかりした態度だわ」
両国の数多の重鎮の目にさらされているにもかかわらず、アレシュは動じたそぶりを見せていない。まだ準成人を迎えたばかりなのに、大したものだった。
「この婚約の儀の後、アレシュの王太子への立太子が正式に父上から発表される手はずになっている。今回の件が、アレシュを大人にしたのかもしれないね」
「ふふ、性悪聖女様に一目惚れをしたときは、いったいどうなることかと思いましたが、こうしてみるとお似合いですわね」
将来のフェイシア国王になる覚悟を決めたアレシュの横顔は、もう一人前の立派な男のものになっていた。まだ本格的な成長期を迎える前なので、クリスティーナのほうがわずかに身長が高い。だがそれも、あっという間に追い抜き、中性的だった容貌も、やがてはドミニクのような精悍な顔つきに変わるのだろう。
「ただ、アレシュ様とクリスティーナの肉体年齢は一つ違いですが、精神年齢は大分離れていらっしゃいますわ。アレシュ様はクリスティーナの尻に敷かれっぱなしでしょうね」
アリツェは思わず含み笑いをこぼした。
クリスティーナの肉体年齢はアリツェと同じく十三歳だったが、二十二歳だった転生者ミリアの人格を引き継いでいる。精神面ではすっかり大人だ。
「末っ子で甘やかされてきたあいつには、誰かに引っ張ってもらうほうがいいかもしれないよ」
「あらあら、うふふ」
将来のクリスティーナとアレシュの関係がどうなるか、楽しみなアリツェだった。
「クリスティーナ様、ごきげんよう! ……では、以前おっしゃられたように、ミリア様ではなくクリスティーナ様とお呼びいたしますわね」
アリツェはクリスティーナの姿を確認し、あいさつを交わした。と同時に、呼び方について、周囲に聞かれないようそっとクリスティーナに耳打ちをする。
「アリツェ、なんだか悪いですね。あなたの屋敷を会場にさせてもらって。……えぇ、無用な混乱は本意ではないわ。クリスティーナでお願いしますね」
クリスティーナも返礼をすると、さっと耳打ち返した。
「むしろ、光栄ですわ。それに、わたくしたちにもメリットはしっかりとありますのよ」
アリツェは隣のドミニクに目配せをする。ドミニクはアリツェの様子に気づき、うなずいた。
「アリツェの言うとおり、ボクたちとしてもありがたいんだ。フェイシアとヤゲルの重鎮に、この領の復興状況とボクたちの仲をアピールできる、いい機会だからね」
「では、私も必要以上にかしこまる必要はないってことですね」
クリスティーナは納得したとばかりに、コクコクと首肯した。
「そうですわ。持ちつ持たれつ、グリューンでは気楽にお過ごしくださいませ」
クリスティーナは今回の主賓。できるだけ気持ちよく滞在をしてもらいたいとアリツェは思う。
「ふふ、ありがとう。……クリスティーナの人格がいろいろとやらかしてごめんなさいね。あなた、こんなにいい娘なのに、散々暴言を吐いて……」
クリスティーナはさっと表情を曇らせた。
「いえ、わたくしも不本意ながらではありますが、クリスティーナ様には嫌がらせをしてしまいましたし。お互い様ですわ」
アリツェは慌てて頭を振った。
クリスティーナに暴言を吐かせた原因はアリツェにもあったので、ここまで神妙にされるとアリツェとしても居心地が悪い。お互いさまということで、水に流した方がいいだろう。
「そう言っていただけると、私も助かるわ。それと、今後は親族になるのです。この世界では同い年ですし、私のことを様付けは避けていただけると嬉しいです」
クリスティーナはアリツェの夫の弟の妻になる。近しい間柄になるのだし、クリスティーナの言うように、もう少し砕けて接してもいいのかもしれない。
「それもそうですわね! 今後ともよろしくお願いいたしますわ、クリスティーナ! ……そして、ミリア」
クリスティーナの人格とはそりが合わなかったが、ミリアの人格とならいい友達になれそうだとアリツェは思った。
アリツェたちが領に戻って数日後、盛大にクリスティーナとアレシュの婚約の儀が開かれた。
あわただしく準備を行ったとは思えないほどの立派な式に、参加者からも感嘆の声が上がっている。準備を主導したアリツェとドミニクの鼻も高かった。
「きれいですわ、クリスティーナ」
アリツェは祭壇の前に立つクリスティーナを見つめ、つぶやいた。
「本当だね、かつての性悪少女の面影なんてない。立派な聖女だ」
ドミニクもうなずいて、クリスティーナの姿を凝視している。
クリスティーナは聖女らしく、純白の精霊教のローブを着ていた。前面に金糸で龍の意匠が豪華に施されている式典用のものだ。昼時で、ちょうど聖堂のステンドグラスから入り込む複雑に混じりあった色彩の光に照らされて、クリスティーナの姿は神々しいまでに輝いていた。
「それに隣のアレシュ様も、まだ十二歳とは思えないしっかりした態度だわ」
両国の数多の重鎮の目にさらされているにもかかわらず、アレシュは動じたそぶりを見せていない。まだ準成人を迎えたばかりなのに、大したものだった。
「この婚約の儀の後、アレシュの王太子への立太子が正式に父上から発表される手はずになっている。今回の件が、アレシュを大人にしたのかもしれないね」
「ふふ、性悪聖女様に一目惚れをしたときは、いったいどうなることかと思いましたが、こうしてみるとお似合いですわね」
将来のフェイシア国王になる覚悟を決めたアレシュの横顔は、もう一人前の立派な男のものになっていた。まだ本格的な成長期を迎える前なので、クリスティーナのほうがわずかに身長が高い。だがそれも、あっという間に追い抜き、中性的だった容貌も、やがてはドミニクのような精悍な顔つきに変わるのだろう。
「ただ、アレシュ様とクリスティーナの肉体年齢は一つ違いですが、精神年齢は大分離れていらっしゃいますわ。アレシュ様はクリスティーナの尻に敷かれっぱなしでしょうね」
アリツェは思わず含み笑いをこぼした。
クリスティーナの肉体年齢はアリツェと同じく十三歳だったが、二十二歳だった転生者ミリアの人格を引き継いでいる。精神面ではすっかり大人だ。
「末っ子で甘やかされてきたあいつには、誰かに引っ張ってもらうほうがいいかもしれないよ」
「あらあら、うふふ」
将来のクリスティーナとアレシュの関係がどうなるか、楽しみなアリツェだった。
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