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第1章 無能領主のリサイクルガチャ
第18話 リサイクル中にすみません、税金払ってないようです
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「リサイクル~リサイクル~」
ガルフの頭の中はリサイクル一色だった。
元は他人の領地だが、今は自分のもの。全部リサイクルしてガチャ券に変え、夢のようなアイテムを手に入れるのだ。
「ガチャ~ガチャ~」
ガチャ中毒に近づいているガルフ。
アキレスドンは鉱山地帯の視察へ出かけ、良さそうなら勝手に採掘開始。
ロイガルドとクウゴロウは生存者を探したが見つからず。
ゼーニャメイド長と賢者ナタリーはガルフに寄り添い、リンデンバルク執事長は森へラッサー将軍を探しに行った。
どうやらラッサー将軍は超幸運の持ち主らしく、そんな人材はぜひ配下にしたい。
ガルフには野望はなく、ただ能天気に領地を治めていればいい。
あとはリサイクルガチャでみんなハッピー。それで充分だ。
「神声、このバフォメット領地、生存者はいないみたいだから全部リサイクルしちゃって」
【承知、分析開始。元バフォメット領地のリサイクル品、瓦礫、家具、死体、動物、虫、植物、食べ物、服――全て土以外は回収完了】
そのときガルフは、神声の言葉の意味を理解していなかった。
全てがリサイクルされ、領地には土だけが残ったのだ。
「うへっ……」
「これはすごい!」
「あなたの力は神か!」
バフォメット領地は何もかも消えた。
ハルガドの故郷も完全に消失した。
その時、リンデンバルク執事長と民が戻ってきた。
「なんということだ!」
無精ひげを蓄えた男がラッサー将軍らしい。
彼は逞しく、そばには緑色のパーマがかった笑顔の女性がいた。
ゼーニャと同年代くらいで、鋭い瞳でこちらを見つめているが、視線の先はガルフではなく何か別のもののようだった。
「バフォメット領地がただの土と化した。激しい戦闘があったのだろう。ガルフ様、魔王討伐の任、本当にありがとうございます。ハルガド様が魔王と繋がっていたとは」
「え、どゆこと?」
リンデンバルク執事長が世界樹の酒の力で意識に語りかける。
【すみません、ラッサー将軍は一筋縄ではいかず、追加で嘘をつきました】
【そうか、分かった】
「領地は焦土ですが、1日以内に建物を復旧させます」
「なんと、そんな神のようなことが!」
「条件があります。あなたの幸運を分けてください。配下になってほしい」
「もちろんです。この領地はあなたのもの。ラマルド司祭、ジーラ、いいな?」
「私は構いません」
「わたくしもです、父上」
ジーラと呼ばれた女性はジッとガルフを見据え、何もかも見透かすような目をしていた。
「ウィンダムさん、今から来られますか?」
【ああ、問題ないよ。建物の要望を聞きつつ、資材搬入しなきゃ。20名ほど選抜して向かう】
「助かります、ガルフ様。少し話があります。こちらへ」
「は、はい」
ジーラの誘いで離れた場所へ移動する。
「すべて把握しています。私の目は光の目と呼ばれ、その人の心を映し出すのです。聖女と呼ばれますが、単なるスキルの一種です」
「やっぱりそうか」
「あなたが誤って領地を滅ぼしたことも知っています。あの麦わら帽子の人から罪悪感の光を感じますから」
「はは、見透かされていたか」
「ただ、あなたの光は二種類あり、少し気味が悪いです。灰色がかった光と、もう一つは非常に眩しくて純粋で、何かをするのが楽しみすぎている子供のような光」
「多分それは、人を殺すことだ」
「……」
「俺はなぜか何かを殺すと無性に楽しくなるんだ。武器を握るとやりたくなる」
「はは、それはすごい」
「そうか?」
「君はハルガドに忠誠を?」
「いいえ、あんな女たらしは知らない。皆が元気でいられるなら、ハルガドよりあなたを選ぶ」
「そうか。その聖女の力を貸してくれ」
「もちろんです」
「この領地の統治はラッサー将軍とラマルド司祭と君に一任したい」
「いえ、私はあなたのそばで働きたい」
「え?」
「こんな女は邪魔か?」
「そんなことはない。ジーラの目は助かる。ただ無能扱いされる俺のそばにいるともっとバカにされる」
「慣れてますよ。ラッサー将軍は父上。幸運すぎて生き残り、バカにされてきましたから、そんな娘がバカにされないわけがない」
「そ、そうか」
「よろしくお願いしますね」
「はは、善処するよ」
ラマルド司祭とラッサー将軍、ゼーニャ、賢者ナタリーが近づいてくる。
「さて、父上、ラマルド司祭、私、ガルフ様に嫁ぎました」
「ちょ」
「な、なんですとおおおおお!」
「ガルフ、ちょっと来なさい」
「が、ガルフ様?」
「聞いてないよおおおおお!」
その日、ガルフは修羅場を知った。
「なら、私もガルフと婚約する!」
「頭が追いつかない」
「えっと、私も!」
賢者ナタリーまで加わる。
「これは、まさか……」
リンデンバルク執事長が何か思いついたように囁いた。
「ハルガドの呪いかもしれない」
女だらけのハーレムを築き、大陸統一を目指した男、ハルガド領主はどこかへ消えた。
その居場所を知る者はいない。
【ガルフ様、大変です。本国より使者が来て、税金を払っていないため、王国騎士団が徴収に向かいます!】
「え、ええええええええええええ!」
どうやら父上はすべてを無能な領主の自分に丸投げするつもりらしい。
せめて税金くらい払ってくれと願うばかりだった。
その情報をくれたのは、軍師担当で人々に知識を伝える天使王ババスだった。
ガルフの頭の中はリサイクル一色だった。
元は他人の領地だが、今は自分のもの。全部リサイクルしてガチャ券に変え、夢のようなアイテムを手に入れるのだ。
「ガチャ~ガチャ~」
ガチャ中毒に近づいているガルフ。
アキレスドンは鉱山地帯の視察へ出かけ、良さそうなら勝手に採掘開始。
ロイガルドとクウゴロウは生存者を探したが見つからず。
ゼーニャメイド長と賢者ナタリーはガルフに寄り添い、リンデンバルク執事長は森へラッサー将軍を探しに行った。
どうやらラッサー将軍は超幸運の持ち主らしく、そんな人材はぜひ配下にしたい。
ガルフには野望はなく、ただ能天気に領地を治めていればいい。
あとはリサイクルガチャでみんなハッピー。それで充分だ。
「神声、このバフォメット領地、生存者はいないみたいだから全部リサイクルしちゃって」
【承知、分析開始。元バフォメット領地のリサイクル品、瓦礫、家具、死体、動物、虫、植物、食べ物、服――全て土以外は回収完了】
そのときガルフは、神声の言葉の意味を理解していなかった。
全てがリサイクルされ、領地には土だけが残ったのだ。
「うへっ……」
「これはすごい!」
「あなたの力は神か!」
バフォメット領地は何もかも消えた。
ハルガドの故郷も完全に消失した。
その時、リンデンバルク執事長と民が戻ってきた。
「なんということだ!」
無精ひげを蓄えた男がラッサー将軍らしい。
彼は逞しく、そばには緑色のパーマがかった笑顔の女性がいた。
ゼーニャと同年代くらいで、鋭い瞳でこちらを見つめているが、視線の先はガルフではなく何か別のもののようだった。
「バフォメット領地がただの土と化した。激しい戦闘があったのだろう。ガルフ様、魔王討伐の任、本当にありがとうございます。ハルガド様が魔王と繋がっていたとは」
「え、どゆこと?」
リンデンバルク執事長が世界樹の酒の力で意識に語りかける。
【すみません、ラッサー将軍は一筋縄ではいかず、追加で嘘をつきました】
【そうか、分かった】
「領地は焦土ですが、1日以内に建物を復旧させます」
「なんと、そんな神のようなことが!」
「条件があります。あなたの幸運を分けてください。配下になってほしい」
「もちろんです。この領地はあなたのもの。ラマルド司祭、ジーラ、いいな?」
「私は構いません」
「わたくしもです、父上」
ジーラと呼ばれた女性はジッとガルフを見据え、何もかも見透かすような目をしていた。
「ウィンダムさん、今から来られますか?」
【ああ、問題ないよ。建物の要望を聞きつつ、資材搬入しなきゃ。20名ほど選抜して向かう】
「助かります、ガルフ様。少し話があります。こちらへ」
「は、はい」
ジーラの誘いで離れた場所へ移動する。
「すべて把握しています。私の目は光の目と呼ばれ、その人の心を映し出すのです。聖女と呼ばれますが、単なるスキルの一種です」
「やっぱりそうか」
「あなたが誤って領地を滅ぼしたことも知っています。あの麦わら帽子の人から罪悪感の光を感じますから」
「はは、見透かされていたか」
「ただ、あなたの光は二種類あり、少し気味が悪いです。灰色がかった光と、もう一つは非常に眩しくて純粋で、何かをするのが楽しみすぎている子供のような光」
「多分それは、人を殺すことだ」
「……」
「俺はなぜか何かを殺すと無性に楽しくなるんだ。武器を握るとやりたくなる」
「はは、それはすごい」
「そうか?」
「君はハルガドに忠誠を?」
「いいえ、あんな女たらしは知らない。皆が元気でいられるなら、ハルガドよりあなたを選ぶ」
「そうか。その聖女の力を貸してくれ」
「もちろんです」
「この領地の統治はラッサー将軍とラマルド司祭と君に一任したい」
「いえ、私はあなたのそばで働きたい」
「え?」
「こんな女は邪魔か?」
「そんなことはない。ジーラの目は助かる。ただ無能扱いされる俺のそばにいるともっとバカにされる」
「慣れてますよ。ラッサー将軍は父上。幸運すぎて生き残り、バカにされてきましたから、そんな娘がバカにされないわけがない」
「そ、そうか」
「よろしくお願いしますね」
「はは、善処するよ」
ラマルド司祭とラッサー将軍、ゼーニャ、賢者ナタリーが近づいてくる。
「さて、父上、ラマルド司祭、私、ガルフ様に嫁ぎました」
「ちょ」
「な、なんですとおおおおお!」
「ガルフ、ちょっと来なさい」
「が、ガルフ様?」
「聞いてないよおおおおお!」
その日、ガルフは修羅場を知った。
「なら、私もガルフと婚約する!」
「頭が追いつかない」
「えっと、私も!」
賢者ナタリーまで加わる。
「これは、まさか……」
リンデンバルク執事長が何か思いついたように囁いた。
「ハルガドの呪いかもしれない」
女だらけのハーレムを築き、大陸統一を目指した男、ハルガド領主はどこかへ消えた。
その居場所を知る者はいない。
【ガルフ様、大変です。本国より使者が来て、税金を払っていないため、王国騎士団が徴収に向かいます!】
「え、ええええええええええええ!」
どうやら父上はすべてを無能な領主の自分に丸投げするつもりらしい。
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