Inventory Kingdom ~僕の収納は国家規模!~

AKISIRO

文字の大きさ
17 / 36

第16話 記憶の旅路、若き老兵立つ

しおりを挟む
 リードは誰かの若者になっていた。
 その若者は真っ直ぐに何かを見据えていた。
 そこに広がるのは無数の軍勢。
 どこぞの国なのだろう。
 リードが追体験していたのは、ジョードス村長の若き頃、ジャヴァ王国の将軍だった頃だった。

「ふざけるな、なぜ、魔女バルが俺に惚れたんだ」
「知らぬ、この第一剣王ジャドールが言うんだ、バルはお前に惚れた。霧王としての立場からも言うぞ」
「お前は実験の成果で、体を霧にしてしまって永遠の命を手に入れたそうだが、それもバルの力か!」
「そうだ。魔女バルの知識があったからだ、その約束でお前を紹介する事になった。今着ているぞ」
「魔女バルは世界の終わりの魔女を作り出し、そのデルと呼ばれた女性を裏切ったと伝承にある。デルは勇者の女だぞ、俺はいつか勇者様が生まれ変わったら忠誠を誓うつもりなんだ」

 黒い髪の毛、ふさふさの髭。
 今のジョードス村長は若いようだ。しかも、ジャドールとは霧王だったようだ。
 彼は魔女バルの力で霧王としての力を手に入れたようだ。
 そんな歴史があったのだとリードが感じていると。

「ジョードス様、どうかわたしをお嫁にしてください」
「無理だ。魔女バル、お前は人として終わっている。一体何人の魔女を裏切り殺して来た?」

「ち、違うのです、あれは私がやったのではなく、もう一人の私がやったのです」
「現実逃避をするな、バル」

「違いますわ、私はバルです。光のバルでございます。闇のバルはもう一人の私です。私の中にもう一人いるんです」
「意味が分からぬ」

「ジョードス様、あなたに子供の頃命を救われてずっと胸に秘めていた気持ちを受け取って欲しかったのですが」
「さっさと去れ」

「光のバルがこう言ってんだから、少しは振り向いてもよくね?」

 その声はとてもどす黒くなった。
 魔女バルの周りに闇の様な塊が蠢きだした。
 
「お、お前、さっきと」
「うぉい、ジョードスよおおお、光のバルがせっかく思い続けていたんだから振り向いてもいいじゃねーかよおおお、お前はただじゃ死なせねーよ呪いだ。永遠に死ねぬ体にしてやろう、老いは続くぞ、だがな、殺されないと死なない」

「ふ、ふざけるなああああ」

 ジョードス村長の体が闇のように覆いつくされていく。
 その時戦争が始まった。

 消え去った魔女バル。
 第一剣王の霧王ジャドールは申し訳なく頭を下げ、2人は戦場を駆け巡った。
 そうして、勝利した後、ジョードス村長はジャヴァ王国の王様に辞表を叩きつけて、ハイビカス山の麓で村を作って隠居した。

 来る日も来る日も戦った。
 だが殺される事無く相手を倒しまくった。
 老い老いを続けた。
 楽に死ぬ事が出来ない。
 何度、太陽とお月様を見てきただろうか。
 何度呼吸を繰り返しただろうか。

「勇者リードよ、お前に忠誠を誓おう」

 その時だ。リードは現実に意識が戻った。
 アイテムボックスの中で何かが生まれた。
 そして、それをアイテムボックスから取り出した。

 デルは眠り続けている。
 ミシェル達は意気消沈しながら、ただただ空を見上げて雄たけびを上げている。

「うぉい、何泣いておる」
「だって、師匠が死んじまったって、あれ? 師匠てか、ウサギの姿」

 そこにはウサギの人形のようなものが立っていた。
 リードは思い出す。
 そのウサギの人形は遥か昔、子供の頃にアイテムボックスにしまった人形であったという事に。

「そうじゃのう、わしの死体と魂がこのウサギの人形に合体しちまったようじゃ、この人形手足の指まであるからブレイカーソードは持てるじゃろうな」

「ぎゃははははっはははは」
 
 さっきまで泣いていたミシェルが突然笑いだす。
 彼は腹を抱えてその場で転がりまわっている。

「笑うな、可愛いじゃろうが」

「これからウサギさんて呼ぶぜ」

「村長ウサギでもいいぞ」

「よし、村長ウサギさん、これからソード王国に引越そう、もうこの村はぼろぼろでダメだ」

「おうよ」

「あのー話が進んどる所申し訳ないが、ソード王国に皆移動を始めているぞ」

 ガストン教授が手を上げる。

「皆の心変わりが速いですね」

 リードが苦笑を漏らしている。
 そんな彼もまさかウサギになって生き返ってくるとは思わずに笑いをこらえる。

「じゃあ行きますか」

 デルを背負いながら、背中にとても柔らかい物が当たっているのを感じていた。
 リードはそれが胸である事を認識すると少し恥ずかしくなったが。

 デルに何があったのかは分からないけど、魔女バルには二つの人格がいるようだ。
 それは光と闇。
 おそらく光が普通のバルで、闇がデルを裏切ったり、ひどい事をしてきたのだろう。

 その真実をデルに伝えるべきか悩みながら、リードはソード王国へと皆で移動を始めた。
 その時、古代機械都市ダンジョンが鼓動を始めて、大地から動き出したのを、わずかにリードは感じていた。
 メロカのAIがソード王国を本来の形にすべく、古代機械都市ローゴを起動させたのだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...