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幻想界編
第3話 焚き火の向こう
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川のせせらぎが、耳に心地よく響いている。
森の奥深く、陽光が木々の間から差し込み、足元に揺れる影を作っていた。
水面には小さな波紋が広がり、その向こうに泳ぐ魚の銀色の腹がちらちらと光る。
俺は、手に持った即席の串を回しながら、焚き火の上でじわじわと魚を焼いていた。
木の香りと焦げた皮の匂いが、腹の底を刺激する。
腹が減ってると、さっきまでの緊張感も少しだけ和らぐから不思議だ。
ツムギは少し離れた場所で、拾ってきた枝をまとめている。
焚き火の火力を落とさないためらしい。動きは手慣れていて、日常的にこういうことをしてるのがわかる。
ほんのり鼻歌まで聞こえてきて、なんだか場違いなほど平和な空気だった。
「……まいったな」
串をくるりと回し、口からぼそっとこぼれる。
ツムギが顔を上げる。「どうかしました?」
「いや……帰る方法も無いし、氷河も居ねぇし……」
あの銀髪の剣士の姿が、頭の中に浮かんでは消える。
何だかんだで頼りになった奴だったが、今は別世界の向こうにいる。
「まあ……まず情報を得るには、さっき言ってた王都って所に目指せばいいんだな」
「はい!」
ツムギの返事は明るい。だがその後、少し言葉を濁した。
「王都は色んな方々がいるので、もしかしたら……と思ったんですが……」
「……思ったんですが?」
魚をひっくり返しながら、つい問い返す。
ツムギは小さくため息をついた。
「ここから、かなり距離があり……道中の森を抜けた先では、魔物がたくさんいるんですよ……」
俺は苦笑するしかなかった。
「魔物って……さっき俺が、死にかけた時の……」
焼き上がる音と共に、独り言みたいに漏れる。
「……あれみたいなの、いるのか……」
串を持つ手に力が入る。
あの獣の爪と牙の感触、吹き飛ばされた衝撃、血の味――脳裏に蘇るたび、背筋が冷たくなる。
「なあ、ツムギ」
「はい?」
「俺……生きて帰れるかな……」
ツムギは一瞬きょとんとした顔をした。
俺は、すぐに小さく笑って首を振る。
「……まあ、帰るためには……しょうがないか」
魚の匂いが鼻をくすぐる。
「遭遇しないようにすればいいんだしな、うん」
ツムギが口を開きかけたが、俺は立ち上がって火から魚を下ろした。
串の先から湯気が立ち、油がじゅっと音を立てる。
「よし、行こう」
「案内頼む」
そう言って魚を半分ツムギに手渡す。
彼女は一瞬驚いた後、にこっと笑って受け取った。
焚き火の火は、小さくなりながらも、まだしっかりと燃えていた。
その火を見つめながら、俺は心の中で一つだけ決める。
――帰る。そのために、何があっても。
森の奥深く、陽光が木々の間から差し込み、足元に揺れる影を作っていた。
水面には小さな波紋が広がり、その向こうに泳ぐ魚の銀色の腹がちらちらと光る。
俺は、手に持った即席の串を回しながら、焚き火の上でじわじわと魚を焼いていた。
木の香りと焦げた皮の匂いが、腹の底を刺激する。
腹が減ってると、さっきまでの緊張感も少しだけ和らぐから不思議だ。
ツムギは少し離れた場所で、拾ってきた枝をまとめている。
焚き火の火力を落とさないためらしい。動きは手慣れていて、日常的にこういうことをしてるのがわかる。
ほんのり鼻歌まで聞こえてきて、なんだか場違いなほど平和な空気だった。
「……まいったな」
串をくるりと回し、口からぼそっとこぼれる。
ツムギが顔を上げる。「どうかしました?」
「いや……帰る方法も無いし、氷河も居ねぇし……」
あの銀髪の剣士の姿が、頭の中に浮かんでは消える。
何だかんだで頼りになった奴だったが、今は別世界の向こうにいる。
「まあ……まず情報を得るには、さっき言ってた王都って所に目指せばいいんだな」
「はい!」
ツムギの返事は明るい。だがその後、少し言葉を濁した。
「王都は色んな方々がいるので、もしかしたら……と思ったんですが……」
「……思ったんですが?」
魚をひっくり返しながら、つい問い返す。
ツムギは小さくため息をついた。
「ここから、かなり距離があり……道中の森を抜けた先では、魔物がたくさんいるんですよ……」
俺は苦笑するしかなかった。
「魔物って……さっき俺が、死にかけた時の……」
焼き上がる音と共に、独り言みたいに漏れる。
「……あれみたいなの、いるのか……」
串を持つ手に力が入る。
あの獣の爪と牙の感触、吹き飛ばされた衝撃、血の味――脳裏に蘇るたび、背筋が冷たくなる。
「なあ、ツムギ」
「はい?」
「俺……生きて帰れるかな……」
ツムギは一瞬きょとんとした顔をした。
俺は、すぐに小さく笑って首を振る。
「……まあ、帰るためには……しょうがないか」
魚の匂いが鼻をくすぐる。
「遭遇しないようにすればいいんだしな、うん」
ツムギが口を開きかけたが、俺は立ち上がって火から魚を下ろした。
串の先から湯気が立ち、油がじゅっと音を立てる。
「よし、行こう」
「案内頼む」
そう言って魚を半分ツムギに手渡す。
彼女は一瞬驚いた後、にこっと笑って受け取った。
焚き火の火は、小さくなりながらも、まだしっかりと燃えていた。
その火を見つめながら、俺は心の中で一つだけ決める。
――帰る。そのために、何があっても。
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