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しおりを挟むそんな風になってしまったアイツには、関わらないのが一番だった。アイツが厄災を引き連れて現れるのなら、その場所から遠く遠く離れ、その様子が全く分からない場所まで泳いで逃げてしまえば良いだけだ。
そうすれば何も聞こえないし、何も見えない。泣き叫びながら死んでゆく人たちの様子を感じなければ少しも辛くなることはない。
僕は今もそう思っている。だから同じように、そう思っていて欲しかった。
「人間になら、アイツを倒せるって話……聞いたことある?」
僕もその話は聞いたコトがあった。でもアイツの存在を含め、アビスの全てが人間には見えていない。だから、人間にアイツを倒すことは無理なのだ。嫌な予感が体中を駆け巡るのがわかる。
「俺さ、人間になってアイツを倒したい」
その一言を始まりに、僕らの世界が崩れてゆく。
「人魚を人間にしてくれる魔法使いがいるんだってさ。その魔法使いを探してみようと思うんだ」
「そんな……。そんなのきっとただの噂話だよ。それにさ、もし本当に人間になれたとしたって、アイツを倒せるとは限らないじゃないか?」
「それは、そうかもしれない。でもさ、俺、このままじっとなんかしてられない」
僕は知っていた。アイツが現れる時、一緒にその魔法使いがやって来るという話を。誰かから聞いたそんな話を、絶対に伝えてはいけないと思っていた。それはこんな日を予感していたからで、僕にはそれを止められないことも良く知っていたからだった。
僕ら人魚は幾らでも生きていられる。もし人間のユメを食べれなくなったとしても死んでしまう事は無い。人間をすり抜けられるこのカラダならば、永遠にも似た時間をこれからも過ごしてゆけるのに。そんなことを並べて説得したかったけど、それは僕の妄想の中に浮かんだだけで、何故か言葉になる前に萎れてしまっていた。
「そっか……見つかると、いいね」
心のどこかで魔法使いの噂が全部嘘で、現実ではないことを願っていた。この時僕は、初めて嘘を口に出した。
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