1 / 13
1.
それは、木曜日の朝だった。
しおりを挟む
寝起きのルーティンでスマホをチェックすると、夜中の間に彼の一言が炎上していた。
私には全く気にならない一回の彼の呟きを拾い上げて、その火種は電波の中で燃え広がったみたいだった。
誰が何の為に火種を放ったのか、あるいは悪気も無くだったのかは、私には全くわからなかったけど……
───この心には小さくても確実な焦げ跡が出来ている。
幸い、彼の人となりを擁護する人も同じように多く現れて、それは既に鎮火しているように見えた。
彼は目立つ存在ではあったけど、人が嫌がる様な事等しないし、何ならどんなタイプのクラスメイトにも平等に接してくれる。
誰かに恨まれるとすれば、告白を断られた子達だろうか……?
でもそれだって酷い断り方をしたわけでは無いということについては、友人が玉砕したばかりの私もよく知る所だった。
実は今の大きな問題はそれでは無く……
私が彼、同じクラスの佐伯涼君と既に「同期」した状態にある事だった。
…………
……
多種多様な体質が存在すると思うけど、その中でも私は「エンパス体質」だった。
それも超が付くほどの強力なヤツ。
エンパス体質は日本人に多くいると言われてる。
英語で「共感」って意味のempathyが語源で、いわゆる「共感力」だから持っていても悪くはない様な気がするけど……
共感ってのは他人と喜怒哀楽の感情を共有するってことなのだ。
だから、楽しい時だけなら良いけれど、辛く悲しい気持ちまで自分のコトの様に味わってしまうワケで……
他にも相手の気持ちを察し過ぎて辛かったり、一日の中だけでも自分の意思に反して気分の浮き沈みがあるし、結構厄介な面が多い。
他人からの影響を受けすぎて生き辛いとか。人の気持ちがわかりすぎるのも大変なのだ。
そして、私の場合は「超エンパス体質」とでも名付けようか……?
母が「どうやらこの子は普通ではない」と最初に気が付いたのは、私が四歳の時だったらしい。
ある日、急に私は「にゃー」と鳴くと、ペロペロと体を舐めだした。
その時は近所の猫と「同期」したみたいだ。
それから、4歳の私は3日間猫の様に過ごすこととなる。
最初はふざけて猫に「なりきって」遊んでいると思っていた母も、一向にそれを止めない娘に対して、ついに「いい加減にしなさい!」と怒鳴ったらしい。
猫化した私はそれに驚き、母を「シャーっ」と威嚇すると階段を四つん這いで駆け上がり、勢い余って転がり落ち、まんまと病院へ運ばれた。
この時から一年に数回、私は別の何かに「なりきる」ようになってしまった。
その「なりきり」は一日で終わる時もあれば、一週間程続く時もあり……
もちろん自分ではどうする事も出来なかった。
ちなみに私が「猫」だった時、骨折しているにもかかわらず、暴れに暴れてベッドから動こうとする私はとうとう鎮静剤を打たれ、目が覚める度に「にゃー」と鳴くかどうかを確認されたのだという。
中二位までは、そんな風に全く制御ができなかったけれど、思春期をやや過ぎた最近は、自分の中に他者の感覚が入ってきてしまっても「自分」まで見失うことはなかった。
そんな私と長年付き合ってくれている主治医の見解によれば、共感力のもともと高い私の脳は、他者の「脳波」を時たま受信しているらしく、この波長が合い過ぎてしまうと「同期」したような状態になってしまうのではないか?ということだった。
「まあ体質だからしょうがないし、これもあくまで俺の仮説だけどね~」
と軽く言い放ってしまう、この呑気な主治医の存在はとても大きく、私は不安な時にはすぐに相談に行くようになったし、こんな体質をそこまで悲観的にならずに過ごせていた。
それなのに、今回の「同期」が何故大問題なのかというと……
彼の一言が炎上したばかりだからとかではない。
それは、私が密かに彼、佐伯涼君を好きになった後だったからだ。
私には全く気にならない一回の彼の呟きを拾い上げて、その火種は電波の中で燃え広がったみたいだった。
誰が何の為に火種を放ったのか、あるいは悪気も無くだったのかは、私には全くわからなかったけど……
───この心には小さくても確実な焦げ跡が出来ている。
幸い、彼の人となりを擁護する人も同じように多く現れて、それは既に鎮火しているように見えた。
彼は目立つ存在ではあったけど、人が嫌がる様な事等しないし、何ならどんなタイプのクラスメイトにも平等に接してくれる。
誰かに恨まれるとすれば、告白を断られた子達だろうか……?
でもそれだって酷い断り方をしたわけでは無いということについては、友人が玉砕したばかりの私もよく知る所だった。
実は今の大きな問題はそれでは無く……
私が彼、同じクラスの佐伯涼君と既に「同期」した状態にある事だった。
…………
……
多種多様な体質が存在すると思うけど、その中でも私は「エンパス体質」だった。
それも超が付くほどの強力なヤツ。
エンパス体質は日本人に多くいると言われてる。
英語で「共感」って意味のempathyが語源で、いわゆる「共感力」だから持っていても悪くはない様な気がするけど……
共感ってのは他人と喜怒哀楽の感情を共有するってことなのだ。
だから、楽しい時だけなら良いけれど、辛く悲しい気持ちまで自分のコトの様に味わってしまうワケで……
他にも相手の気持ちを察し過ぎて辛かったり、一日の中だけでも自分の意思に反して気分の浮き沈みがあるし、結構厄介な面が多い。
他人からの影響を受けすぎて生き辛いとか。人の気持ちがわかりすぎるのも大変なのだ。
そして、私の場合は「超エンパス体質」とでも名付けようか……?
母が「どうやらこの子は普通ではない」と最初に気が付いたのは、私が四歳の時だったらしい。
ある日、急に私は「にゃー」と鳴くと、ペロペロと体を舐めだした。
その時は近所の猫と「同期」したみたいだ。
それから、4歳の私は3日間猫の様に過ごすこととなる。
最初はふざけて猫に「なりきって」遊んでいると思っていた母も、一向にそれを止めない娘に対して、ついに「いい加減にしなさい!」と怒鳴ったらしい。
猫化した私はそれに驚き、母を「シャーっ」と威嚇すると階段を四つん這いで駆け上がり、勢い余って転がり落ち、まんまと病院へ運ばれた。
この時から一年に数回、私は別の何かに「なりきる」ようになってしまった。
その「なりきり」は一日で終わる時もあれば、一週間程続く時もあり……
もちろん自分ではどうする事も出来なかった。
ちなみに私が「猫」だった時、骨折しているにもかかわらず、暴れに暴れてベッドから動こうとする私はとうとう鎮静剤を打たれ、目が覚める度に「にゃー」と鳴くかどうかを確認されたのだという。
中二位までは、そんな風に全く制御ができなかったけれど、思春期をやや過ぎた最近は、自分の中に他者の感覚が入ってきてしまっても「自分」まで見失うことはなかった。
そんな私と長年付き合ってくれている主治医の見解によれば、共感力のもともと高い私の脳は、他者の「脳波」を時たま受信しているらしく、この波長が合い過ぎてしまうと「同期」したような状態になってしまうのではないか?ということだった。
「まあ体質だからしょうがないし、これもあくまで俺の仮説だけどね~」
と軽く言い放ってしまう、この呑気な主治医の存在はとても大きく、私は不安な時にはすぐに相談に行くようになったし、こんな体質をそこまで悲観的にならずに過ごせていた。
それなのに、今回の「同期」が何故大問題なのかというと……
彼の一言が炎上したばかりだからとかではない。
それは、私が密かに彼、佐伯涼君を好きになった後だったからだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ハチミツ色の絵の具に溺れたい
桃本もも
青春
大学生になったばかりの梅若佐保には、ひとつだけ悔やんでも悔やみきれないことがあった。
高校で唯一仲良くしていた美術部の後輩、茜谷まほろが事故に遭うきっかけを作ってしまったことだ。
まほろは一命を取りとめたものの、意識不明がつづいている。
まほろがいない、無味乾燥な日々。
そんな佐保のもとに、入院しているはずのまほろが現れる。
「あたし、やりたいことがあって、先輩のところに来たんです」
意識だけの存在になったまほろとの、不思議なふたり暮らしがはじまる――
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる