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1章 新入生編
4.ちっちゃな暴君
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「は、はーい。じゃぁ今から前衛と後衛に別れて演習始めるよぉー……」
はははと苦笑しながらノアが声を掛けた一団は、その先頭で暗黒張りの空気を醸し出すフィンに戸惑いながら距離を取る。
「と、特待ーーあ、あー、フィンくん? 少しは不機嫌を隠そうか……っ!?」
「ーーわかってんならさっさと俺をソフィアの隣に戻して下さいませんかね……っ!?」
こんないつ魔物に襲われるかもわからない所でソフィアから引き離しやがって……っ!! とフィンの内心のがダダ漏れる。
ギリィっと奥歯を噛み締めて眼光鋭く睨むフィンに、ヒエェェとノアは苦笑した。
「い、いやいや、これはあくまで演習だし、こんな所じゃぁ弱い魔物くらいしか出ないし、ほら、万一に備えて後衛ちゃんたちにはダリアがついてるからーー」
「それも余計に気に食わないんですよ!!」
と言わんばかりにギッと睨みつけられて、ノアはわぁ……っと後退る。
「ーーもういいです。さっさと終わらせて帰りましょう……っ!!」
「あ、あのー……僕、一応キミの上官的ポジションだからね……? そしてこれは皆んなの演習でもあるんだからね……?」
わかってる? なんてひと回り以上も年の離れたちっちゃな暴君を、そろぉっと見下ろすノアの言葉は、可愛い顔が台無しな凶悪面でイライラとするフィンには全く届いてはいなかった。
ソフィアの無意識の懐柔により、学園での生活を多少多めに見るべきかと思い直した側からのこの現状に、フィンはイライラを収まらせることができない。
くそっと内心で悪態をついて舌打ちをすると、えぇー……と困惑するノアを無視して、フィンはちらりと後方に分かれている集団を振り返る。
「ねぇねぇ、ソフィアちゃんてさぁ……」
「ーーってさっそくモブ男に話しかけられてるしっ!!!!」
おいっ!! と目を吊り上げて叫ぶフィンに、周囲がびくりと肩を震わせた。
あいつ……っっ!!!! と身体を震わせるフィンは、少し戸惑いながらも笑顔のソフィアに対応されているモブ男子生徒を、遠方から射殺しそうな勢いで睨みつける。
ーーフィンにもフィンの世界が広がったらいいなぁなんて思ったの。
先日ソフィアから掛けられた言葉と顔が脳裏に浮かび、フィンはその動きをぴたりと止めた。
モブ男子生徒に話しかけられていたソフィアのグレーの瞳が、遠く距離のあるフィンに気づいたようにゆっくりと向けられて、その顔に嬉しそうに笑顔が溢れて、フィンと動く口に頑張ってと振られる手。
「ーー………………っ」
悪神のごとく大荒れだったフィンを遠巻きにしつつも、だんだんとその現象に慣れてきていた周囲は、そのちっちゃな暴君の様子に溢れそうなほどに目を見張った。
眉間にシワを寄せて顔を真っ赤にし、視線を逸らしたその顔を左腕で隠す15歳の美少年。その落差に不意を突かれすぎて、貰い赤面や心臓を鷲掴みにされて、周囲が思わず後退る。
「ーー隙が多過ぎる癖にこんな時だけ……っ……ほんとイヤになる……っ」
ちっと舌打ちすると、フィンは未だ固まる周囲を一切と気にもせずに、驚いた顔をして固まっているノアに向き直った。
「ーーで、何するんですか? 早く始めましょうよ」
「ーーあ、あぁ、りょ、りょうかーい……っ」
ずるりと下がった眼鏡を押し上げて、ノアは何か見てはいけないものを見てしまったような心境に、口の端を引き攣らせながら答えた。
フィンたら大丈夫かな。ノア副団長にご迷惑かけてないかな。フィンなら大丈夫だろうとは思うけど、ケガとかしませんように……っ! なんてソワソワして上の空なソフィアを、話しかけていたモブ男子生徒は見下ろした。
「ねぇねぇ、ソフィアちゃんと弟くんって姉弟なんだよね? なんか必要以上に距離が近くない?」
「え? あ、そうですかね……? 結構小さな時から2人で生きて来たので、そのせいかも知れません……っ。私も全然弟離れできなくて……っ」
「へー、そうなんだ? 2人仲良さそうだもんね」
どっちかって言うと姉離れできてないのは弟くんの方じゃない? なんて大して興味もなさそうな顔で適当に相槌を打つモブ男子生徒の言葉に、ソフィアはパッと顔を輝かせる。
「そう見えますか!? それならすごく嬉しいです……っ、ほんとに……フィンは頭が良くて器用で、今回だって何でか特待生になっちゃったり、昔からなんでもできちゃう子で、ほんとなら私がしっかりお姉ちゃんしないといけないんですけどいつも守ってくれて……っ、ちょっと口は悪いんですけど、少し寂しがり屋で、ほんとに素直でいい子なんです……っ!」
「え、あ、そ、そうなんだ?」
なんか惚気られてる? なんて戸惑いながら、予想外の勢いでキラキラと輝かせた顔でフィンを力説するソフィアにモブ男子は仰け反った。そんな2人の会話に、ダリアは興味のない面持ちで耳を傾ける。
「ーーなので、ちょっと意地っ張りだったり、愛想がなかったりするかも知れないんですけど、本当にいい子なので、よかったらフィンと仲良くしてもらえると嬉しいです……っ!」
「え、あ、も、もちろん……っ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうな笑顔を無邪気に向けてくるソフィアに、モブ男子生徒は少し照れたように自身の髪を無意に耳にかけた。
「ち、ちなみに俺はソフィアちゃんとも仲良くなりたいと思ってるんだけどーー」
「おい! そっち行ったぞ!!」
そんなことをモブ男子生徒が言い掛けた次の瞬間、その場の空気を裂くようにかけられた声と同時に、ガサリと草むらから大きめの影が飛び出したーー。
はははと苦笑しながらノアが声を掛けた一団は、その先頭で暗黒張りの空気を醸し出すフィンに戸惑いながら距離を取る。
「と、特待ーーあ、あー、フィンくん? 少しは不機嫌を隠そうか……っ!?」
「ーーわかってんならさっさと俺をソフィアの隣に戻して下さいませんかね……っ!?」
こんないつ魔物に襲われるかもわからない所でソフィアから引き離しやがって……っ!! とフィンの内心のがダダ漏れる。
ギリィっと奥歯を噛み締めて眼光鋭く睨むフィンに、ヒエェェとノアは苦笑した。
「い、いやいや、これはあくまで演習だし、こんな所じゃぁ弱い魔物くらいしか出ないし、ほら、万一に備えて後衛ちゃんたちにはダリアがついてるからーー」
「それも余計に気に食わないんですよ!!」
と言わんばかりにギッと睨みつけられて、ノアはわぁ……っと後退る。
「ーーもういいです。さっさと終わらせて帰りましょう……っ!!」
「あ、あのー……僕、一応キミの上官的ポジションだからね……? そしてこれは皆んなの演習でもあるんだからね……?」
わかってる? なんてひと回り以上も年の離れたちっちゃな暴君を、そろぉっと見下ろすノアの言葉は、可愛い顔が台無しな凶悪面でイライラとするフィンには全く届いてはいなかった。
ソフィアの無意識の懐柔により、学園での生活を多少多めに見るべきかと思い直した側からのこの現状に、フィンはイライラを収まらせることができない。
くそっと内心で悪態をついて舌打ちをすると、えぇー……と困惑するノアを無視して、フィンはちらりと後方に分かれている集団を振り返る。
「ねぇねぇ、ソフィアちゃんてさぁ……」
「ーーってさっそくモブ男に話しかけられてるしっ!!!!」
おいっ!! と目を吊り上げて叫ぶフィンに、周囲がびくりと肩を震わせた。
あいつ……っっ!!!! と身体を震わせるフィンは、少し戸惑いながらも笑顔のソフィアに対応されているモブ男子生徒を、遠方から射殺しそうな勢いで睨みつける。
ーーフィンにもフィンの世界が広がったらいいなぁなんて思ったの。
先日ソフィアから掛けられた言葉と顔が脳裏に浮かび、フィンはその動きをぴたりと止めた。
モブ男子生徒に話しかけられていたソフィアのグレーの瞳が、遠く距離のあるフィンに気づいたようにゆっくりと向けられて、その顔に嬉しそうに笑顔が溢れて、フィンと動く口に頑張ってと振られる手。
「ーー………………っ」
悪神のごとく大荒れだったフィンを遠巻きにしつつも、だんだんとその現象に慣れてきていた周囲は、そのちっちゃな暴君の様子に溢れそうなほどに目を見張った。
眉間にシワを寄せて顔を真っ赤にし、視線を逸らしたその顔を左腕で隠す15歳の美少年。その落差に不意を突かれすぎて、貰い赤面や心臓を鷲掴みにされて、周囲が思わず後退る。
「ーー隙が多過ぎる癖にこんな時だけ……っ……ほんとイヤになる……っ」
ちっと舌打ちすると、フィンは未だ固まる周囲を一切と気にもせずに、驚いた顔をして固まっているノアに向き直った。
「ーーで、何するんですか? 早く始めましょうよ」
「ーーあ、あぁ、りょ、りょうかーい……っ」
ずるりと下がった眼鏡を押し上げて、ノアは何か見てはいけないものを見てしまったような心境に、口の端を引き攣らせながら答えた。
フィンたら大丈夫かな。ノア副団長にご迷惑かけてないかな。フィンなら大丈夫だろうとは思うけど、ケガとかしませんように……っ! なんてソワソワして上の空なソフィアを、話しかけていたモブ男子生徒は見下ろした。
「ねぇねぇ、ソフィアちゃんと弟くんって姉弟なんだよね? なんか必要以上に距離が近くない?」
「え? あ、そうですかね……? 結構小さな時から2人で生きて来たので、そのせいかも知れません……っ。私も全然弟離れできなくて……っ」
「へー、そうなんだ? 2人仲良さそうだもんね」
どっちかって言うと姉離れできてないのは弟くんの方じゃない? なんて大して興味もなさそうな顔で適当に相槌を打つモブ男子生徒の言葉に、ソフィアはパッと顔を輝かせる。
「そう見えますか!? それならすごく嬉しいです……っ、ほんとに……フィンは頭が良くて器用で、今回だって何でか特待生になっちゃったり、昔からなんでもできちゃう子で、ほんとなら私がしっかりお姉ちゃんしないといけないんですけどいつも守ってくれて……っ、ちょっと口は悪いんですけど、少し寂しがり屋で、ほんとに素直でいい子なんです……っ!」
「え、あ、そ、そうなんだ?」
なんか惚気られてる? なんて戸惑いながら、予想外の勢いでキラキラと輝かせた顔でフィンを力説するソフィアにモブ男子は仰け反った。そんな2人の会話に、ダリアは興味のない面持ちで耳を傾ける。
「ーーなので、ちょっと意地っ張りだったり、愛想がなかったりするかも知れないんですけど、本当にいい子なので、よかったらフィンと仲良くしてもらえると嬉しいです……っ!」
「え、あ、も、もちろん……っ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうな笑顔を無邪気に向けてくるソフィアに、モブ男子生徒は少し照れたように自身の髪を無意に耳にかけた。
「ち、ちなみに俺はソフィアちゃんとも仲良くなりたいと思ってるんだけどーー」
「おい! そっち行ったぞ!!」
そんなことをモブ男子生徒が言い掛けた次の瞬間、その場の空気を裂くようにかけられた声と同時に、ガサリと草むらから大きめの影が飛び出したーー。
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