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出掛けた先〈陽菜語り〉
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ちょっと意外だった。
楽しみにしていたデート。訪れた場所は動物園。
らしいと言えば、らしい·····のか?
動物園は実はあまり得意ではない。
昔の記憶があると、どうしてもその時期のことと混同したりしてしまう。つまり、貧乏でいつもお腹がすいている生活と混同し、そこらを歩いてる鳩が美味しそうに見えたりする。
動物園なんて食べ物の宝庫だ。
流石にこの年齢になるとそんなことを口に出したりはしないけど。
小学生の遠足ときに動物園に行ったのだ。うさぎの触れ合いコーナーに連れていかれた時、私はうさぎをひょいと捕まえて、「美味しそう」と言った。
かわいそうだよ、とみんな言うけど、私からすればご馳走なのだ。価値観の違いが浮き彫りになる。
そんなふうに見てるからか、私は動物から好かれない。
ショックじゃない、わけではないけど、仕方ないと思えてしまうのも精神年齢が異常に長いからかな。
「あさ·····陽菜さん。あっちにペンギンいるって」
すぐさまワクワクしたような彼の表情を見るのが今日の目的になる。
目を小さな子供みたいにキラキラ輝かせて本当に可愛い。
じっと見てるのがバレたのか、彼方君が頬を赤らめながら「え、何··········?」と少し後ずさる。
「んー?いや··········愛しいなぁと」
素直な感想を口にすると、ほら。
顔真っ赤にしながら言葉を模索してる。
思わず笑いがこみ上げてくる。
やっぱり楽しい。彼方君が一緒に居ればどこだって。
私が言ってたこと、間違ってなかったみたいだ。
「じゃあ行こうか」
そう言ってさり気なく手を繋ぐ。
だって恋人らしいことなんてまだ一つもやってないし。
これくらい、いいよね?
ただでさえ年が離れて姉と弟みたいに見えてしまうんだから、少しは恋人なんだってことを自覚したい。
実感が欲しい。目に見える絆みたいなものが無いから。
ペンギンコーナーに行くと、小さい子たちがキャッキャとはしゃいでいる。
「鳥なのに飛べない鳥がいるらしいよ」
向日葵が鮮やかに咲くのを一望できる秘密基地で、二人の落ち合う場所。そこで彼は色々なことを教えてくれた。
海という塩がいっぱい含まれた水が、私たちに把握できないほど遠くまで広がっていること。その一方で、砂が一面に敷かれて黄色い絨毯になる所もあるとか。
そして、ある日彼はペンギンについて教えてくれた。
白と黒の模様で、愛らしい姿をしているんだとか。
「なんだか、俺と似てるんだよね」
切なく笑った彼の横顔を見て、思わず「何でよ」と聞き返す。
「俺は、好きなように生きることを許されない立場だから。飛ぶことを許されない鳥と、似てるだろう?」
全てを諦めたように言うものだから、私は思い切り怒りたかった。カルタらしくないって。
でも出来なかった。
その自由を掴むのが、どれだけ大変なことか、不可能に近いことか、わかっていたから。
「·····陽菜さん?」
気遣うような眼差しに、思わずはっと意識を覚醒させる。
「大丈夫?具合悪い?」
心配そうに覗き込む彼方君に慌てて笑顔を向ける。
「大丈夫!ちょっとぼーっとしてただけだから」
「それって大丈夫なの·····?」
なおも心配そうな表情をする彼方君の横を、一匹のペンギンがスイッと通り過ぎた。
「··········かわいいねぇ」
誤魔化すようにガラスに近寄る。
「ペンギンって、何か似てる気がする」
え、と固まった。
「··········飛べないのが、決まってるみたいにさ。··········歳も変えられないからなぁ」
聞こえないように呟いたつもりなんだろうけど、丸聞こえだよ·····。
今度は不可能に近い、じゃなくて、不可能、な所が同じなのね。何でそう、毎回記憶と重なることばかりを言うのだろう。私は少し怒りにも似た感情が湧くのを感じた。
だって、似てるとこさえなければ··········私はこんなに悩まなくても良いのに、なんて考えてしまう。
そうだね、なんて相槌は打ちたくなかった。
「··········平均寿命って、男の人の方が短いんだよね。」
すっとガラスから離れて、彼方君の手を再びとる。
「男の人が年下の方が、一緒に居られる時間が長いよね」
出会って七年ではい、さよなら。なんてことにはもうしたくない。今度は私が先に死にたい。
まぁ、その前に別れたらそんなことすら考える意味が無くなるわけなのだけど。
物騒なことを考えていた時だった。
「··········陽菜?」
彼方君よりも低い声が私の名を呼んだ。
声のするほうを振り返ると、職場の同僚が驚いた顔してそこに居た。
楽しみにしていたデート。訪れた場所は動物園。
らしいと言えば、らしい·····のか?
動物園は実はあまり得意ではない。
昔の記憶があると、どうしてもその時期のことと混同したりしてしまう。つまり、貧乏でいつもお腹がすいている生活と混同し、そこらを歩いてる鳩が美味しそうに見えたりする。
動物園なんて食べ物の宝庫だ。
流石にこの年齢になるとそんなことを口に出したりはしないけど。
小学生の遠足ときに動物園に行ったのだ。うさぎの触れ合いコーナーに連れていかれた時、私はうさぎをひょいと捕まえて、「美味しそう」と言った。
かわいそうだよ、とみんな言うけど、私からすればご馳走なのだ。価値観の違いが浮き彫りになる。
そんなふうに見てるからか、私は動物から好かれない。
ショックじゃない、わけではないけど、仕方ないと思えてしまうのも精神年齢が異常に長いからかな。
「あさ·····陽菜さん。あっちにペンギンいるって」
すぐさまワクワクしたような彼の表情を見るのが今日の目的になる。
目を小さな子供みたいにキラキラ輝かせて本当に可愛い。
じっと見てるのがバレたのか、彼方君が頬を赤らめながら「え、何··········?」と少し後ずさる。
「んー?いや··········愛しいなぁと」
素直な感想を口にすると、ほら。
顔真っ赤にしながら言葉を模索してる。
思わず笑いがこみ上げてくる。
やっぱり楽しい。彼方君が一緒に居ればどこだって。
私が言ってたこと、間違ってなかったみたいだ。
「じゃあ行こうか」
そう言ってさり気なく手を繋ぐ。
だって恋人らしいことなんてまだ一つもやってないし。
これくらい、いいよね?
ただでさえ年が離れて姉と弟みたいに見えてしまうんだから、少しは恋人なんだってことを自覚したい。
実感が欲しい。目に見える絆みたいなものが無いから。
ペンギンコーナーに行くと、小さい子たちがキャッキャとはしゃいでいる。
「鳥なのに飛べない鳥がいるらしいよ」
向日葵が鮮やかに咲くのを一望できる秘密基地で、二人の落ち合う場所。そこで彼は色々なことを教えてくれた。
海という塩がいっぱい含まれた水が、私たちに把握できないほど遠くまで広がっていること。その一方で、砂が一面に敷かれて黄色い絨毯になる所もあるとか。
そして、ある日彼はペンギンについて教えてくれた。
白と黒の模様で、愛らしい姿をしているんだとか。
「なんだか、俺と似てるんだよね」
切なく笑った彼の横顔を見て、思わず「何でよ」と聞き返す。
「俺は、好きなように生きることを許されない立場だから。飛ぶことを許されない鳥と、似てるだろう?」
全てを諦めたように言うものだから、私は思い切り怒りたかった。カルタらしくないって。
でも出来なかった。
その自由を掴むのが、どれだけ大変なことか、不可能に近いことか、わかっていたから。
「·····陽菜さん?」
気遣うような眼差しに、思わずはっと意識を覚醒させる。
「大丈夫?具合悪い?」
心配そうに覗き込む彼方君に慌てて笑顔を向ける。
「大丈夫!ちょっとぼーっとしてただけだから」
「それって大丈夫なの·····?」
なおも心配そうな表情をする彼方君の横を、一匹のペンギンがスイッと通り過ぎた。
「··········かわいいねぇ」
誤魔化すようにガラスに近寄る。
「ペンギンって、何か似てる気がする」
え、と固まった。
「··········飛べないのが、決まってるみたいにさ。··········歳も変えられないからなぁ」
聞こえないように呟いたつもりなんだろうけど、丸聞こえだよ·····。
今度は不可能に近い、じゃなくて、不可能、な所が同じなのね。何でそう、毎回記憶と重なることばかりを言うのだろう。私は少し怒りにも似た感情が湧くのを感じた。
だって、似てるとこさえなければ··········私はこんなに悩まなくても良いのに、なんて考えてしまう。
そうだね、なんて相槌は打ちたくなかった。
「··········平均寿命って、男の人の方が短いんだよね。」
すっとガラスから離れて、彼方君の手を再びとる。
「男の人が年下の方が、一緒に居られる時間が長いよね」
出会って七年ではい、さよなら。なんてことにはもうしたくない。今度は私が先に死にたい。
まぁ、その前に別れたらそんなことすら考える意味が無くなるわけなのだけど。
物騒なことを考えていた時だった。
「··········陽菜?」
彼方君よりも低い声が私の名を呼んだ。
声のするほうを振り返ると、職場の同僚が驚いた顔してそこに居た。
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