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病室でわたしは彼と出会った時のことを思い出していた。

わたしが彼と出会ったのは昼過ぎの公園だった。
平日の昼間の公園でベンチに座り何も考えず、野良猫を膝に乗せ、ぼーっとしていた時だ…
その日は1週間のやっとの休みで楽しみの散歩の日だった。
わたしの日常はバイトに明け暮れる事だ。休んでる暇などない程バイトを詰め込んだ。今思えば、現実逃避をしていたんだと思う。
1週間に1日だけは休みをととっていたので、気分転換の散歩をしていて休憩がてら公園のベンチに座っていた所だ。
膝に乗せている野良猫は毎週遊んでいる子でわたしがくると必ずいて寄ってきてくれる、今のわたしの唯一の友達だ。真っ黒の毛並みでふわふわの長毛だ。緑の瞳で大きさ的にはもう大人のサイズだがいくつなのかは知らない。どうやら飼い猫では無いらしく首輪をつけていない。だが食に困ってる様子もなく、痩せてはおらず、むしろちょっとふくよかだ。これだけ人懐っこいのだ誰かが餌付けをしてるのかもしれない。みーちゃんとわたしは呼んでいる。故意はない、ただ猫ならみーちゃんかなと思ってそう呼んでるだけだ。
みーちゃんの話はこれくらいにしておこう。
みーちゃんと戯れるのも飽きてぼーっと花壇に揺れる花を眺めていたとき。
ふと視線をに気づいた。いつからだろう…誰かに見られていたみたいだ。視線を感じた方向に顔を向けてみる。バチッと目が合う…あら…なかなかに好み……違うそうじゃない。見かけない顔だなと思った。というか何をそんなに見つめているんだろう。
その人は黒髪に黒縁のメガネをかけすらっとしていて、背はわたしより少し高いくらいだろうか、顔はソコソコいいくらいだろうか…なかなかの好みの男だった。服装は彼も散歩中だったのだろうか、パーカーにジーンズというラフな格好をしていた。わたしはジャージで色気の欠けらも無いのだが…
ここまで観察してみたが…ほんとになにをそんなに見つめているんだろう?
それがわたしの彼に会った時に思った最初のひとことだった。
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