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星と太陽編1
【星と太陽編1】15:xx14年8月18日
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どこか息を飲むような静寂が漂っている。
誰もが固唾をのんで、壇上の、まだ年若い青年の発表に耳を傾けている。
壇上に立っているのは、会場内にいる参加者たちの中でも年少と言える歳だろう。
なにせまだ20になったかそこらの若者である。
否、実際には誕生日を迎えていないため19であるが、
いずれにしても、その年齢で壇上に上がり、
堂々としたさまで発表を続けるだけでも聊か信じがたいと思う者は少なくない。
多くの各分野の専門家、企業の研究者などが集う講堂。
当初、壇上で行われる発表内容を見つめる視線は様々だった。
厳しい視線や訝し気な様子、好奇心、疑念、純粋な興味、様々な思惑を抱えたそれを、
静は淡々とした発表で、等しく平等に、驚愕ひとつに均していく。
「……、以上の結果から、励起光が消えた直後、
ごくわずかながら従来のラマン散乱が消えてなお、別の痕跡のようなものが確認できました。
それは確認できている自家蛍光のそれとは異なっており、別物と考えられます。
これを仮称として「残滓光」と名付けておりますが、
これは対象の分子構造により反応は異なるものの、
一定の法則性を持つことが確認されており……」
手元のパソコンを操作し、壇上中央にあるプロジェクターに
次のスライドを表示させながらここ数か月のうちに準備に準備を重ねたそれを発表していく。
予稿から今日まで本当に多忙を極めた日々だったが、なんとか無事にたどり着けた。
7月は直前ということもあり、思い返せばかなりぎりぎりな状態だったと
今であれば分かる。当日はそれすら正直分からないほどだった。
そんな自分を支えてくれたのは、ほかならぬ、乃亜だった。
大量のまとめるべき研究データをパソコンに保存し、
紙媒体の資料を鞄に詰めて帰宅。
いつものように夕食の献立を考えながらの帰宅だったが、
玄関に入るとふわりと良い匂いが室内に漂っていた。
少し驚いてリビングへのドアを開けるとそれは顕著だった。
「あ、おかえりなさい、兄さん」
「ただいま、乃亜……」
聊か驚いた。
乃亜がキッチンに立っているのは珍しいことではないが、
その手元で夕食をこしらえていたのだから。
「夕食、作ったのか?
……すまないな、俺が遅くなったから」
「い、いえ、そうじゃないです」
乃亜は鍋の火を止めて、目を丸くしている自分に歩み寄る。
少しためらいがちに、両手の指を軽く絡めて、視線を少しまよわせる。
だがややあって顔を上げた。
「私も今日から、夏休みです。
だから……、その、おうちのことは、私にやらせてください」
「……乃亜、以前も言ったが」
「分かってます。
兄さんが、私のことを思って、色々してくれていることも、
それを、兄さんが望んでいることも。
……だから、これは……、これは、私の、我儘です」
我儘。
乃亜からおよそ、最もほど遠い言葉が出てきた。
「……我儘、叶えて、くれませんか」
頬を赤く染めて、上目遣いでえらく可愛いことを言う。
乃亜自身、らしくないことを言っていると自覚しているのかもしれない。
妹が我儘をかなえてほしい、という。
できたらもっと別の形でそれを使ってほしかった。
静は心底そう思いながら、返す言葉に詰まり、思い切り苦笑いを浮かべるほかない。
駄目だとも言いにくい。
乃亜が望むことはなるべくかなえてやりたいと考えていた気持ちがそうさせる。
いいとも素直に言い難い。
常に抱いてい懸念、乃亜がかえって無理をするのではという思いがそうさせる。
だが結局、自分は妹には甘いのだ。
静は深くため息を吐いた。
乃亜は不安げに瞳を揺らしている。
「……分かった。好きにしていい」
「!」
「ただし、お前も決して無理はするんじゃない。
俺はお前が、自由に時間を使ってほしいんだ。
ヴァイオリンの練習や、買い物や、友人たちと出かけたりや、
そういったことは優先していいんだからな」
「はい!」
乃亜はそれに安堵したように大きく破顔した。
そこまで嬉しそうに笑うことだろうか。
世の中には、家事など見向きもせず、
自分の趣味に時間を使うことこそ当然と考える者も多かろうに。
静は乃亜の頭を一度撫でる。
「ありがとうな、乃亜」
「……っ」
照れくさそうに身体を一度よじる。
手を離すと、乃亜は嬉しそうに笑い、再びキッチンの方に身体を向けた。
そうして作られた夕食は、初めて、とはいえ
朝食づくりや弁当作りで培った経験もあり十分な出来栄えだった。
わかめと葱と豆腐が入った味噌汁、ほうれん草入りの卵焼き、
焼き鮭、鶏つくねの甘酢餡掛け。
兄さんほど美味くはないと思う、と乃亜は言っていたが、
十分に美味しい夕食であった。
久方ぶりに他の誰かが作った夕食を食べた気がした。
その後も朝食や夕食づくりだけでなく、片付けや掃除、洗濯まで
乃亜は本当に家のことをこなし始めた。
最初こそ少しつたないところもあったが、
しばらくすればそれは手際もよくなり、問題なくこなせるようになっていった。
我が妹ながら、かなり器用なほうらしい。
家事の時間が無くなったことで、大幅に時間が取れるようになった。
早く帰ることだけはなるべく徹底した。
家のことを任せるとは言っても、妹を一人で過ごさせることは本意ではない。
朝、乃亜の作った朝食を食べ、さらに弁当までこしらえてくれた。
それをもって大学へいき、大学内でしかできない実験や検証を集中して取り組み
それらのデータをもって家に帰ると、掃除された家で乃亜が夕食を作っている。
作ってくれている間は自室、あるいはリビングで資料を作成、
夕食後は自室にこもって再度パソコンに向かう。
それらのサポートが始まってから作業効率が上がったことで
乃亜や煉矢に言われていたように、かなり負荷が高かったと気づいた。
そうして多少なりとも余裕ができた。
時間的な余裕というよりも、心の余裕だ。
CORDアプリを立ち上げ、ましろとのチャットルームを開いた。
過去の履歴をたどる。
『その後、特になにも起きていないか?』
『大丈夫、ありがとう。静も今、かなり忙しいでしょ?』
『忙しくないわけじゃないが、俺のことはいいから』
『大丈夫だってば。それより乃亜を寂しがらせないようにね』
このやりとりの日付は7月1日。
今日は8月1日であるからもういくらも前だ。
当時は乃亜のことをだされてそれ以上何も言えなかったが、
今こうして余裕が多少生まれ読み返すと、なにか違和感を感じた。
「……なにもない、とは言ってないな」
大丈夫、という言葉を繰り返し、こちらを気遣うばかりではないか。
なにか嫌なものを感じる。
静はパソコンで時刻を確認する。21:00を過ぎた頃だ。
立ち上がり、自室を出て、乃亜の部屋をノックした。
返事があり、引き戸が開く。
ベージュのルームウェアに着替えた妹が不思議そうに首をかしげて出迎えた。
「どうしました?」
「乃亜、最近、ましろと連絡は取ったか?」
乃亜は少し考えこむ。
「最後に連絡をしたのは……二週間くらい前でしょうか。
といっても、通話でなくて、CORDでですか。
テストの結果とか、そういったことをポツポツと」
「そうか……」
「……なにか、気になることが?」
不思議そうにしていた顔が不安に揺れる。
静はそれに首を振った。自分に気にしすぎているだけかもしれない。
それで乃亜に余計な不安を感じさせたくはない。
「いや、俺の思い過ごしならいいんだ」
「そう、ですか……?」
「ああ。突然すまなかったな。おやすみ」
「はい、おやすみなさい……」
乃亜に就寝の挨拶をあらためてして、自室へ戻る。
4月に突然倒れた彼女のことはずっと気になっている。
しかし残念ながら足しげく通えるほどの余裕は作れず、
ただ向こうからのアクションを待つほかない。
だがあと少し。
学会が終われば一息つける。
静はそう思いなおし、CORDアプリでましろにメッセージを送る。
『学会が落ち着いたら、会いに行く』
それに既読がついたことを確認して、アプリを閉じた。
返信はなかった。
8月18日。学会当日。
静は最後のスライドを表示した。
自分よりいくらも経験を積み、いくらも様々な現場を見てきたであろう人々が
瞳をぎらぎらとさせながら見つめている。
しかしなにも恐れる必要はない。
今日まで得た知識、研究、実験、それは明確な事実に基づいたものだ。
自信のあるなしではなく、事実がここにある。
静はなにひとつぶれることなく、発表の締めに入った。
「本件につきましてはまだまだ可能性の段階であります。
残滓に関してはまだ未知数。しかしこの原理が明確となれば、
自家蛍光とラマン散乱光を明確に分離する新たな可能性が切り開かれます。
これは様々な分野における技術のブレイクスルーとなりえる。
その確信をもって、私の発表を終わらせていただきます」
一瞬の間のあと大きな拍手が入った。
内心安堵も覚えるがここで気を緩めてはいけない。
座長と呼ばれる司会進行の担当者が質疑応答について投げかけるといくつか質問が飛んできた。
だがそれはおおよそ予想もしていた内容だ。
静はそれらを特に動揺することなく捌き、3つほどの質問を終え、
無事に静は壇上から帰還を果たした。
その後、他の発表者の発表もしっかりと聴講した。
中には自分の研究にかかわるものもあり、かなり興味深かった。
ときに質問も投げさせていただいたが、淀みなく回答ももらえ、大変参考になった。
時刻は15:00頃。
まだ発表は続くが何回目かの休憩の時間になった。
自分の発表のあとの休憩ということもあり、いささか疲労を覚え、
気分転換の目的もあり、静はロビーへと出ていた。
赤いじゅうたんの敷かれたロビーの向こう、壁一面の窓の向こうは真夏の空が広がる。
鮮やかな青空の中で、雲が時折陽射しをさえぎり影をつくる。
だが少し遠い空がひどく暗い。あの辺りは雨だろうか。
施設に設置されている自動販売機にて飲み物を買っていると、
こちらに歩いてくる足音が聞こえ顔を上げた。
「斉王くん、だったね?」
「はい。……失礼ですが」
「ああ、私は敷島大学の医学部で教鞭をとっている、大島という者だ」
敷島大学の医学部。
静は内心驚愕を覚えた。
敷島国際大学自体が日本でもトップクラスの学府であり、
その中でも医学部は、日本の医療を志す者にとって最高位に近い。
そこで教鞭をとっているというならば教授ではないか。
静は自然と背筋が伸びた。
「失礼しました。お声がけありがとうございます」
「いやいや、君の発表が実に興味深かったのでね」
まさか直接声かけをもらえるとは考えていなかった。
想定していたのは、今回自分を推してくれた大学の教授経由だ。
「まだまだ可能性段階のものにご興味をいただき恐縮です」
「そうはいうが、すでに展望は見えていそうじゃないが。
実現すれば、我々医療にかかわるものにあまりにも大きな光を与えてくれる。
君の研究には大きく期待しているよ」
「ありがとうございます。その言葉を胸に、今後も精進いたします」
敬意を込めて腰から礼をすると、大島と名乗る男は満足そうに笑みを深くした。
静が顔を上げると、スーツのポケットから名刺入れを取り出し、一枚取り出したところだった。
「私の名刺を渡しておこう。
なにか相談があれば気軽に連絡をしてくれ」
「それは、大変ありがたいことです。謹んで受け取らせていただきます。
ただ申し訳ないのですが、まだ学生の身のため、名刺の類を持ち合わせておらず……」
「はは、もちろん、そうだろうね。
こちらから連絡をする際には、君の後援となっている教授宛てに連絡しよう。
なに、これはまぁ、ちょっとした、先行投資でもあるんだよ」
「先行投資ですか?」
大島は名刺入れをポケットに片づけ、改めてまっすぐに静を見た。
少し恰幅が良い、しかし堂々とした立ち居振る舞いだ。
「君の研究は、我々が携わる医療だけではない。
ありとあらゆる技術への応用がきく可能性を秘めている。
分子というこの世のすべてといってもいいものが対象だ。
だから、少しでも優先度を上げてもらえたら、というね」
なかなかユニークなことをおっしゃる。
まず第一のターゲットとして医療を目的に据えてほしいという話だ。
確かにもし自分の研究が本格的な実証実験に入れば、
そのターゲットは絞っていかなければならない。
静はふっと笑った。
「名刺はありがたく頂戴します。
ただ、もとより、医療分野で貢献できるようにと考えておりました」
「おや、それは重畳。なにか理由でも?」
「……少々、身近に、体調を崩したものがおりまして」
ふとましろの顔が浮かぶ。
僅かに目線が下がったことに気付かれたのだろう。
大島は笑みを消した。
「……あまりよくないのかね」
「現段階ではなんとも。
……いえ、失礼しました。個人的な話でした」
「いや、構わないとも。
これも縁だ。なにか相談したいことがあれば連絡しなさい。
私も医療に関わるものだからね。病に苦しむ人がいるのであれば、微力ながら手を貸そう」
「お心遣い、ありがとうございます。
もしそうなった際には、研究結果をもってお礼とさせていただきます」
「ああ、期待しているよ。ではね」
大島はそういって立ち去って行った。
手元にはもらった名刺。
そこには間違いなく、敷島国際大学の名前とロゴ。
勿論、こういった非公式のコミュニケーションは、ただの社交辞令となるケースも多いと聞く。
しかし、それでもこうして短い休憩時間に直接声をかけてくれたのも事実。
静は名刺をしみじみと見つめ、初めて、確かな手ごたえを感じていた。
大切にスーツの胸ポケットにそれを仕舞う。
この名刺が、後日大きな助力になるなど、
この時の静には想像もできなかった。
静が学会の発表に出向いている中、乃亜は自宅で夏休みの宿題の仕上げをしていた。
夏休みも残り二週間程度。
最後の数学の宿題を無事に終えることができてほっとし、シャープペンシルを置く。
スマートフォンから流れるのは、ヴィヴァルディの「四季」より「夏」。
切なさと激しさ、力強さが入り混じる曲。
まるで去りゆく夏への憧憬だ。
窓の外に目をやれば、先ほどは眩しいくらいの明るさであったのに、
どこか薄暗くなっていた。雲が出てきたらしい。
ひどい暑さが続いているので、雨が降ってくれるのは正直ありがたい。
宿題のノートや資料を片付けたところで時刻を確認すると15:00を過ぎたところだった。
曲が終わったところでスマートフォンを手に取り、
CORDアプリを立ち上げる。
動きのないチャットルーム。
やりとりがされた日時順に並ぶ中、一番上には兄、その下には煉矢、
ヴァイオリン教室の水野、
学校の友人たちとのグループチャット、
学校からの連絡を受けるためのチャットルーム、
そこまで下がって、ようやく、ましろの名前が出てきた。
以前であれば、ましろとのやりとりはもっと上にあっはずだ。
この履歴を見るだけで、彼女との連絡がすくなくなっていることがわかる。
以前、兄から連絡はしていないかと聞かれ、
そういえば通話でのやりとりはしていないことに気付いた。
そのため一度電話をしてみたが、不通。
メッセージで、「ごめんね、手が離せなかった」という返信だけあった。
それをそのまま鵜呑みにしていいものか。
ましろとは今年に入って殆ど会っていない。
一度、彼女の家に行こうかと考えたこともあったが、
ましろの家が剣道場と隣接していることを思い出して躊躇した。
正式なルールに則ったスポーツだということは理解できているが
それでも叩いたり、叩かれたり、といったシーンを見て、
平静でいられるのか正直自信がなかったからだ。
そのため、チャットのやり取りや、たまの通話だけにしていたが
ここしばらく、夏以降、通話もしていない。
乃亜は少し迷ったが、それでも、不安が指先を動かしていた。
『少しお電話してもいいですか?』
投稿。
すぐに既読にならないことは分かっている。
乃亜はしばしそれを見ていたが、10分ほど経過した頃。
『いいよ、かけようか?』
そう返事があった。
電話しても良い、という言葉に大きく胸をなでおろした。
もしかしたら何かあったのかもしれない、という懸念がずっとあったからだ。
けれど問題ないというなら、ただの懸念でしかなかったのかもしれない。
乃亜はすぐに通話ボタンを押した。
『もしもし』
「あ、ましろ、乃亜です」
『うん。最近電話に出れなくてごめんね。
私もバタバタしてて、なかなか』
「いえ、大丈夫ですよ。私のほうこそ、すみません、いきなり」
いつも通りに聞こえる声色に、いっそう安堵を覚えた。
『それは全然かまわないけど、なにかあった?』
それに乃亜は少し言葉が詰まった。
実際に何か具体的な用事があってかけたわけではない。
「あ、え、と……最近、お話してないので、変わりないかな、と……」
『うん、特に、変わりないよ』
変わりない、という声に、なにか違和感を覚えた。
乃亜は耳に当てるスマートフォンに視線を向け、続く言葉が詰まる。
いつもの、自分がよく知るましろの声色から何かがずれたような気がしたのだ。
通話という状況だからだろうか。
『乃亜?』
「あ……いえ」
よくわからない違和感に、さきほど消えた懸念がまた浮上する。
乃亜は握った手を胸元に添えた。
「……もう少し、涼しくなったら、また、出かけたいですね」
『……そうだね』
沈黙が走る。
どうして、そんなに、声が、言葉が、泣きそうなのだ。
泣きそうな笑みを浮かべているようで、乃亜は必死に言葉を続ける。
「あ、その、先月、から、家の食事、作り始めたんです、私。
前、ましろに教えてもらった、ドレッシングも、試して……!」
『うん』
「兄さんも、美味しいって言ってました……!
まだ、いろいろ、慣れないことも、多いですが……」
『うん』
「……っ」
やはりおかしい。
普段の彼女らしくない。でもそれをどう追求していいのか分からない。
普段と違う、何かあったのか、そういったことをまっすぐ告げて、尋ねていいものなのか。
ましろははっきりとした性格の人だ。
聞きたいこと、言いたいことがあれば、それをまっすぐに言う人。
そんな人がいままでずっと黙っていて、なにごともない、変わらない、と言う。
なのに、話す声の向こう側は、どこか震えているような気がして。
『乃亜』
「っ、は、はい」
『ありがとうね』
言葉が詰まった。
何がありがとうなのかわからない。
何に対してなのかもわからない。
『ごめんね、そろそろ切るよ』
「ましろ……、……はい」
『……、それじゃあね』
ぷつりと切れた通話。
ごろごろと低く大気を揺らす雷鳴が、代わりに乃亜の耳に届く。
夏の空は暗く太陽の光を遮り、大粒の雨を降らし始めていた。
誰もが固唾をのんで、壇上の、まだ年若い青年の発表に耳を傾けている。
壇上に立っているのは、会場内にいる参加者たちの中でも年少と言える歳だろう。
なにせまだ20になったかそこらの若者である。
否、実際には誕生日を迎えていないため19であるが、
いずれにしても、その年齢で壇上に上がり、
堂々としたさまで発表を続けるだけでも聊か信じがたいと思う者は少なくない。
多くの各分野の専門家、企業の研究者などが集う講堂。
当初、壇上で行われる発表内容を見つめる視線は様々だった。
厳しい視線や訝し気な様子、好奇心、疑念、純粋な興味、様々な思惑を抱えたそれを、
静は淡々とした発表で、等しく平等に、驚愕ひとつに均していく。
「……、以上の結果から、励起光が消えた直後、
ごくわずかながら従来のラマン散乱が消えてなお、別の痕跡のようなものが確認できました。
それは確認できている自家蛍光のそれとは異なっており、別物と考えられます。
これを仮称として「残滓光」と名付けておりますが、
これは対象の分子構造により反応は異なるものの、
一定の法則性を持つことが確認されており……」
手元のパソコンを操作し、壇上中央にあるプロジェクターに
次のスライドを表示させながらここ数か月のうちに準備に準備を重ねたそれを発表していく。
予稿から今日まで本当に多忙を極めた日々だったが、なんとか無事にたどり着けた。
7月は直前ということもあり、思い返せばかなりぎりぎりな状態だったと
今であれば分かる。当日はそれすら正直分からないほどだった。
そんな自分を支えてくれたのは、ほかならぬ、乃亜だった。
大量のまとめるべき研究データをパソコンに保存し、
紙媒体の資料を鞄に詰めて帰宅。
いつものように夕食の献立を考えながらの帰宅だったが、
玄関に入るとふわりと良い匂いが室内に漂っていた。
少し驚いてリビングへのドアを開けるとそれは顕著だった。
「あ、おかえりなさい、兄さん」
「ただいま、乃亜……」
聊か驚いた。
乃亜がキッチンに立っているのは珍しいことではないが、
その手元で夕食をこしらえていたのだから。
「夕食、作ったのか?
……すまないな、俺が遅くなったから」
「い、いえ、そうじゃないです」
乃亜は鍋の火を止めて、目を丸くしている自分に歩み寄る。
少しためらいがちに、両手の指を軽く絡めて、視線を少しまよわせる。
だがややあって顔を上げた。
「私も今日から、夏休みです。
だから……、その、おうちのことは、私にやらせてください」
「……乃亜、以前も言ったが」
「分かってます。
兄さんが、私のことを思って、色々してくれていることも、
それを、兄さんが望んでいることも。
……だから、これは……、これは、私の、我儘です」
我儘。
乃亜からおよそ、最もほど遠い言葉が出てきた。
「……我儘、叶えて、くれませんか」
頬を赤く染めて、上目遣いでえらく可愛いことを言う。
乃亜自身、らしくないことを言っていると自覚しているのかもしれない。
妹が我儘をかなえてほしい、という。
できたらもっと別の形でそれを使ってほしかった。
静は心底そう思いながら、返す言葉に詰まり、思い切り苦笑いを浮かべるほかない。
駄目だとも言いにくい。
乃亜が望むことはなるべくかなえてやりたいと考えていた気持ちがそうさせる。
いいとも素直に言い難い。
常に抱いてい懸念、乃亜がかえって無理をするのではという思いがそうさせる。
だが結局、自分は妹には甘いのだ。
静は深くため息を吐いた。
乃亜は不安げに瞳を揺らしている。
「……分かった。好きにしていい」
「!」
「ただし、お前も決して無理はするんじゃない。
俺はお前が、自由に時間を使ってほしいんだ。
ヴァイオリンの練習や、買い物や、友人たちと出かけたりや、
そういったことは優先していいんだからな」
「はい!」
乃亜はそれに安堵したように大きく破顔した。
そこまで嬉しそうに笑うことだろうか。
世の中には、家事など見向きもせず、
自分の趣味に時間を使うことこそ当然と考える者も多かろうに。
静は乃亜の頭を一度撫でる。
「ありがとうな、乃亜」
「……っ」
照れくさそうに身体を一度よじる。
手を離すと、乃亜は嬉しそうに笑い、再びキッチンの方に身体を向けた。
そうして作られた夕食は、初めて、とはいえ
朝食づくりや弁当作りで培った経験もあり十分な出来栄えだった。
わかめと葱と豆腐が入った味噌汁、ほうれん草入りの卵焼き、
焼き鮭、鶏つくねの甘酢餡掛け。
兄さんほど美味くはないと思う、と乃亜は言っていたが、
十分に美味しい夕食であった。
久方ぶりに他の誰かが作った夕食を食べた気がした。
その後も朝食や夕食づくりだけでなく、片付けや掃除、洗濯まで
乃亜は本当に家のことをこなし始めた。
最初こそ少しつたないところもあったが、
しばらくすればそれは手際もよくなり、問題なくこなせるようになっていった。
我が妹ながら、かなり器用なほうらしい。
家事の時間が無くなったことで、大幅に時間が取れるようになった。
早く帰ることだけはなるべく徹底した。
家のことを任せるとは言っても、妹を一人で過ごさせることは本意ではない。
朝、乃亜の作った朝食を食べ、さらに弁当までこしらえてくれた。
それをもって大学へいき、大学内でしかできない実験や検証を集中して取り組み
それらのデータをもって家に帰ると、掃除された家で乃亜が夕食を作っている。
作ってくれている間は自室、あるいはリビングで資料を作成、
夕食後は自室にこもって再度パソコンに向かう。
それらのサポートが始まってから作業効率が上がったことで
乃亜や煉矢に言われていたように、かなり負荷が高かったと気づいた。
そうして多少なりとも余裕ができた。
時間的な余裕というよりも、心の余裕だ。
CORDアプリを立ち上げ、ましろとのチャットルームを開いた。
過去の履歴をたどる。
『その後、特になにも起きていないか?』
『大丈夫、ありがとう。静も今、かなり忙しいでしょ?』
『忙しくないわけじゃないが、俺のことはいいから』
『大丈夫だってば。それより乃亜を寂しがらせないようにね』
このやりとりの日付は7月1日。
今日は8月1日であるからもういくらも前だ。
当時は乃亜のことをだされてそれ以上何も言えなかったが、
今こうして余裕が多少生まれ読み返すと、なにか違和感を感じた。
「……なにもない、とは言ってないな」
大丈夫、という言葉を繰り返し、こちらを気遣うばかりではないか。
なにか嫌なものを感じる。
静はパソコンで時刻を確認する。21:00を過ぎた頃だ。
立ち上がり、自室を出て、乃亜の部屋をノックした。
返事があり、引き戸が開く。
ベージュのルームウェアに着替えた妹が不思議そうに首をかしげて出迎えた。
「どうしました?」
「乃亜、最近、ましろと連絡は取ったか?」
乃亜は少し考えこむ。
「最後に連絡をしたのは……二週間くらい前でしょうか。
といっても、通話でなくて、CORDでですか。
テストの結果とか、そういったことをポツポツと」
「そうか……」
「……なにか、気になることが?」
不思議そうにしていた顔が不安に揺れる。
静はそれに首を振った。自分に気にしすぎているだけかもしれない。
それで乃亜に余計な不安を感じさせたくはない。
「いや、俺の思い過ごしならいいんだ」
「そう、ですか……?」
「ああ。突然すまなかったな。おやすみ」
「はい、おやすみなさい……」
乃亜に就寝の挨拶をあらためてして、自室へ戻る。
4月に突然倒れた彼女のことはずっと気になっている。
しかし残念ながら足しげく通えるほどの余裕は作れず、
ただ向こうからのアクションを待つほかない。
だがあと少し。
学会が終われば一息つける。
静はそう思いなおし、CORDアプリでましろにメッセージを送る。
『学会が落ち着いたら、会いに行く』
それに既読がついたことを確認して、アプリを閉じた。
返信はなかった。
8月18日。学会当日。
静は最後のスライドを表示した。
自分よりいくらも経験を積み、いくらも様々な現場を見てきたであろう人々が
瞳をぎらぎらとさせながら見つめている。
しかしなにも恐れる必要はない。
今日まで得た知識、研究、実験、それは明確な事実に基づいたものだ。
自信のあるなしではなく、事実がここにある。
静はなにひとつぶれることなく、発表の締めに入った。
「本件につきましてはまだまだ可能性の段階であります。
残滓に関してはまだ未知数。しかしこの原理が明確となれば、
自家蛍光とラマン散乱光を明確に分離する新たな可能性が切り開かれます。
これは様々な分野における技術のブレイクスルーとなりえる。
その確信をもって、私の発表を終わらせていただきます」
一瞬の間のあと大きな拍手が入った。
内心安堵も覚えるがここで気を緩めてはいけない。
座長と呼ばれる司会進行の担当者が質疑応答について投げかけるといくつか質問が飛んできた。
だがそれはおおよそ予想もしていた内容だ。
静はそれらを特に動揺することなく捌き、3つほどの質問を終え、
無事に静は壇上から帰還を果たした。
その後、他の発表者の発表もしっかりと聴講した。
中には自分の研究にかかわるものもあり、かなり興味深かった。
ときに質問も投げさせていただいたが、淀みなく回答ももらえ、大変参考になった。
時刻は15:00頃。
まだ発表は続くが何回目かの休憩の時間になった。
自分の発表のあとの休憩ということもあり、いささか疲労を覚え、
気分転換の目的もあり、静はロビーへと出ていた。
赤いじゅうたんの敷かれたロビーの向こう、壁一面の窓の向こうは真夏の空が広がる。
鮮やかな青空の中で、雲が時折陽射しをさえぎり影をつくる。
だが少し遠い空がひどく暗い。あの辺りは雨だろうか。
施設に設置されている自動販売機にて飲み物を買っていると、
こちらに歩いてくる足音が聞こえ顔を上げた。
「斉王くん、だったね?」
「はい。……失礼ですが」
「ああ、私は敷島大学の医学部で教鞭をとっている、大島という者だ」
敷島大学の医学部。
静は内心驚愕を覚えた。
敷島国際大学自体が日本でもトップクラスの学府であり、
その中でも医学部は、日本の医療を志す者にとって最高位に近い。
そこで教鞭をとっているというならば教授ではないか。
静は自然と背筋が伸びた。
「失礼しました。お声がけありがとうございます」
「いやいや、君の発表が実に興味深かったのでね」
まさか直接声かけをもらえるとは考えていなかった。
想定していたのは、今回自分を推してくれた大学の教授経由だ。
「まだまだ可能性段階のものにご興味をいただき恐縮です」
「そうはいうが、すでに展望は見えていそうじゃないが。
実現すれば、我々医療にかかわるものにあまりにも大きな光を与えてくれる。
君の研究には大きく期待しているよ」
「ありがとうございます。その言葉を胸に、今後も精進いたします」
敬意を込めて腰から礼をすると、大島と名乗る男は満足そうに笑みを深くした。
静が顔を上げると、スーツのポケットから名刺入れを取り出し、一枚取り出したところだった。
「私の名刺を渡しておこう。
なにか相談があれば気軽に連絡をしてくれ」
「それは、大変ありがたいことです。謹んで受け取らせていただきます。
ただ申し訳ないのですが、まだ学生の身のため、名刺の類を持ち合わせておらず……」
「はは、もちろん、そうだろうね。
こちらから連絡をする際には、君の後援となっている教授宛てに連絡しよう。
なに、これはまぁ、ちょっとした、先行投資でもあるんだよ」
「先行投資ですか?」
大島は名刺入れをポケットに片づけ、改めてまっすぐに静を見た。
少し恰幅が良い、しかし堂々とした立ち居振る舞いだ。
「君の研究は、我々が携わる医療だけではない。
ありとあらゆる技術への応用がきく可能性を秘めている。
分子というこの世のすべてといってもいいものが対象だ。
だから、少しでも優先度を上げてもらえたら、というね」
なかなかユニークなことをおっしゃる。
まず第一のターゲットとして医療を目的に据えてほしいという話だ。
確かにもし自分の研究が本格的な実証実験に入れば、
そのターゲットは絞っていかなければならない。
静はふっと笑った。
「名刺はありがたく頂戴します。
ただ、もとより、医療分野で貢献できるようにと考えておりました」
「おや、それは重畳。なにか理由でも?」
「……少々、身近に、体調を崩したものがおりまして」
ふとましろの顔が浮かぶ。
僅かに目線が下がったことに気付かれたのだろう。
大島は笑みを消した。
「……あまりよくないのかね」
「現段階ではなんとも。
……いえ、失礼しました。個人的な話でした」
「いや、構わないとも。
これも縁だ。なにか相談したいことがあれば連絡しなさい。
私も医療に関わるものだからね。病に苦しむ人がいるのであれば、微力ながら手を貸そう」
「お心遣い、ありがとうございます。
もしそうなった際には、研究結果をもってお礼とさせていただきます」
「ああ、期待しているよ。ではね」
大島はそういって立ち去って行った。
手元にはもらった名刺。
そこには間違いなく、敷島国際大学の名前とロゴ。
勿論、こういった非公式のコミュニケーションは、ただの社交辞令となるケースも多いと聞く。
しかし、それでもこうして短い休憩時間に直接声をかけてくれたのも事実。
静は名刺をしみじみと見つめ、初めて、確かな手ごたえを感じていた。
大切にスーツの胸ポケットにそれを仕舞う。
この名刺が、後日大きな助力になるなど、
この時の静には想像もできなかった。
静が学会の発表に出向いている中、乃亜は自宅で夏休みの宿題の仕上げをしていた。
夏休みも残り二週間程度。
最後の数学の宿題を無事に終えることができてほっとし、シャープペンシルを置く。
スマートフォンから流れるのは、ヴィヴァルディの「四季」より「夏」。
切なさと激しさ、力強さが入り混じる曲。
まるで去りゆく夏への憧憬だ。
窓の外に目をやれば、先ほどは眩しいくらいの明るさであったのに、
どこか薄暗くなっていた。雲が出てきたらしい。
ひどい暑さが続いているので、雨が降ってくれるのは正直ありがたい。
宿題のノートや資料を片付けたところで時刻を確認すると15:00を過ぎたところだった。
曲が終わったところでスマートフォンを手に取り、
CORDアプリを立ち上げる。
動きのないチャットルーム。
やりとりがされた日時順に並ぶ中、一番上には兄、その下には煉矢、
ヴァイオリン教室の水野、
学校の友人たちとのグループチャット、
学校からの連絡を受けるためのチャットルーム、
そこまで下がって、ようやく、ましろの名前が出てきた。
以前であれば、ましろとのやりとりはもっと上にあっはずだ。
この履歴を見るだけで、彼女との連絡がすくなくなっていることがわかる。
以前、兄から連絡はしていないかと聞かれ、
そういえば通話でのやりとりはしていないことに気付いた。
そのため一度電話をしてみたが、不通。
メッセージで、「ごめんね、手が離せなかった」という返信だけあった。
それをそのまま鵜呑みにしていいものか。
ましろとは今年に入って殆ど会っていない。
一度、彼女の家に行こうかと考えたこともあったが、
ましろの家が剣道場と隣接していることを思い出して躊躇した。
正式なルールに則ったスポーツだということは理解できているが
それでも叩いたり、叩かれたり、といったシーンを見て、
平静でいられるのか正直自信がなかったからだ。
そのため、チャットのやり取りや、たまの通話だけにしていたが
ここしばらく、夏以降、通話もしていない。
乃亜は少し迷ったが、それでも、不安が指先を動かしていた。
『少しお電話してもいいですか?』
投稿。
すぐに既読にならないことは分かっている。
乃亜はしばしそれを見ていたが、10分ほど経過した頃。
『いいよ、かけようか?』
そう返事があった。
電話しても良い、という言葉に大きく胸をなでおろした。
もしかしたら何かあったのかもしれない、という懸念がずっとあったからだ。
けれど問題ないというなら、ただの懸念でしかなかったのかもしれない。
乃亜はすぐに通話ボタンを押した。
『もしもし』
「あ、ましろ、乃亜です」
『うん。最近電話に出れなくてごめんね。
私もバタバタしてて、なかなか』
「いえ、大丈夫ですよ。私のほうこそ、すみません、いきなり」
いつも通りに聞こえる声色に、いっそう安堵を覚えた。
『それは全然かまわないけど、なにかあった?』
それに乃亜は少し言葉が詰まった。
実際に何か具体的な用事があってかけたわけではない。
「あ、え、と……最近、お話してないので、変わりないかな、と……」
『うん、特に、変わりないよ』
変わりない、という声に、なにか違和感を覚えた。
乃亜は耳に当てるスマートフォンに視線を向け、続く言葉が詰まる。
いつもの、自分がよく知るましろの声色から何かがずれたような気がしたのだ。
通話という状況だからだろうか。
『乃亜?』
「あ……いえ」
よくわからない違和感に、さきほど消えた懸念がまた浮上する。
乃亜は握った手を胸元に添えた。
「……もう少し、涼しくなったら、また、出かけたいですね」
『……そうだね』
沈黙が走る。
どうして、そんなに、声が、言葉が、泣きそうなのだ。
泣きそうな笑みを浮かべているようで、乃亜は必死に言葉を続ける。
「あ、その、先月、から、家の食事、作り始めたんです、私。
前、ましろに教えてもらった、ドレッシングも、試して……!」
『うん』
「兄さんも、美味しいって言ってました……!
まだ、いろいろ、慣れないことも、多いですが……」
『うん』
「……っ」
やはりおかしい。
普段の彼女らしくない。でもそれをどう追求していいのか分からない。
普段と違う、何かあったのか、そういったことをまっすぐ告げて、尋ねていいものなのか。
ましろははっきりとした性格の人だ。
聞きたいこと、言いたいことがあれば、それをまっすぐに言う人。
そんな人がいままでずっと黙っていて、なにごともない、変わらない、と言う。
なのに、話す声の向こう側は、どこか震えているような気がして。
『乃亜』
「っ、は、はい」
『ありがとうね』
言葉が詰まった。
何がありがとうなのかわからない。
何に対してなのかもわからない。
『ごめんね、そろそろ切るよ』
「ましろ……、……はい」
『……、それじゃあね』
ぷつりと切れた通話。
ごろごろと低く大気を揺らす雷鳴が、代わりに乃亜の耳に届く。
夏の空は暗く太陽の光を遮り、大粒の雨を降らし始めていた。
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