empathy

hana4

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片思いの相手の心の中。

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そんなものを見ることが出来たら……
口では「見るわけない」などと否定的な事を言いながらも、きっとあなたは独りきりになった途端……息を殺してそれを覗いてしまうに違いない。

私だってその気持ちはわかる。
ただ「共感」しすぎて「同期」してしまうのはそれとはどうも違うのだ。

例えば、毎朝あまり食欲のわかない私は、朝ご飯を食べることがない。それなのに「今」は起きてから何も食べていなくとも、すごくお腹がいっぱいになのだ。
そして恐らく「今朝のメニュー」は、涼君好みだったのだと思う。
私は今、満腹感と満足感に満ち満ちている。

「でも、学校には行きたくないな」

「同期」したまま、彼の気持ちを知りたくない。

ドキドキして、目が離せなくなる……
その視線の先が私じゃない。

そんなことは容易に想像ができた。

結局どんなに「共感」していたとしても、最後は自分の事しか考えていない私が嫌になる。
こんな私になど「自分の秘めた心の内」を、彼も知られたくはないだろう。って当たり前か。

(……あっ)

その時、急に冷たくて重い何かが胃の辺りに落ちてきた。
さっきまでの幸福感はその衝撃で散り散りになる。
早鐘を打ち始めた辺りを思わず外から強く押さえると、そこに居られなくなった鼓動がドクンドクンと脳の中に移動した。

(きっと、スマホを見たんだ)

いつもぎりぎりの時間に起きて登校する私にとっては、まだベッドの中にいるようなAM6:30。
涼君は朝食を終え、身支度を整えながら何気なくスマホをいじる。その中で、きっと夜中の騒ぎを見付けたのだろう。

(今日は、無理だ)

ただでさえ行きたくなかったのに、彼の感情によって私は起き上がる事さえできなくなってしまった。

(涼君は、どうしたかな?)

彼の事はもちろん心配だったけど、私の目からは涙が溢れ……
このまま叫びながら走り出したい衝動に駆られる。

そんな「彼自身」に心を配る余裕など、私には持ちあわせがなかった。
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