うら寂しい人々の日々

藤田はじめ

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玩具のように柔らかに

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 放課後の教室は静かで明るい。耳障りな喧噪も小さくて遠い。
 十一月の末に差し掛かる時期で外の空気は肌寒いが、教室の中は暖房が効いていて外とは切り離されたかのように暖かかった。
 教室では二人の少女が向かい合って座っていた。
 一人は手に持ったペンをせわしなく動かして時折考えるようそぶりを見せる。向かいに座る少女の方を見ることもない。
 もう一人はその向かいで勉強をするでもなく、勉強をする少女の方を見つめるでもなく、ぼんやりと窓の向こうを眺めている。
 教室の中はペンの音と時計の音しか響かない。どれほど時間が経っただろうか。落ちていく夕陽を見ていた少女がふいに「もう少しで卒業か」と言った。それに何か返事をするでもなく、ちらりと少女の方を一瞥してそれっきりペンを動かす。
 どこか感傷的な顔をした少女が「ずっと一緒に居たいね」と寂し気に呟いた。
 途端にペンの音がやんだ。チクチクと時計の音が流れている。
「あんたの口からそんな言葉が出るなんてね」と少女ははにかむ。
「意外?」
「うん、意外だった」
「私もよくわからないんだ」と言って立ち上がり、机に腰かけて少女の方を向いた。
「来年になるともう会えないのかなーって思ってさ」
「そんなことはないでしょ、会いたいと思えばきっと会えるよ」
 何も考えていない風に少女はそう言ってのけた。
 それを聞いて、教室に差した夕陽を背に、悲し気な笑みを浮かべて「そうだといいね」と答える。ポケットに入れた手には玩具の指輪がぎゅっと握りこまれていた。
「なんて顔してんの」とほほ笑みかける少女の手を宝物に手をかけるように、そっと取って「こういう意味で、ずっと一緒に居たいって言ったら?」と薬指に指輪をはめた。玩具の指輪はぶかぶかで指を下に向ければ落ちてしまいそうだった。
 しばらくぽかんとしていた少女だったが朗らかに笑ってみせる。その様子を変わらず不安げにうかがっているのに対して「そっかー」とどこかのんきな口調で言って口元を手で覆う。
 少女の耳は、赤かった。 
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