異世界⇔現実 両方やってます商店 ~商売で成り上がってレベルアップ!~

AKISIRO

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第1話 奇妙な扉(ゲート)

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 加藤学──三十歳。
 三度の飯より三Dモデリングが好きな男だ。
 3Dソフトで作ったモデルをダウンロード販売し、なんとか食いつないでいる。
 世間的には「在宅ワーカー」という響きがかっこよく聞こえるかもしれないが、実際は実家暮らしで、近所のスーパーの見切り品が主食の、どこにでもいるおっさんである。
 実家はリサイクルショップを営んでおり、俺も時々手伝いをしている。
 そんな平凡な日常に、突如として“非日常”が割り込んできた。

「学、倉庫の掃除してきて!」

 母の一声で渋々倉庫に向かった俺は、埃をかぶったガラクタをかき分けながら奥へ奥へと進む。
 そのときだった──

「……なんだこれ?」

 壁際に立てかけられた、大きな木製の扉。
 いや、扉だけなら珍しくない。問題は、その扉が明らかに場違いなほど古めかしく、まるで中世ファンタジーの城門を切り取ってきたような造りをしていたことだ。
 俺の記憶を探っても、こんなものが家にあった覚えはない。

「開けてみるか」

 ガチャリ、と金属の取っ手を回すと──
 ……そこは山だった。
 いや、意味がわからない。
 倉庫の奥に山が広がっているわけがない。
 青空、鳥の鳴き声、そして鼻に抜ける新鮮な草の匂いまで感じられる。
 振り返ると、背後は岩山の裂け目になっており、扉の枠ごと異世界の空間に嵌め込まれているようだ。

「……マジで異世界?」
 好奇心が勝った俺は、足を一歩踏み出した。
 そこには鬱蒼とした森と、見たこともない植物が生い茂っている。

 試しにスマホを取り出し、近くの草を撮影してみる。
 すると──

【エリクサ:ランクS】

 画面に、まるでRPGの鑑定結果のような文字が浮かび上がった。
 しかも足元を見渡すと、その“エリクサ”とやらが雑草レベルで群生している。

「おいおい、これ高級回復薬とかそういうやつじゃないのか……?」

 異世界ビジネスの可能性が、脳内で一気に膨れ上がる。
 ……と、そのとき。
 茂みの奥から、腰パンの緑色の小人が棍棒を振り上げて突撃してきた。

「ゴブリン!? 本物!?」

 慌てて引き返し、扉を閉める。
 心臓がバクバク鳴り、膝がわずかに笑っていた。

「……面白いことができそうだ」

 ひとまず頭を冷やそうと倉庫を出ると、扉の足元に紙切れが落ちているのに気づいた。
 拾い上げると、見覚えのある名前が目に入った。

『加藤博』

 ……俺の父親だ。
 そして、その下にはこう書かれていた。


【ちょいと世界を救ってくるぜ。勇者ってやつをやってくんで、後は頼んだ。この扉のことは内緒な】
「……あのバカ親父、ガキの俺を置いて勇者デビューかよ」

 父は俺が五歳のときに行方不明になった。
 それがまさか異世界で勇者稼業をやっていたとは……。
 生きているのか死んでいるのかすら分からないが、少なくともこの扉は、俺への遺産みたいなものらしい。

「さて……まずは武器だな」

 幸い、ここはリサイクルショップ。武器になりそうなガラクタはいくらでもある。

「母さん、武器っぽいのある?」
「学! まさか銀行強盗でもする気じゃないでしょうね!?」

 天然パーマの母が腕を組み、ロゴ入りエプロン姿で俺を睨む。
 その迫力は、下手なゴブリンより怖い。

「いやいや、熊と戦おうと思って……冗談だよ。異世界で使うんだ」
「何言ってるのか分かんないけど……あそこに競技用のアーチェリーと、売れ残りの木刀があるよ。どうせ処分するだけだし持っていきな」
「お、助かる!」

 俺は木刀とアーチェリーを手に入れた。
 弓道部経験あり、剣道も少しかじったことがある。
 武器の扱いはそこそこ自信がある。

 リュックを三つ背負い、袋を大量に詰め込む。
 狙いはもちろん、あのエリクサだ。

「リベンジだ!」
 扉を開くと、案の定、さっきのゴブリンが暇そうに突っ立っていた。
 俺は岩陰から弓を引き絞る。
 矢が真っ直ぐに飛び、ゴブリンの額に突き刺さった。
 バタリ──。
 奴は悲鳴を上げる間もなく絶命し、血が地面を赤く染める。

【レベル5になりました。ジョブを選択できます】

 脳内に響く機械的な声。
 視界の端に、ステータス画面のようなものが現れた。
 そこには“勇者”“戦士”“魔法使い”など、ゲームでお馴染みのジョブがずらりと並んでいる。
 だが、俺が選んだのは──

「よし、これだな。商人!」

 勇者? 戦士? そんなのどうでもいい。
 欲しいのは金を稼ぐ力だ。

【スキル:交渉】【スキル:商店経営】【スキル:商店拡張】【スキル:商品倉庫】【スキル:鑑定】
 これが俺の新しい武器。
 このスキル、現実でも使えたら……。
 口元が自然と吊り上がった。
 胸の奥で、リサイクルショップのおっさんから二世界の商人へと変わる予感が、静かに芽生えていた。



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