モメント 〜夢の真実を求めて五界を巡る〜

キマリ

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幻想界編

第2話 目覚め

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柔らかな光が、閉じた瞼を透かして差し込んでくる。
 耳に届くのは、鳥のさえずりと、草の葉が揺れるかすかな音。
 さっきまで――あの魔物の咆哮と、血の匂いと、転移の光に包まれた感覚しかなかったはずだ。
 なのに、今は――やけに穏やかで、あたたかい。

「……あの、大丈夫ですか?」

 澄んだ声が、真上から降ってきた。
 瞼を開けると、金色の瞳がこちらをのぞき込んでいる。
 陽光に縁取られた白銀の髪。小柄な体に、白と金を基調としたローブ――見たことのない服装の少女だった。
 その顔には、心配と、どこか確かめるような色が混じっている。

「……え、あ……俺……?」

 体を起こそうとした瞬間、鈍い痛みが全身を走った。
 戦いの中で受けた傷と衝撃が、まだ抜けきっていないらしい。
 だが、少女は小さく息を吸い、そっと両手をかざす。

 ――ふわり。
 手のひらから、あたたかな光が溢れ出す。
 その光は空気を震わせるように広がり、やがて俺の体を包み込んだ。

「……っ! すげぇ……痛みが……引いてく……」
「これは……まさか……魔法ってやつか……?」

 俺のつぶやきに、少女は首をかしげる。
「魔法……そうですね。回復魔法です。詠唱は必要ありませんので」
 さらりと言ってのける彼女の仕草が、日常の動作みたいで逆に衝撃だった。

「……ってことは……やっぱ夢じゃねぇんだな。ここ、本当に……異世界ってやつか……」

 思わず口にした言葉に、少女は一瞬目を丸くし、それから小さく笑った。
「もしかして……志雄くんって、現界の方ですか?」

「――なんで分かったんだ!?」

「服装が、この世界のものとは少し違いますから。それに……最近、現界の方がこの地によく飛ばされてくるんです」
「……飛ばされて、くる……?」

「はい。理由は分かりませんが、王都でも問題になっていて……もしかして、あなたも突然こちらに?」

「ああ……」
 脳裏に浮かぶのは、あの“扉”、氷河、そして魔物。
 そして、ニュースで何度も耳にした“行方不明者が相次ぐ”という報道。

「……ニュースでやってた行方不明って……これなんじゃ……」

 呟いた声は、自分でも驚くほど低かった。
 少女――ツムギは、その言葉にわずかに眉を寄せたが、すぐに穏やかな笑みを取り戻す。
「とりあえず……ここは安全です。立てますか?」
「ああ……なんとか」

 差し出された小さな手を掴む。
 あたたかい光が、まだほんのりとその手から伝わってくる気がした。
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