RPG戦記~異世界最弱から最強のロールプレイング~

AKISIRO

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第1章 灰色狼の王国

第6話 王の懇願、英雄ごっこ

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 空を埋め尽くしていた『鋼鉄の聖天使(アイアン・エンジェル)』の軍勢は、数千体の残骸を地上に晒し、撤退していった。 

 決定打となったのは、バッシュとパーカーの異常な突撃だった。死ぬたびに鉄の皮膚と超音速の反応速度を獲得していくバッシュが「盾」となり、その背後からパーカーの黒刀が聖天使たちの核を正確に刈り取っていく。

 撤退の間際、巨大な母船の甲板に一人の影が立った。  他の個体とは一線を画す、六枚の鋼鉄翼。頭上には光り輝く演算回路の輪。

「……個体名バッシュ・ブラッドリー。およびデッド・パーカー。不確定要素の増大を確認。これより本星は『浄化対象』から『征服対象』へ移行する」 

 冷徹な声が都に響く。 

「私は天使長ミカエル。再びの降臨を待て。その時、この星のロールプレイングは終了する」

 銀色の閃光と共に、空の穴は閉じ、静寂が訪れた。あとに残ったのは、燃える街と、夥しい数の

「バッシュの死体」だけだった。

「……あーあ、行っちまった。あいつを殺せば、レベルが30は上がっただろうに」 

 パーカーが血と油の混ざった刀を鞘に収め、不満げに吐き捨てる。 
 バッシュは、数歩先に転がっている「先ほど死んだ自分」の腕を跨ぎ、黒い剣を担ぎ直した。

「バ、バッシュ……様……」 

 瓦礫の中から這い出してきたのは、ギルドマスターのギフターズだ。右腕を失い、顔面を焼かれた彼は、かつての「荷物持ち」に対し、今や神を拝むような目で縋り付いた。

 「王が……我が国の国王陛下が、貴殿を呼んでおられる。どうか、この国を……灰色狼の王国を救っていただきたい!」

◇灰色狼の王国・謁見の間◇

 かつては荘厳だった王城も、聖天使の爆撃によって天井に大きな穴が開いている。 

 玉座に座る国王ウルは、震える手で膝を叩いていた。その周囲には、生き残ったわずかな近衛騎士たちと、そして――隅の方で小さくなっているミリエルたちの姿があった。

「おお、そなたがバッシュ・ブラッドリーか!」 

 王が立ち上がり、バッシュを迎え入れる。だがバッシュの足取りは尊大で、王の前で膝を突くことすらしなかった。 

「無礼者ッ! 王の前だぞ!」  

 騎士の一人が剣を抜こうとしたが、バッシュの隣に立つパーカーが「……殺すぞ?」と一言漏らしただけで、その騎士は蛇に睨まれた蛙のように硬直した。

「いい、構わぬ! 今は礼節よりも実力がすべてだ」  

 王は必死な形相でバッシュを見つめた。 

「バッシュ殿、聞き及んでいる。そなたは死を超越した肉体を持ち、あの天の軍勢を追い払ったと。見ての通り、この世界は今や狂っている。魔王が、異世界の勇者が、我らの領土を切り刻もうとしているのだ」

「……で、俺様に何をしろと?」 
「救ってほしいのだ! 我が国の軍事顧問として、迫りくる異世界の軍勢を調停し、この国を護る盾となってくれ! 望むなら公爵の地位も、そして……」  

 王は一瞬言葉を切り、部屋の隅にいるミリエルを指差した。 

「そなたを裏切ったというあの冒険者共の処遇も、すべてそなたに任せよう。煮るなり焼くなり好きにするがいい。だから、どうか!」

 
 王の言葉に、ミリエルの顔が絶望に染まる。かつて彼女がバッシュを「クラン追放」したように、今度は王が自分たちを「バッシュへの生贄」として差し出したのだ。

 バッシュは、かつて自分が憧れ、そして絶望した「王宮」の光景を冷めた目で眺めていた。  ペンタラゴンが、バッシュの脳内で低く笑う。 

【ククク……どうする、バッシュ? 王の飼い犬になって『英雄ごっこ』を始めるか? それとも、この国ごとすべてを食い潰すか?】

 バッシュはゆっくりとミリエルの方へ歩み寄った。 

 彼女はガタガタと震え、バッシュの視線から逃れるように床に額を擦り付ける。 

「ご、ごめんなさいバッシュ! あの時は魔物が怖くて、つい……! 許して、なんでもするから、お願い!」

 バッシュはその声を無視し、王に向き直った。 

「救ってくれ、か……。あんた、勘違いしてねえか?」

 バッシュは黒い剣を、玉座の目の前の床に突き立てた。 

「俺様は『調停者』だ。誰かの味方をするために戻ってきたんじゃねえ。この世界がぐちゃぐちゃになったのは、この剣を引き抜いた俺のせいだ。なら、俺がやるべきことは一つしかねえ」

 バッシュはパーカーを一瞥し、そして王に向けて言い放った。

 「この国も、魔王も、異世界の軍勢も……俺の目の前で勝手に動く奴は、全部俺の『ルール』に従わせる。救ってやるんじゃねえ。俺様が、この世界の主導権(コントローラー)を奪い取るだけだ」

 王宮に戦慄が走る。 
 バッシュの言葉は、守護者の宣言ではなく、独裁者の宣告だった。   
 その時、再び大地が激しく揺れた。  聖天使の襲撃は序の口に過ぎなかった。北の魔王領から、そして南の異世界門から、さらに強大な「個体」たちが、この王国を目指して動き始めていた。







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