年上イケメン彼女と頼られたい年下彼氏

木風 麦

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デートの予定の建て方〈彼方語り〉

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 彼女ができてから、デート先はカフェだ。
 いや、正直デートじゃない気がする。
 なぜかというと、まず俺のバイト先。そして彼女の憩いの場。加えてほぼ毎日通っているから約束を取り付けているわけじゃない。
 要は親しい友人の延長線だ。
 だから、たまにはどこか二人で別のところに行きたい!
 カフェ以外で!
「··········あの、麻井さん」
 コーヒーを優雅に飲む彼女に声をかける。
「ん、なぁに?」
 くりっとした目が俺を捕える。
 ああもう、綺麗すぎ!可愛すぎ!
「その、えーと·····どっか行きたいとこある?」
 笑顔で女任せにするという·····。愚行ですね。知ってます。
 すると彼女は柔らかく微笑んで言った。
「君の行きたいところに行きたいな」
 それモテる男がサラッと言う台詞!
 思わず頭を抱える。
「や、その·····うーん」
 彼女の行きたい場所がわからない。
 どうせなら彼女が楽しんでくれる所へ行きたい。
「··········麻井さん、行きたいところない·····?」
 角度的に上目遣いになってしまう。
 これじゃ子供感満載。駄々をこねる子供と同じことをしている気がする。
「うーん。·····別に無いかなぁ。欲しいものは揃ってるし」
 そう言いながらカフェ自慢の「ガトーショコラ・ガナッシュ入り」を口に運ぶ。
「えぇ·····まぁ、そうなんだけど··········。」
 デートらしくないじゃん!気にならないのか?
 それともやっぱりデートとかを考える相手じゃなかったって思ってるのか。
 少しふてくされる。
「私は君が居るならどこだっていいんだけど、君はそうじゃないの?」
 と不思議そうに聞いてきた。
 だから!台詞!それ俺がサラッと言えたら良いやつ!
「いや、だって·····!デート·····とか··········したい」
 決まらない。やっぱりどうしてこう、もにょもにょと喋ってしまうのか。なぜ彼女みたくサラリとカッコよく決められるのだろうか。
「君がいれば全部デートでしょ?カフェでもなんでも。」
 なんで赤面せずに言えるの!?
 大人だから!?年の差ってここで浮き彫りになるものなの!?
 頭をテーブルに打ち付けたくなる衝動を抑えて「ソウダネ」と言う。
「·····それより、君にして欲しいことがあるのよね」
 カタン、とフォークを置く。
 何時になく真剣な瞳で俺を見つめる。
 え、これ振られるパターン?いやいや、さっきの発言からしてそれは··········。
「別れてよ」
 まじで?
 頭パーン。
 脳みそパーン。
 ついでに今の発言の記憶もパーンしてほしい。
 その代わりに思考回路がパーンしている。
「わか、わかわかわかれれれれ??」
 動揺して噛みすぎた。
 コホン、と咳払いをする。
 二人同時に口を開いた。
「··········俺が、高校生だから?」
「君がそんなに節操なしとは思わなかった」
 は?
 きょとんとする。
 彼女も同じ表情だ。
「·····節操なしって、俺、麻井さん一筋」
 片言。
「俺は君以上に好きな人なんて今まで会ったことがない」
 そう言いたかった。
 それが回り回って「俺、麻井さん、一筋」になってしまう。
「··········昨日、一緒に帰っていた子は?」
「え、あれ男っ」
 俺の顔は今までになく真っ青だったのではないだろうか。
 確かに美男子の友達と帰っていた。だがホモになる気は無い。
「俺は!麻井陽菜以外の人間に興味は無いです!」
 つい怒り口調になってしまった。
 彼女は目を丸くしている。
 やばい、強く言いすぎた?
「あの、ごめんなさい·····その」
「·····もう一回」
「は?」
「もう一回言って?」
 彼女は真剣な眼差しで身を乗り出してきた。
 多分今顔真っ赤になってる。
「·····お、俺は·····麻井陽菜以外·····」
「そこだけもう一回」
「え?えー·····おれは麻井陽菜·····」
そこだけ・・・・もう一回」
 あ、これ恥ずい。
 彼女の意図がようやくわかった。
 いや、でも、これは··········。年上相手にこれは··········。
「··········呼んでくれないの?」
 シュンと彼女が項垂れる。
「ひ、陽菜っ··········!」
 あーもー!その顔弱いって絶対バレてる!
「··········やっぱり、陽菜さん·····で、いい?」
 格好つかない。本当にダサい。
 同年代なら堂々と「陽菜」と呼べただろうに。
 やはり年の差がキツい。
「名前で呼んでくれるならどっちでも。ねぇ、彼方君はどこに行きたいの?」
 サラッと呼ばれたわ。
 え、俺の恥ずかしいあの頑張りって一体·····?
「·····陽菜さんが、笑ってくれるところ」
 顔を見て言えない。
 チキンだ。
「·····じゃあ、彼方君が選んでね」
 笑いを含んだ彼女の声が耳をくすぐる。
「彼方が、私のこと笑顔にしてよ。」
 う、と声が漏れる。
「··········頑張る」
「うん。楽しみにしてるね!あ、その日は何としても仕事入れないでおくね。いつがいいかなぁ」
 浮き立った声でスケジュール帳をパラパラと捲る。
「んー、·····プラン立てたいから、再来週の日曜日は?」
 俺が提案すると、彼女は満面の笑みで「おっけー」と指で「マル」の形を作る。
 その仕草もいちいち可愛い。
「じゃあ、その日を楽しみに仕事頑張ってくるわ」
 カタンと席を立つ時の彼女の表情はもう「デキる社会人」そのものだった。
 そして極めつけは··········。
「じゃ、そのデートの予定建ててくれる代としてお支払い済ましとくね」
 イケメンすぎるって。
 むしろ俺がお支払いしたい側!社会人だから!?
 最後のその発言なければ!ふつーにカップルみたいだったのに!
 一人残された俺はスマホ片手にアイスキャラメルマキアートを飲み干した。
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