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シェヘラザードに蛇足
蛇足.
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もう一回夏が来て、ただ蒸し暑いだけの日々を遺して何処かへいった。
いま私が見上げている空は、季節外れの毛糸みたいな雲を持て余し、お洒落とは言い難い柄になってる。
昨日の帰りには代々木公園に立ち寄ってみたし、今日はこうして渋谷のスクランブル交差点に佇んで、行き交う車を眺めてみている。
未だにこういうコトをしてしまう私だから、エピローグを語らない蛇兄さんに、あの日以来会えていないのかもしれない。
赤信号に奇跡が起こり、何故だか無事に青信号へと変わる。途端、今のところ見ず知らずの人たちが、スクランブル交差点の上で一斉に蠢きはじめる。それぞれがカラフルな何かの破片みたいで、それぞれが一粒ずつ輝くことを強いられていた。
私はそんな眩しい人波に、無闇に、けれども果敢に飛び込んだ。ビルを貫いてきた日差しに刺されながらも、私は誰ともぶつかることなく、向こう岸まで無事に泳ぎきることができる。
どうやら私はもう、ちゃんとそこを渡ることが出来る人間らしい。そのことが無性に可笑しくて、今日もやっぱり愛おしかった。こんな風にナレタ今の私ならば、次に蛇兄さんに会えた時には抱いてもらえるかもしれない。あの指に絡め取られ、そのまま丸呑みされる日を、まだこんな風に夢みているのだ。だから、私はどうやったって「自分の目」でしか見ることのできないこのセカイのコトを、いまだに愛したままでいる。
渋谷の街をグルっと見渡し、眼を凝らしてあの長い影を探す。
じわじわと横にひろげた私の唇の端からは、シューっという音と共に、微かに空気が漏れ出していた。
いま私が見上げている空は、季節外れの毛糸みたいな雲を持て余し、お洒落とは言い難い柄になってる。
昨日の帰りには代々木公園に立ち寄ってみたし、今日はこうして渋谷のスクランブル交差点に佇んで、行き交う車を眺めてみている。
未だにこういうコトをしてしまう私だから、エピローグを語らない蛇兄さんに、あの日以来会えていないのかもしれない。
赤信号に奇跡が起こり、何故だか無事に青信号へと変わる。途端、今のところ見ず知らずの人たちが、スクランブル交差点の上で一斉に蠢きはじめる。それぞれがカラフルな何かの破片みたいで、それぞれが一粒ずつ輝くことを強いられていた。
私はそんな眩しい人波に、無闇に、けれども果敢に飛び込んだ。ビルを貫いてきた日差しに刺されながらも、私は誰ともぶつかることなく、向こう岸まで無事に泳ぎきることができる。
どうやら私はもう、ちゃんとそこを渡ることが出来る人間らしい。そのことが無性に可笑しくて、今日もやっぱり愛おしかった。こんな風にナレタ今の私ならば、次に蛇兄さんに会えた時には抱いてもらえるかもしれない。あの指に絡め取られ、そのまま丸呑みされる日を、まだこんな風に夢みているのだ。だから、私はどうやったって「自分の目」でしか見ることのできないこのセカイのコトを、いまだに愛したままでいる。
渋谷の街をグルっと見渡し、眼を凝らしてあの長い影を探す。
じわじわと横にひろげた私の唇の端からは、シューっという音と共に、微かに空気が漏れ出していた。
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