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1章
傷と記憶
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冷たい床に座り壁に身を預けて窓から夜空を見る。
「真っ暗。」
ここに来てからずっと変わらない景色。
今日は一度も行った事の無い街の話をした、彼は奴隷だから外へは行けないと言っていた。
だけど、私は違う。
私は奴隷じゃない、でも外へ行けない。
外のこと、街のこと、本のこと、自分のことも全部何も知らない。
知ってる事は、私が災いであること。
あと、扉の向こうから聞こえる足音がひどく怖い事。
ほらね、今日も聞こえる。
階段を上る足音。廊下を大股で進む音。鍵を探す音。
ガチャガチャギギィー
後ろを振り返るといつもの様にそいつが立っている。
この館の主人。
館の主人「おい、はやくこっちへ来い。」
ニタニタ笑いを顔に貼り透けた顔からさっさと視線を外してそいつに近づいてやった。
館の主人「さあ!喜べ!お前にとびきりのプレゼントだ!」
そいつはそう言ってあかあかと輝く火かき棒を私の肩に当てた。
焦げた布の匂い、焼けた肌の匂いが鼻につくと同時に言葉では表せない激しい痛みが疾走る。
―一時間―
私は暴力に耐えた。
全身が痛い。
夜にそいつが来て気が済みまで殴られて痛みが引くまでひたすらじっとする。
その間いつも掌を見ていた。
例えばこの傷は2日前、思い切り足を踏まれ続けたときにできた傷。
こっちはナイフで切り付けられた傷。
脚は鞭打ちの傷がばかりで汚いとかフォークで刺された時はとても痛かったなとか。
そんな事をして考えて、痛みが鈍くなるまでじっと息を殺して座っている。
多分、しばらく動けないだろうな。なんて他人事みたいに呟いてうずくまっていた。
どれぐらい時間が経ったか分からなくなった頃
窓が開いて後ろから風が入り込んできた。
顔だけ向けるとそこにはギョッとした美しい子が立っていた。
少年「おい!しっかりしろ!」
美しい子は近くによってそう言ってくれた。
私は泣きじゃくりながら頼りない力で美しい子の腕にしがみついて。
女の子「痛いのはもう嫌!あいつが来るのが怖い!ここに居たく無い!でも、逃げるのも怖い!いや!もうあいつが来るのはいや!こんな事されるのも、ここに居るのも、生きてるのもいや!でも、死にたくない!災いなんて成りたくてなったんじゃないのに!こんな想いをするならいっそ生まれてこなければ良かった!」
私は子供のように泣きじゃくっていた。泣き方をはじめて知ったみたいに。
美しい子は黙っていた。
私の気が済むまで泣けと言うように。
------------
私が泣き止むと美しい子が口を開いた。
少年「俺は、お前の事情の一から百まで分かってやれる訳じゃ無い…。でもお前がここに居たく無い事は分かった。」
美しい子は言葉を選びながら話した。
少年「だから、…俺と一緒に星を見に行かないか?」
あまりに突飛な提案に顔を上げるとはじめてとても間近で見た彼の瞳の奥底が光っているのが分かった。
女の子「どうして、そんな、そんな、あいつは、どこまで、もおってくっのになにされっ、るかわから、ないのに」
また涙が出てきた。
館の主人の足音を思い出すだけでも怖い。
私には鉄の鎖の代わりに根強く残る体中の傷やあざ、7年分の記憶、恐怖が重たい枷になっていた。
抵抗する私を美しい子は軽々と持ち上げて片手のままにあっと言う間も無く屋敷を出た。
あいだ中怖くて痛くて彼の首にしがみついて泣いていた。
でもその夜の星空と彼の瞳の光はとてもきれいで"美しい"を着せてあげたいと思ったのだった。
次回予告
「星空の下で」
屋敷を出た二人。夏の夜空に静かに見守られて話をしましょう。今日は、せっかくの新月だもの。
「真っ暗。」
ここに来てからずっと変わらない景色。
今日は一度も行った事の無い街の話をした、彼は奴隷だから外へは行けないと言っていた。
だけど、私は違う。
私は奴隷じゃない、でも外へ行けない。
外のこと、街のこと、本のこと、自分のことも全部何も知らない。
知ってる事は、私が災いであること。
あと、扉の向こうから聞こえる足音がひどく怖い事。
ほらね、今日も聞こえる。
階段を上る足音。廊下を大股で進む音。鍵を探す音。
ガチャガチャギギィー
後ろを振り返るといつもの様にそいつが立っている。
この館の主人。
館の主人「おい、はやくこっちへ来い。」
ニタニタ笑いを顔に貼り透けた顔からさっさと視線を外してそいつに近づいてやった。
館の主人「さあ!喜べ!お前にとびきりのプレゼントだ!」
そいつはそう言ってあかあかと輝く火かき棒を私の肩に当てた。
焦げた布の匂い、焼けた肌の匂いが鼻につくと同時に言葉では表せない激しい痛みが疾走る。
―一時間―
私は暴力に耐えた。
全身が痛い。
夜にそいつが来て気が済みまで殴られて痛みが引くまでひたすらじっとする。
その間いつも掌を見ていた。
例えばこの傷は2日前、思い切り足を踏まれ続けたときにできた傷。
こっちはナイフで切り付けられた傷。
脚は鞭打ちの傷がばかりで汚いとかフォークで刺された時はとても痛かったなとか。
そんな事をして考えて、痛みが鈍くなるまでじっと息を殺して座っている。
多分、しばらく動けないだろうな。なんて他人事みたいに呟いてうずくまっていた。
どれぐらい時間が経ったか分からなくなった頃
窓が開いて後ろから風が入り込んできた。
顔だけ向けるとそこにはギョッとした美しい子が立っていた。
少年「おい!しっかりしろ!」
美しい子は近くによってそう言ってくれた。
私は泣きじゃくりながら頼りない力で美しい子の腕にしがみついて。
女の子「痛いのはもう嫌!あいつが来るのが怖い!ここに居たく無い!でも、逃げるのも怖い!いや!もうあいつが来るのはいや!こんな事されるのも、ここに居るのも、生きてるのもいや!でも、死にたくない!災いなんて成りたくてなったんじゃないのに!こんな想いをするならいっそ生まれてこなければ良かった!」
私は子供のように泣きじゃくっていた。泣き方をはじめて知ったみたいに。
美しい子は黙っていた。
私の気が済むまで泣けと言うように。
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私が泣き止むと美しい子が口を開いた。
少年「俺は、お前の事情の一から百まで分かってやれる訳じゃ無い…。でもお前がここに居たく無い事は分かった。」
美しい子は言葉を選びながら話した。
少年「だから、…俺と一緒に星を見に行かないか?」
あまりに突飛な提案に顔を上げるとはじめてとても間近で見た彼の瞳の奥底が光っているのが分かった。
女の子「どうして、そんな、そんな、あいつは、どこまで、もおってくっのになにされっ、るかわから、ないのに」
また涙が出てきた。
館の主人の足音を思い出すだけでも怖い。
私には鉄の鎖の代わりに根強く残る体中の傷やあざ、7年分の記憶、恐怖が重たい枷になっていた。
抵抗する私を美しい子は軽々と持ち上げて片手のままにあっと言う間も無く屋敷を出た。
あいだ中怖くて痛くて彼の首にしがみついて泣いていた。
でもその夜の星空と彼の瞳の光はとてもきれいで"美しい"を着せてあげたいと思ったのだった。
次回予告
「星空の下で」
屋敷を出た二人。夏の夜空に静かに見守られて話をしましょう。今日は、せっかくの新月だもの。
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