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幻想界編
第15話 アルディア王国
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関所を越え、荷馬車はゆっくりと舗装された街道を進んでいた。
「しっかしよぉ、関所って検査とか荷物検分とか、面倒くさいことがあるのかと思ったけど、案外すんなり入れたなー」
志雄は馬車の荷台で背伸びしながら呟く。
氷河は腕を組み、左手を軽く上げて見せた。
「俺は王聖騎士団の者だからな。ほら、左手に付けてある銀のブレスレット――これを見せればすぐに通れる」
志雄は身を乗り出してそれを覗き込む。陽の光を受けて淡く輝く銀の輪には、精緻な紋章が刻まれていた。
「何それ? ただの飾りじゃなさそうだな」
「これは王聖騎士団の一員の証だ。これがあればアルディア領内では大体好きに動ける。……言うなれば“身分証”であり、“権限”でもある」
「へぇー、かっけぇ……!」
志雄の目がキラリと光る。
「俺も欲しいなぁ」
氷河は苦笑しながら肩をすくめた。
「簡単に手に入るものじゃないぞ」
その時、横からツンツンと指が突かれた。
「志雄くん」
「ん? どうした――」
振り向いた瞬間、口の中に何かが押し込まれた。
「んぐっ!?」
ツムギが楽しげに微笑んでいる。
「どうですか?」
口に広がるのは瑞々しい甘み。
「ん! 美味っ……!」
ブルーベリーのような酸味と、ライチのような芳醇な甘さが合わさり、後味はすっきり爽やか。食感はほぼぶどうのそれに近い。
「なんだこれ!? ぶどうに似てるけど、もっと……なんか幻想的な味がする!」
「ルミナベリーといいます!」
ツムギは得意げに答える。
「さっき近くの茂みに咲いていたので、摘んできました。夜になると実そのものが淡く光るんですよ」
「へぇ、不思議なフルーツもあるもんだなー……」
志雄は次の実を手に取って、宝石のように透き通る皮をしげしげと眺めた。
馬車の上で三人は笑い合い、旅の疲れを忘れて雑談を交わした。夜になれば焚き火を囲み、昼は馬車に揺られて眠る。そんな何気ない時間が、確かに「旅をしているんだ」という実感を与えてくれる。
⸻
そして――二日後の昼。
「ふわぁ……眠てぇ……」
志雄が欠伸を噛み殺した時、御者席のフィリオが前方を指差した。
「見えてきましたよー。あれがアルディア王国です」
「!?」
志雄は思わず身を乗り出した。
遠くの地平線に広がる光景は、ただ一言――圧巻だった。
陽光を受けてきらめく巨大な城壁。その外周には水路が巡らされ、青い川面が陽に反射して白く光っている。水路に架かる石橋を行き交う人々や荷馬車の列が、遠目にも賑わいを伝えていた。
城壁の内側からは、段々と広がる城下町の姿が見える。石畳の坂道に沿って、赤や青、橙色の屋根を持つ家々が幾重にも並び、まるで城を守るように段々と積み重なっている。
その中心――高台の頂に、白亜の城が天を突くように聳えていた。
幾重もの尖塔が空を突き刺し、風に揺れる旗が太陽を受けて輝く。遠くからでも見えるほどの高さと威容は、まさに「世界の中心」に相応しい光景だった。
志雄はしばし言葉を失い、ただその景色を眺めた。
「……すげぇ。あれが、アルディア王国……」
「久しぶりに来ましたが……やっぱり改めて見ても圧倒されますね」
ツムギが目を細め、懐かしそうに城を見つめる。
「世界でも一、二を争う国だからな。当然だ」
氷河の声は冷静だが、わずかな誇りが滲んでいた。
フィリオはにこやかに振り返る。
「もうすぐ城門です。荷物の準備をしておいてくださいね」
志雄は胸の奥がざわめくのを感じた。
(やばい……これ、完全に異世界ファンタジーの光景だ……! 何があるんだ? 何が待ってるんだ?)
城壁に近づくにつれ、その圧倒的な存在感が視界いっぱいに迫ってくる。
志雄の鼓動は高鳴り、抑えきれない期待がこみ上げていた。
「……楽しみだ」
彼の小さな呟きは、馬車の車輪の音に紛れて消えた。
「しっかしよぉ、関所って検査とか荷物検分とか、面倒くさいことがあるのかと思ったけど、案外すんなり入れたなー」
志雄は馬車の荷台で背伸びしながら呟く。
氷河は腕を組み、左手を軽く上げて見せた。
「俺は王聖騎士団の者だからな。ほら、左手に付けてある銀のブレスレット――これを見せればすぐに通れる」
志雄は身を乗り出してそれを覗き込む。陽の光を受けて淡く輝く銀の輪には、精緻な紋章が刻まれていた。
「何それ? ただの飾りじゃなさそうだな」
「これは王聖騎士団の一員の証だ。これがあればアルディア領内では大体好きに動ける。……言うなれば“身分証”であり、“権限”でもある」
「へぇー、かっけぇ……!」
志雄の目がキラリと光る。
「俺も欲しいなぁ」
氷河は苦笑しながら肩をすくめた。
「簡単に手に入るものじゃないぞ」
その時、横からツンツンと指が突かれた。
「志雄くん」
「ん? どうした――」
振り向いた瞬間、口の中に何かが押し込まれた。
「んぐっ!?」
ツムギが楽しげに微笑んでいる。
「どうですか?」
口に広がるのは瑞々しい甘み。
「ん! 美味っ……!」
ブルーベリーのような酸味と、ライチのような芳醇な甘さが合わさり、後味はすっきり爽やか。食感はほぼぶどうのそれに近い。
「なんだこれ!? ぶどうに似てるけど、もっと……なんか幻想的な味がする!」
「ルミナベリーといいます!」
ツムギは得意げに答える。
「さっき近くの茂みに咲いていたので、摘んできました。夜になると実そのものが淡く光るんですよ」
「へぇ、不思議なフルーツもあるもんだなー……」
志雄は次の実を手に取って、宝石のように透き通る皮をしげしげと眺めた。
馬車の上で三人は笑い合い、旅の疲れを忘れて雑談を交わした。夜になれば焚き火を囲み、昼は馬車に揺られて眠る。そんな何気ない時間が、確かに「旅をしているんだ」という実感を与えてくれる。
⸻
そして――二日後の昼。
「ふわぁ……眠てぇ……」
志雄が欠伸を噛み殺した時、御者席のフィリオが前方を指差した。
「見えてきましたよー。あれがアルディア王国です」
「!?」
志雄は思わず身を乗り出した。
遠くの地平線に広がる光景は、ただ一言――圧巻だった。
陽光を受けてきらめく巨大な城壁。その外周には水路が巡らされ、青い川面が陽に反射して白く光っている。水路に架かる石橋を行き交う人々や荷馬車の列が、遠目にも賑わいを伝えていた。
城壁の内側からは、段々と広がる城下町の姿が見える。石畳の坂道に沿って、赤や青、橙色の屋根を持つ家々が幾重にも並び、まるで城を守るように段々と積み重なっている。
その中心――高台の頂に、白亜の城が天を突くように聳えていた。
幾重もの尖塔が空を突き刺し、風に揺れる旗が太陽を受けて輝く。遠くからでも見えるほどの高さと威容は、まさに「世界の中心」に相応しい光景だった。
志雄はしばし言葉を失い、ただその景色を眺めた。
「……すげぇ。あれが、アルディア王国……」
「久しぶりに来ましたが……やっぱり改めて見ても圧倒されますね」
ツムギが目を細め、懐かしそうに城を見つめる。
「世界でも一、二を争う国だからな。当然だ」
氷河の声は冷静だが、わずかな誇りが滲んでいた。
フィリオはにこやかに振り返る。
「もうすぐ城門です。荷物の準備をしておいてくださいね」
志雄は胸の奥がざわめくのを感じた。
(やばい……これ、完全に異世界ファンタジーの光景だ……! 何があるんだ? 何が待ってるんだ?)
城壁に近づくにつれ、その圧倒的な存在感が視界いっぱいに迫ってくる。
志雄の鼓動は高鳴り、抑えきれない期待がこみ上げていた。
「……楽しみだ」
彼の小さな呟きは、馬車の車輪の音に紛れて消えた。
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