異世界⇔現実 両方やってます商店 ~商売で成り上がってレベルアップ!~

AKISIRO

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第10話 幽霊の出る商店

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「こちらになります」

 執事風の男が恭しく案内してくれる。
 重厚な扉の前で立ち止まり、軽くノックをすると、低い声で応答があった。

「旦那様はちょうどお暇でした。本来ならば予約が必要ですが……今回は特別に」
「あ、すみません」

 俺が頭を下げると、扉が静かに開かれた。
 中に入ると、広い応接室に鎮座するように、大柄な男性がゆっくりと姿を現した。
 鋭い眼光をこちらに走らせた後、落ち着いた動作で椅子に腰を下ろす。

「――まぁ、座り給え」

 重々しい声に促され、俺とガル、ナナミーは恐る恐る席に着いた。

「わしはマルロード卿。この街を治める領主だ。……話によると、商店を購入したいそうだな」
「はい。900万メトムを持参しています」
「ふむ」

 マルロード卿は口元を緩め、こちらを値踏みするように見つめる。

「だがな。この街で1,000万メトム以下で買える物件は――幽霊が出る、あそこしかないぞ? 三千万出せば、立派な商店を買えるが……」
「構いません。むしろ幽霊が出るなら、それは面白そうだ」
「……ほう」

 一瞬、領主の目が愉快そうに光った。
 次の瞬間、大きな声で笑い出す。

「ふははははっ! 気に入った! そうでなくては人間は面白くない」

 彼は机の引き出しから分厚い羊皮紙を取り出し、俺の前に差し出した。

「これがその商店の権利書だ。大事に保管しておくがいい」
「ありがとうございます」

 俺はそれをリュック――商品倉庫にしまった。
 鑑定するとちゃんと「権利証書:商店」と出たので、商品として扱えるらしい。

「さて……これは噂だが、勇者が魔王領で暴れている。異界の門を守っているらしい。もし開けば、どこか別の世界と繋がり、大惨事だ。勇者パーティーと魔王の決着も近いと聞く。そうなれば戦争が減り、戦闘奴隷も減るだろう」
「……そうですか」

 俺は心の奥で苦く笑った。父は勇者と共に戦ったはずだ。血のにじむような努力を、誰も知らないままに。
 マルロード卿はさらに声を潜める。

「もう一つ噂がある。終末の傭兵団が暴れている。この街にも構成員が入り込んでいるとか。――目を付けられるなよ」
「終末の傭兵団?」
「見分け方は簡単だ。やつらは十字架のアクセサリーを身につけている。……覚えておけ」
「感謝します」
「うむ。では、良き商品を売るがいい」

 それだけ言い残し、マルロード卿は再び椅子にもたれた。

 鷹の眼を発動し、権利書に記された場所を確認する。
 街の一角、通りからでも目立つほど大きな店があった。

「……これが俺たちの店か」

 石造りの壁、立派な看板跡。かつては貴族の屋敷兼商店だったらしい。
 窓ガラスは割れ、埃が積もっていたが、威厳は健在だ。
 中に入ると――

「すごい……!」
 ナナミーが感嘆の声を漏らした。
 整然と並んだ棚、薬瓶を置くための木枠、地下には広い倉庫。さらには錬金術の作業場、そして鍛冶場まで。
 生活区画には十もの部屋があり、それぞれに柔らかなベッドが完備されている。
 ガルはベッドに腰を下ろし、思わず「ふかふかだ……」と目を細めた。

「――よし。掃除を始めよう」
「はい!」
「わかった」

 三人は一斉に動き出した。
 ガルの怪力で壊れた家具を運び出し、ナナミーは窓を磨き、俺は商品倉庫から雑巾や洗剤を取り出してひたすら拭く。
 超人じみた力と根性で作業を続け、二時間後には見違えるほど清潔な商店が姿を現した。

「うわぁ……ぴかぴかです!」

 ナナミーが両手を胸に当て、笑顔を輝かせる。

「これなら立派に店として使えるな」

 俺も頷いた。

「だが、並べられる商品は野菜しかない」
「それなら私が看板娘を務めます!」
「心強い。ガルはナナミーの護衛を頼む」
「承知しました」
「俺は村との往復だな。三日の距離を二時間で走れる。迷わないよう地形も頭に入れてある」
「そんなに速く……」

 ナナミーがぽかんとする。

「野菜の値段は任せた。――そして俺は奴隷を買いに行く」
「やはり……」

 ガルの顔が曇った。

「この街には三人の獣人の子ども奴隷がいた。彼らを助けたい」
「マナブさん……奴隷は大変です。子供は特に。大人を憎んでいる者もいる」
「それでもだ。大人が子供を助けなければ、誰が助ける?」

 静かな言葉に、ガルは押し黙り、やがて頷いた。

 奴隷市場へと足を運ぶ。
 そこではちょうど、三人の獣人の子供――二人の少女と一人の少年が競売にかけられようとしていた。
 怯えた瞳が、無数の買い手たちを恐怖に満ちて見上げている。
 その瞬間、俺は手を挙げた。

「――三人まとめて、三千万メトムで買う!」

 広場がざわめきに包まれる。
 突如現れた大金持ち、正体不明の商人。
 その噂は、瞬く間に街中へと広がっていった。
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