春を売るなら、俺だけに

みやした鈴

文字の大きさ
59 / 61
【第九話】

★Lovely darling.V

しおりを挟む
 俺から流れる汗が、咲の肌へと伝う。
 引き寄せ合う様にキスを交わし、身体全体でお互いを確かめ合った。

「剛、ンンッ! アッ、あぁッ~~ッ! はぁッ、ンぁッ!」
「咲、可愛い。気持ち良さそーにしてる」
「そりゃあ、そうだ、よ、ッんんぁッ! はぁッ、ふぁッ……ンンゥッ!」
「俺も、はッ……おかしく、なりそー」

 目線一つで、俺たちの身体はこんなにも形を変えるんだ。
 うねり、昂ぶり、吸い込み、吸い込まれ。
 最初は確かめ合う様に繋がっていたはずなのに、今じゃ本能が咲を求めて、激しく貫いていた。

 この細い体をごつごつと貪ってしまえば、折れてしまうのではないかと不安になるくらいだ。
 けれど咲は、もっと来いと言わんばかりに、その細い足を俺の腰へと巻き付けている。
 もう離さない、なんて強い意思表示を身体全体でされているようだ。

 何度も奥を突き、前立腺を擦り上げ。
 咲の性器だってもう一度達したいと言わんばかりにふるふると小刻みに震えていた。
 けれどきっとそれは俺も同じなんだろう。
 咲のナカに入りながら、かなり限界は近付いているように感じられる。

「咲ッ、さくッ……!」
「剛、も、きみで、お腹いっぱいッ……あぁッ! だ、よッ……ンンンゥッ!」

 きっともう先走りには精液が混ざり始めているに違いない。
 けれど今日は絶対に咲を先にイかせたかった。
 胸だけじゃない。キスで、身体全体で。俺の事を刻みつけたい。

 ずちゅずちゅ腰を押し付け合うと、二人はそれぞれ別の生き物だったはずなのに、まるで一つになってしまったかのように思えてしまう。
 実際に、このまま一つになってしまえたらいいのに。
 心も、身体も、ぜんぶびったりくっついて、これから先も、こうやって時折エッチをしながら、寄り添って日々を過ごしていく。
 そんなの、素敵すぎないか? 理想の未来だって言っても過言じゃない。
 そう思うと、俺は自然にこんな言葉が口を突いて出た。

「咲、愛してる」

 祈りにも似た想いは、確かに咲に届いてくれたようだ。
 言い終えると同時に、俺は下半身に強い締め付けを感じた。

「ッ! ~~~~!」

 咲の身体が、一度、二度。まるで鯉のように跳ね上がった。
 けれど射精している様子は無い。
 なのに確かに身体は震えていて、目もどこか焦点が合っていない。これって。

「もしかして、咲……」
「言わ、ないで……」
「ナカでイッた?」

 今まではそんな事、一度も無かったはずだ。
 中イキという概念は知っていたものの、実際にこの目で見るとは思わなかった。
 射精を伴わない絶頂は、普段の数倍気持ちが良いとどこかで見たことがある。
 それに、クールダウンのタイムがないから何度でもイけるとも、その記事で読んだのだが。

「! ……気のせいじゃッ……んぁっ!」

 一度ナカで達したであろう咲は、ずっと軽く痙攣状態が続いている。
 だから俺もすぐに搾り取られそうになった。ダメだ。これは意識してないと、すぐに持っていかれる。

 けれど俺はそんな自身の状況より、出さずに達してしまった咲が愛おしくて仕方なかった。

「可愛い。好き。咲、大好き。俺の咲、愛してるよ」

 イったばっかりで辛いだろうから、わざと腰の動きをスローペースにすると、ぎゅっと腕を掴まれ、もう少しきつくするようにねだられる。
 そう言われてしまえば、俺は逆らう事なんてできない。

「~~! 剛ッ、もっ、それ、あぁ……ッ!」
「可愛い、咲。ナカ、すっごいキュウキュウしていて、俺の事離したくないって言ってるみたい」
「剛! 君、ヘンタイくさッ……!」

 そうは言うものの、実際に咲の身体は俺をぎゅっと抱きしめる。
 動くのさえ一苦労なレベルで締め付けられるものだから、このまま落ち着くまでただ抱きしめ合ってても良いんじゃないかとさえ思えてくるけれど、俺はもっと咲の乱れた姿が見たい。

 咲の孔はもう広がりきっていて、俺の形を覚えてくれているようにピッタリと絡みついた。
 確かナカの形って、相手によって変わるって聞いたことがある。
 咲も、俺色に染まっていると良い。

 そのまま腰を動かし続けていたら、咲ももう二、三度絶頂を迎えているようだった。
 こうなってくると、俺ももう限界だ。
 ここまで我慢したんだ。もうイっても許されるだろう。

「俺も、咲のナカ、出していい?」

 そうお願いすると、咲は一度キスをやめ、ぎゅうっと俺の頭を抱きしめ、耳元でこう囁いた。

「うん。……剛、愛しているよ」
「! ッ、もッ、無理――――ッ!」

 その言葉が、トリガーだった。
 俺の視界は真っ白に弾け、精液がどくどくと咲のナカへと流れ込むのを感じる。

「あはは。剛もイったね」

 奥深くまで繋がったままで、脱力して咲の上に倒れ込む俺に、彼は笑いながら背中をポンポンと叩いた。
 そりゃ、仕方がないだろ。

「だって咲から『愛してる』って言われることって今までなかったから」
「そうだね。ふふっ、剛、可愛い」

 よーしよーしなんて頭を撫でられるから、俺は少しだけむくれてしまう。
 さっきまでは咲だってイきっぱなしで余裕がなかったはずなのに、俺がイったらこんな感じだもんな。

「……咲は、余裕だな?」
「余裕なんかじゃないよ。本当、君って昔はあんなに必死だったのに、今ではずいぶんお兄さんだ」
「お兄さんって、同い年だろ」
「そうだね。……ようやく、同じスタートラインに立てた気がする」

 それは静かで、けれど確かに咲の本心がしっかりと伝わった。
 確かに最初は教える側と教えられる側で、役割分担がはっきりしていた。
 慣れている咲が、全くエッチな事を知らない俺に色々教えてくれる。そんな構図がずいぶんと続いた。
 けれど今は違う。
 お互いが、お互いを求め、夢中になるまで重なり合う。そこに上下関係なんてない。対等な状態で、愛し合っている実感があった。

「で? 剛はまだ物足りないみたいだけど? 君は元気だね」
「そう言う咲だって。……な、もう一回、してもいい?」
「一回だけじゃなくても良いよ。僕らの体力が続くまで、たーくさん、セックスしようか」

 獣のようにただひたすらに互いを求め、数えきれないほどのキスをして、愛の言葉を囁き合う。
 気が付けば空は白み始め、黒のカーテンの隙間から澄み渡る淡いみずいろの光が微かに差し込んでいた。
 最後の最後に咲のナカに出したものを掻きだせば、俺たちは気絶するように眠りに落ちる。
 裸のままで抱き合い、眠りに落ちるその瞬間まで咲を見つめていた。
 その時の咲は、今まで見た彼の中で一番うつくしく思えたのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第3巻 - 甘美な檻と蹂躙の獣

大の字だい
BL
失われかけた家名を再び背負い、王都に戻った参謀レイモンド。 軍務と政務に才知を振るう彼の傍らで、二人の騎士――冷徹な支配で従わせようとする副団長ヴィンセントと、嗜虐的な激情で乱そうとする隊長アルベリック――は、互いに牙を剥きながら彼を奪い合う。 支配か、激情か。安堵と愉悦の狭間で揺らぐ心と身体は、熱に縛られ、疼きに飲まれていく。 恋か、依存か、それとも破滅か――。 三者の欲望が交錯する先に、レイモンドが見出すものとは。 第3幕。 それぞれが、それぞれに。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

処理中です...