春を売るなら、俺だけに

みやした鈴

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【第六話】

★向かい合う、からだとこころ.IV

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「ッ!」

 そう言って俺にゴムを渡す咲。
 お風呂でエッチなんて、そんなの初めてだ。思わず言葉に詰まってしまえば、咲は上品に笑って見せた。

「ほら、ローションもあらかじめ持って来てあるし。ナカを綺麗にしながら、ちゃーんと君が僕の事を慣らして繋がるの。悪くないと思うんだけど」
「悪くないどころか、メッチャ良いと思います」
「あはは。なんで敬語なの? じゃあ、やってみようか」

 すると咲は再度シャワーヘッドを手に取り、俺にそれを押し付けた。

「シャワーを直接アナルに入れて洗浄する方法もあるんだけど、僕はどうしても抵抗があってね。だから出来るだけトイレで済ませるようにしているんだ。けれど、もし汚物が付いちゃったらごめんね」
「いや、俺がやるって言ったんだし気にすんなって。つーか、逆に嬉しいし。こーゆー事もさせてくれるようになったんだなって思うと」
「汚れ仕事を押し付けられたって思わないの?」

 その言葉を吐く咲は、どこか自分を蔑むような表情だ。
 汚れ仕事なんてそんなことないのに。っていうか、咲に汚いところなんてない。
 だから俺は咲の腕を引っ張ってしゃがませた後、シャワーを持つ逆の手で彼を抱き寄せた。

「ぜーんぜん? 安心して俺に身体を任せて貰えてるみたいで、カンドーする」
「あはは。君は本当にすごいね。感心しちゃうくらいだ」
「じゃあ、どうすればいっかな。咲、俺の膝に乗ってくれるか? 俺の方見る感じで」
「分かった。こうかな?」
「で、ちょっと尻上げてくれ。……うん。いいカンジじゃね? それにこれならキスもしやすいし」
「……本当に、君は慣れてるんだか不慣れなんだか、時折分からなくなるよ」

 鏡の下にある棚に背を預けるようにして俺は座り込んで、その上に咲を乗せる。
 ここからだったら蛇口にも手が届くし。
 ざあっと手のひらで温度調節をした後、一度シャワーヘッドを横に置きローションを手に取る。
 まずは一本。シャワーを秘所に当てながら、ゆるりと入り口付近をマッサージして、指をナカへと進めていく。
 そのままそこを拡げながらも、奥から指を掻きだすようにして抜き差しを繰り返す。

「ンンッ。……ァっ、ね、大丈夫? 汚れ、ついてない……?」
「おう。大丈夫だ。痛くないか?」
「良かった。痛くはないよ。じゃあそのまま、二本目も挿れて? 僕はさっき、イってないからね」
「そ、それは悪かったって。その分! ナカで気持ちよくさせるから!」
「ふふ。威勢の良いことで。じゃあ剛のテクニックに、期待させてもらおうかな」

 咲の内側を人差し指でぐるりとかき混ぜ、ゆっくり振動させながら奥へ奥へと暴いていく。
 初めは硬かったそこが、どんどん解れていくのを確認して、二本目の指も挿入する。
 その前に、入り口の穴を拡げて、シャワーで軽く流すことも忘れない。
 そして、お湯を流すよう、尻に力を入れてもらうと、汚れ一つない透明な液体がナカから零れ落ちる。

「……エッロ」
「こんなところ、見ても楽しくないと思うんだけど」
「いや。楽しい。これから繋がるための準備だって思うと、マジヤバい」
「あはは。確かにさっき出したばっかりなのに、もう勃起してるもんね?」
「そんなこと言ってる余裕、無くしてやる」

 そういって、ローションを改めて指に纏わせ、優しく、優しく傷付けないようにしっかりと拡張していく。
 それにしても不思議だよな。こんなに狭いところに性器が入るんだから。

 解すのは勿論、前立腺を刺激することも忘れない。
 コリコリした部分をぎゅっと腹側に押し込むと、咲は一層高い嬌声を上げる。

「ンぁッ!」
「咲、可愛い。……なぁ、気になるんだけどさ。指と、その、実際ナカに俺のを挿れるのって、どっちの方が気持ち良いんだ?」
「なに、その質問? ……あぁ、剛は聞きたいんだ。君のペニスの方が良いよって」
「ッ! そ、そういうもんなんだ」
「あはは。聞いておいて真っ赤になってる。全く、可愛いのはどっちなんだか」

 そっか。やっぱり実際繋がる方が気持ち良いんだ。
 でもやっぱり挿入するためにも、しっかり慣らすことは必須になってくる。
 だから俺は咲のしこりも擦りながら、時間を掛けてナカを拡げた。

「剛ッ……は、ァっ、もッ、挿れて?」
「あぁ。俺も、ガマン、効かなくなってきた」

 そう言って手早くコンドームを付け、ローションを付けた手で軽く自分のそれを扱き上げる。
 こうする事によって、挿入がスムーズになるからだ。

「咲。自分で挿れれる?」
「うん、勿論。ふふっ。じゃあ、剛のこと、頂いちゃうね? ンッ……」

 そう言うと俺の股間に跨った咲は腰を上げて、ゆっくりと俺の性器の上に尻を落としていく。
 最初は浅いところで軽く抜き差しをするけれど、その中でも先端が引っかかって、それだけで気持ち良い。

「ァっ、ンンッ、はぁ……ぅんッ、はッ……ちょっと、待ってて、ふゥッ、ね……」
「おう。……ふッ、咲のペースで、ッ、ゆっくり、な?」
「ありがと。ンぁッ、ふぅ、ゥつ、ふー……」

 咲は後ろ側に手を付いて、足に力を入れながらゆっくり腰を上下させていく。

「ァっ、はァッ……ンンッ、奥まで、ァっ、挿れる、ねっ……んんんッ!」
「なぁ、咲。こっち。抱きついて」

 咲の手首を掴んで、俺の首に腕を回すよう促す。
 彼は俺の言うとおりにしてくれたから、二人の距離はぐっと縮まった。
 奥までしっかり繋がったことを確認して、俺は下から咲の事を突き上げる。

「んぁあッ! やッ、それ、深ッ……! あッ!」
「ふっ、ンっ、咲も、気持ち、良い?」
「うんッ、あぁッ! はぁッ、ンンッ! ァっ、はぁっ、ンァァツ!」
「可愛い。咲、こっち。キスしよ」

 俺が唇を突き出すと、咲は望み通り俺に唇を重ねてくれる。
 彼の頬を撫でながら、もっと、もっとと深いくちづけをねだると、互いに舌を伸ばして、より濃密に絡みついていく。

 唇を離すと、どこか咲は物足りなさそうにしていた。だから俺は堪らなくなって、咲の耳元でこんなことを囁く。

「咲、可愛い、大好き」

 そう言いながら耳朶を食み、愛の言葉を惜しげもなく伝えた。

「剛、ンンッ、ふふッ……ァっ、くすぐったいよ」

 咲はそう言って見せるけれど、その声はとろけるように甘くて、脳みそをジンジンと溶かしていくようだ。

「ダメか?」
「ダメではないけれど。なんだかモゾモゾするね」
「そんなところも可愛いな」

 初めのうちは、彼に翻弄されてばかりだった。けれど今、確かに咲は俺で感じてくれている。
 身体だけじゃない、心からの好意を伝えても、自嘲めいた表情を浮かべることは無くなっていった。
 それどころか頬を染めて、優しく微笑んでくれるから、調子に乗ってしまうのも仕方がないだろう。

「もう本当、んッ、剛は、僕に、ァっ、メロメロ、だね?」
「そうだよ。悪いか?」
「悪いとは、ァっ、言ってない、よ……? はぁっ……可愛いなって、思って」
「じゃあもっと言う。咲、好き。大好き。もっと、俺を見て」

 同時に奥深くまでズンッ、と突き上げると、咲は溺れそうなほど甘美な声で俺の名前を呼んだ。
 甘やかして、甘えて。身体も心も奥深くで繋がって。
 身体を重ねるたびに、どんどん彼に夢中になっていくのは、きっと二人の気持ちが一つになっているから。
 そんな事を思うくらい、咲も好意を向けてくれていると、その時の俺は思っていた。
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